「知識と幸福」
父親の別婦の悪業を知り、シャリスと家族の絆を深められたあの日から5日がたった。
幸せな日々が戻ってきたのだ
シャリスが泣き明かしたあの日から俺は、シャリスといる時間が増えた。
家族の時間を作ってシャリスにいち早く元気になって欲しかったからだ。
その甲斐あってか、シャリスは日に日に元気になっていった。嬉しい限りだ。
家族の問題も一区切り付き、安堵しているのも束の間、俺は思い出してしまった。自室の本について。
そう、「魔術と錬成」の本だ。
シャリスの一件以来完全に忘れていた。
だが今ここで俺が「魔術と錬成」の勉強を始めてしまえば確実にシャリスとの時間が取れなくなってしまう。
シャリスとの時間は、俺にとって幸せな時間だ。できる限り取りたい。シャリスの為にも俺の為にも。
笑顔の増えたシャリスをまたあの廃人のように戻したくはない。だが「魔術と錬成」は俺も学んでおきたい。そう思い俺はレインに相談した。
「レインさん少しいいですか?相談があります」
そう俺は言った。4歳程度の子供で大人に相談って何様んだ俺は...。そう思ったがレインは気にしていないようだ。
「はい、なんでしょうか?レナディ様」
「母様のことなのですが、僕はこれから「魔術と錬成」を学ぼうと考えています。なので僕がいない間、母様と一緒にいていただけませんか?」
レインはどちらかというとシャリスと仲が悪いわけではないが、凄く良いわけではない。だからこれを気に仲良くなってほしいのだ。
するとレインは
「魔術に関して私は必要ではないということですか?」
と少し怒ったようにも聞こえる言い方で返してきた。
別にそうゆうことではないんだが....。まぁ大部分が自分でやるとしても、わからないものはレインに聞かなければならないのは確かだ。
「いえ、勿論頼らせていただきます。が、母様は今かなり心が脆い状態だと思います。元気に振る舞ってはいますが、内側はズタズタでしょう。そこをレインさんに補ってもえらえれば、と」
「魔術などに関しては昼食の後などに隙間時間にでも教えていただければ幸いです。」
そう言うと、レインは驚きつつも感心したようで
「わかりました。精一杯シャリス様を支えさせて頂きます。こちらはお任せください。」
と心強い言葉を返してくれた。
「そう言っていただけると助かります。僕に極力手伝いますので。」
こうして相談は終わった。
そして翌日からレインの行動は早かった。
普段内気なレインが、俺と接している時のようにシャリスに話しかけていた。シャリスは最初こそ不思議がっていたが、レインが自分を慰めてくれていると思ったのか、どんどん打ち解けていった。
こうして俺は「魔術と錬成」の勉強に専念することにした。
「魔術と錬成」の本を読み進めると最初は、魔術のことが書いてあった。
魔術は基本的に、詠唱・魔法陣・レリーフの三種類らしい。
詠唱は、極めれば詠唱短縮や無詠唱まで取得出来るるらしい。だが詠唱短縮は出来ても無詠唱はできるものが少ないらしい。
魔法陣は、地面や紙に陣を写し魔力を流すことで発動出来るらしい。
そして、レリーフ。レリーフは魔法陣とは違い、薄い石板に特殊な方法で紋様を刻むことでレリーフとなるらしい。それに魔力を込めれば発動する。
詠唱、魔法陣、レリーフ。この3っつの中で最も使われるのは詠唱らしい。だが、詠唱が特筆して使いやすい訳ではない。それぞれ欠点があるのだ。
魔物との戦闘を想定すると。詠唱は、上位のものになるにつれて詠唱時間が長くなるし移動しながらの詠唱はかなり困難だ。
魔法陣は持ち運び量に限りがあることだ。魔術師は移動速度が著しく低ければ、すぐに魔物の餌になってしまう。
レリーフは、薄いと言っても石板なので軽く見積もっても一枚3キロほどある。それを多く持ち運ぶことが出来ないのはもちろんのこと、レリーフは他の方法と違って燃費が悪い。石板に紋様を掘るくらいだ、上位のものが多いい。だから割増で魔力を持っていかれる。
この3っつの中で詠唱が最も使いやすいというだけだ。
自身の重量を重くせず、口に出せば魔術を使えるし、レリーフに用に割り増しで魔力を持っていかれることもないからだ。
この3っつを全て使用しながら戦闘しようとすると、魔力が足りなくなるらしい。
他にも多く書いてあった。
魔術には、攻撃魔術・治療魔術が主流に使われていると書いてあった。他にも、強化魔術・防御魔術・召喚魔術・生成魔術などがあるらしいが、詳しく書いていなかった。
そして魔術には下から、下級・中級・上級・超級・英級・宝級と6段階に分かれていること。
最後に、魔術には属性があること。属性は大まかに、火属性・水属性・風属性・土属性・光属性・闇属性・雷属性・氷属性・空属性・龍属性の10属性があるらしい。
多いな。でも全部使えるようになったら便利そうだな。
と、ここまで読むのに1ヶ月かかっている。
1ヶ月。かなり長いが魔術の理論は大方理解できたのでよしとしよう。
逆に1ヶ月で理解できた俺って凄いのでは。
いや、そんなことはない。俺は生まれ変ったとはいえ、天才ではない。
まずは魔術を定着させよう。
そう思い、俺はレインのところに向かった。
魔術のことに関してなんでも聞いてほしいと言われたので聞きに行くのだ。
最近はシャリスとレインがとても仲良くなった。まるで姉妹のようだ。今も食堂で会話しているのだろう、声が聞こえてくる。
そんな仲睦まじいと俺も嫉妬してしまう。輪に入れてもらおう。
「こんにちは、母様、レインさん。」
そう話しかけると、反応したのはシャリスだった。
「レナディ!ちょうどよかった。見せたいものがあったのよ!」
そんなことを言われた。するとシャリスがレインに目配せをした。そうするとレインが奥に入っていき大きな箱を持って戻ってくると。
「どうぞ」
と俺の前に置く
なんだこれ。かなりでかい箱だな。俺を箱詰めにして監禁とかとか言わないよね?
