表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

第9話

 10月28日ぶん

 ちょっとこれから朝が忙しくなりそうな雰囲気。

 家の中がドタバタとしそうな状況なので投稿時間を変更するかも?

 でも、毎日投稿は止めません。

 柚葉が倒れた。

 早朝の大学で突然意識をぷっつりと失い、術者のいなくなった操り人形のごとくその場に崩れ落ちたらしい。幸いだったのは、柚葉の近くに他の人間がいたこと。

 朝のランニングの最中、横を通り過ぎていった救急車には柚葉が乗っていたということなんだろう。

 母さんは電話越しに何をしていたんだと僕を叱ってきた。最近顔を合わせる機会も無くなっていた彼女。会話も全て画面上のもので、聞き慣れた声は懐かしむものへと変わっていた。


 僕は、何をしていたのだろう。



「——このように任意の極小さな範囲に対してある数値が必ず存在している状況が出来ており……」

「……」



 連れていかれた病院の場所も分からない。電話も通じない。今は何もするなと言われ、ただ惰性で大学の講義を受ける。

 心がモヤモヤとしていても手は動くもので、思考は外に、視線は黒板へと向けながら乱雑な字でメモを取っていた。

 罫線が引かれたノートを斜めに横断するように書かれた数式や用語の羅列。思考は別の方に言っていたために、帰る前に図書館に寄るか、帰ってからペンをとるかしないと理解が出来そうになかった。


 こんな惰性で授業を受けても時間の無駄。

 それは理解している。だけど、自分がしたいことを出来る程の情報が僕のもとに集まっていなかった。



「ん、おっと。もうこんな時間か。先週出した課題レポートの期日、忘れないように。特に! 小テストで赤が多い者。単位を取る機会を逃すことになるからな。終了」

「……」

「木崎、今日は昼どうすんの? 木崎? おいって」

「ん? ああ……。えっと、何?」

「お前、大丈夫か?」



 隣に座っていた友人が脇を小突いてきた。

 気付けば授業が終わっており、周りに座っていた人達は立ち上がって帰り支度を始めている。時計を見れば、昼食をとるのにちょうどいい頃合いだ。だけど、僕の腹は空腹を訴えてはこなかった。

 生返事をしたきり何も答えない僕を心配してか、眉を僅かに中央へ寄せながら友人はこちらを覗き込んできた。



「昼、どうするんだ? 一コマぶん空きあるし、どっかに食いに行くか?」

「いや、なんか食欲が湧かないっていうか……」

「マジ……? 大食漢のお前が? ほんと、なんかあったのか?」



 こいつに胸の中を吐き出したところで何も変わりはしないだろう。

 だけど、僕は積もりに積もってしまったこの心をどこかに全て吐き出してしまいたかった。



「幼馴染が倒れたらしくて」

「本当に何かあったのかよ……。んで、遠く離れた幼馴染に倒れたから心配で仕方がなかった、と?」

「いや、遠くっていうか。同じ大学に通ってるんだけどね。学部は違うけど」

「見舞いには……。まあ、授業出てたし行けてねえか。この後行くの?」

「行きたい。けど、救急車で運ばれたらしいけど行き先が分からなくてさ」



 そう応えると、彼は「そいつは心配だな」といつも通りの平坦な抑揚で応えた。

 他人事なのは理解している。だけど、自分がこんなにも焦燥でモヤモヤとした心を抱えているというのに、誰かが平然としているとほんの少し苛立ちが募る。

 同情が欲しいわけでもないのに。

 本当に自分は何をしたいのだろうか。



「じゃあ、ここ最近もずっとその幼馴染について悩んでた感じなん?」

「え?」

「『え?』て……。お前、新歓の時はあんだけキラキラした目で色んなこと語っておいて、最近ずっとどんよりしてたじゃねえか。幼馴染じゃなかったら、サークルでなんかあった?」

「いや、あったっていうより。しでかしたけど。大会で碌な記録残さず落ちたし」



 大会後からトレーニング内容を少し増やしていつも以上に真剣に取り組んでいたから、それで空気が暗くなったと思わせたのだろうか。

 そう思っての答えだったのだが、彼は首を横に振ってそうじゃないと言った。



「大会で落ちたことはテレビで見てたからしってるけどさ。その前からお前暗かったじゃん」

「暗かった、かな?」

「おう。大会前だったから張りつめてたのも分かるんだけどよ? なんかそれ以上だった」

「いつも通りだったと思うけど……」



 彼は勘違いだったのかと首をひねりながら宙を眺める。

 他の学生が居なくなった講堂。そこを占拠しての二人の会話は人がいなくなったせいで良く響く。現在は彼の唸り声が響いている状態だ。

 そんな教室に、通知を切ることを忘れていた僕の携帯が音を鳴らした。今更ながらに慌ててマナーモードに変えながら、画面を見る。


 そこにあったのは、母から現在柚葉が居る病院の所在が分かったという主旨の文が届いたことを知らせる通知だった。



「あ……」

「ここら辺の病院って言ったらそこになるか。行って来いよ。4コマの出席と板書はしといてやっから」

「恩にきる」

「今度美味いカレーの店連れてってやるから奢れよ?」



 僕が奢るのかよ。

 彼のその言葉に苦笑を浮かべながら、僕は講堂を駆けて飛び出した。


 今日の筋トレ日記

 腕立て伏せ30回

 腹筋30回

 背筋30回

 

 筋トレ的にも朝に書いて朝にする方が時間的にも余裕が出来るんだよな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