そんな馬鹿げたことを考えているとシャリスが言った
「レナディ。開けてごらん」
そう言われ、俺は箱を開くするとそこには40センチ程の短剣と木剣の2本と手紙が入っていた。
「これは....?」
そう問いかけるとシャリスではなくレインが答えてくれた。
「それはレナディ様の父に当たる“ラース“様からです。」
ラース。そう聞き俺は戸惑った。
そりゃそうだ俺は生まれてこの方会った事はないのだから。どう答えればいいかわからない。
「えぇーっと.....」
そう言い、シャリス達の方を向く。するとシャリスとレインは同時に言った。
「「“5歳の誕生日おめでとう!”」」
そう言われた。
へ?5歳の誕生日?なんのことですか?
そんな感じになっていた。俺は確か4歳では?日にちはわからないが。
「僕はまだ4歳なのではないんですか?...」
そういうと、シャリスとレイン話見つめあって笑っていた。
俺は既に5歳になっていたのだ。俺は細かく数えた事はなかったが既に5年の歳月が経っていたのだ。
自分の誕生日を間違えるとは。なんだか恥ずかしい。
レインによるとこの世界には誕生日を祝うという習慣はないらしいが、ドラゴンハート家は違うらしい。
なんでも初代当主が決めた家訓なのだとか。何故そうしたかはわかっていないらしいい。
それにしても誕生日か。こんな感じに祝われたのは初めてかもしれない。とても嬉しい。
そんなこんなあって気付けば豪華な食事がテーブルを埋め尽くしていた。
「さ!食べましょうレナディ」
こうして俺の誕生日会が始まった。
沢山の食事、楽しい話題、幸せな時間が続いた。
それが終わると、シャリスとレインが何かを持っていた。
「レナディ。これ誕生日プレゼントよ!」
そういい、シャリスから渡されたのは俺が先程読んでいたような本だ。だがあまり厚くない。
「母様、これは?」
「これはねぇ。レインから最近レナディが魔術を頑張ってるって聞いたからこれにしたのよ」
と、手渡された本の表紙には「魔術の極意 下級〜上級編」と書かれていた。
この本は、魔術の全属性下級から上級まで一通り載っている魔術大百科なのだ。
これがあれば今まで試せなかった魔術を習得できるのだ。俺は目を見開き
「ありがとうございます母様!これで魔術も上達します!」
と言うと
「頑張ってね!レナディ!」
と言ってくれた。
そして俺がニコニコしながら本を眺めていると、レインが近づいてきて
「レナディ様、些細ながら私も贈り物を」
と鉄のチェーンに指輪が通っているものを渡された、首飾りだろうか。
「私の一族に伝わるお守りです。嫌でなければ貰ってください」
そう言われたが躊躇なく受け取り、早速首にかける。シャリスとレインに見えるように向かい直した。
俺が幼いせいか、指輪の部分がお腹あたりまで下がっている事は気にしてはいけない。
「どうですか?」
と聞くと二人ともほぼ同時に
「似合ってるわよ」
「似合っております」
と嬉しそうに言ってくれた。
夜も老けてきたのかそこで誕生日会は幕を閉じた。
シャリスは少し酔ったらしく、先に寝ると言って壁伝いに自室に戻っていった。
誕生日会で使った食器を片付けてレインに俺は
「明日から魔術の詠唱と使い方を教えていただけませんか?」
そう聞く。すると少し考えた後
「はい、わかりました」
と言ってくれた、顔がいつもの堅物な顔が緩んでいた。
「では、僕は先に寝ますね。お休みなさい」
「はい、お休みなさいませ」
と会話し、全てのプレゼントを抱えて自室に戻った。
自室に戻った俺は、久しぶりにはしゃいだのもあってかなり疲れていた。
なのですぐにベットに潜り込んだ。そして天井を見ながらラースの手紙の事を思い出したが明日にしよう。
今日はとても楽しい1日だった。
そうして俺は深い眠りについた。
投稿頻度がが劣悪ですが許してください