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自由と世界と転生と  作者: 絳月 蓮
第一章 幼少の記憶
6/8

「母親の苦難」

書庫から出た後、レインは厨房に行くと言っていたので自室に戻ると伝え別れた。


 厨房に向かうレインの足取りはいつもよりルンルンだったと思う。俺に歴史やらを教えるのが楽しいのだろうか?


 そして何故俺が自室に戻ると言ったのかは遊ぶためではない。書庫で興味深い本を見つけたからだ。それは「魔力の力 魔術・錬成について」という題名だ。


 俺が深く知りたかった魔法、いや魔術や錬成について詳しく書いてあると言ってレインが見つけて渡してくれたものだ。早速読むとしよう。


 読み始めは目次から始まった。目次は3ページあって長いことがわかった。

 目次の次の紙には太字で「魔術・錬成は偉大なり」と書いてあって何かの宗教本と間違っているんじゃないかと2度確認した。


 最初の10ページ程は魔力が媒体となり魔術・錬成が発動出来ること。魔力は他の使い道もあるらしいが詳しくは書いてなかった。


 他はレインが言っていた通りのことが書いてあるだけだった。という事はこの先はレインから聞いてないことが沢山書いてあると思うとワクワクした。


 次に行こうとした瞬間、ドアの方からコンコンという音がしたので、


 「どうぞ」


 と言い音の主を呼んだ。すると、レインがドアの隙間から少しだけ顔を出し言った


 「失礼します。レナディ様、昼食の準備が出来ました。」


 とわざわざ言いにきてくれたのだ。感激。


 「わかりました。わざわざありがとうございます」


 と俺はいい、本を静かに閉じ部屋を出て食堂に行った。


 昼食はシャリス、レイン、俺の3人で囲んでいた。だが一ついつもと違うことがあった、それはシャリスに元気がないことだ。

 いつもであれば、俺が席についた時に


 「今日は何したの?」


 と興味深々で聞いてくるところ、今は虚ろな目で下を向いている。朝とは段違いに元気がない。

 

 レインはというと、どちらかというとシャリスに話に相槌を打ちつつ自分の意見を入れるタイプなので、自分から喋る事はあまりないので黙って昼食を取っていた。


 俺はそんな淀んだ空気に耐えられずシャリスに聞いた


 「母様どうしたのですか?朝と随分雰囲気が違うというか活気がないように見えますが...」


 と言うと、シャリスは神妙な顔をして言った


 「私の両親、レナディ。あなたのお爺さんお婆さんが殺さ...いえ、“死んでしまったのよ”」

 

 俺は話を聞いた途端、顔も知らない叔父と叔母の話なのに胸の奥の方がズキズキと痛かった。


 レインを見ると、知っていたのか顔を下に向けて俯いたままだった。


 「それは...すいません...。必要のないことを聞いて、母様に辛いことを思い出させてしまって....。」


 と俺は言った。もちろん本心だ血が繋がった親族を失うことはどんな事よりも辛い。


 「いいのよ、結局は話さなければならなかったことだしね....」


 シャリスがそう言い終わった後、またもや長い沈黙が起き、昼食が終わった。


 昼食の後、俺は複雑な気持ちを抱えてつつ自室に戻ろうとしていた。

 

 その時、ふと思った。


 “家族”


 そんな言葉を。


 俺はこの世界に生まれて代わってから自分の事、この世界でのでに自分の未来の事ばかり考えていた。

 

 別に悪いことだとは思っていないが、今現在に目を向けよう。

 

 今を生きれるのは、今だけなのだから。


 家族の事を調べるため書庫に向かう途中、自室にある魔力の本のことを思い出したが、仕方ない、後回しだ。


 そして書庫についた。広い書庫なので見つからないかと思っていたが、意外とわかりやすく整頓されていてすぐ見つかった。


 その本、と言うより18枚くらいの紙の束を紐で縛ったようなものだが、たしかに「家系図」と書いてある。


 手作りの物が世界中にあるとは思えんしな。

 開いてみるとそこには、「ドラゴンハート家・家系図」と書いてある。ペラペラとめくると最後のページの右下に「レナディ」と加えててあった。


 やはりこの家の家系図であっていたらしい。それにこの世界でのでの俺の名前・フレネームが分かった。多分「レナディ・ドラゴンハート」というのだろう。カッコいいぜ。


 そんなことはどうでもいい。もう一つわかったことがある。


 俺の父親の名前。


 「ラース」というらしい。

 

 その家系図のラースと言う名前のから右に線が出ていて、フレイと書いてあった。シャリスではなく知らない名前があった。


 しかも6人。その6人の横にシャリスがおり、俺と線で繋がっていた。


 ラースという男。俺の父は7人と結婚しており、シャリスはその末だ。子供も俺を含めて11人だった。その中にクレインという名前も有り確信した。


 生まれ変わったこの世界での一夫多妻制は普通何だろうか?


 だが俺はこの他6人の妻と10人の兄弟には会ったことがない。何故だろうか、わからないが俺の家族のことに関しては一通り分かった。


 詳しい事は書いてないな。じゃあ他の書物を見るしかないか。そう思い俺はその日、1日中書庫を探したが、なかった。


 ないなら聞くしかない。


 そう思い、俺はレインに聞きに行った。


 今のシャリスに聞きにいくのは忍びないからだ。


 俺は次の日、朝食を取った後にレインに聞きに行った。


 「あの、レインさん。僕の家族、というか一族に関して聞きたいことが...」


 そう言うとレインは


 「それは.....」


 と言いかけ、


 「お教えできかねます。すみませんが失礼致します。」


 と言われた。


 「え....?」


 俺は呆気に取られていた。レインに断られてしまった。こんなことは初めてだった。


 だが、断られても俺は諦めるつもりはない。それから俺とレインとの鬼ごっこが始まった。


 俺はレインの行くところ全てに俺はついて行った。


 厨房に行く時も、


 「レインさん、教えてください」


 「......無理です」


 洗濯をしている時も、


 「教えてくれませんか、レインさん?」


 「いや、......無理です」


 掃除をしている時も、


 「そろそろ教えてくれませんか?レインさん」


 「......やはり.....無理です」


 そんな付き纏う生活が3日間続いた。

 

 「レインさん、そろそろ教えてください。3日前からレインさんの歴史の授業もやってないですし、教えてくれないとそろそろ母様に聞きますよ?」


 そう脅し文句のように言った。今のシャリスにこの話をさせるのは酷と考えたのか、レインはやっと折れた


 「....では、僭越ながら私がお教えします。」


 「はい、お願いします。全部教えてください」


 そう言うと、レインは話し始めてくれた。


 どうやらシャリスの夫、俺の父親ラースは、世界第三位の西の大国、オリオン王国の大臣兼騎士団長という肩書きにあるらしい。


 ドラゴンハート家は代々オリオン王国の主要な役職に就くという。


 ドラゴンハート家は俗にゆう上流階級の貴族なのだろう。俺の親は前世でもこの世界でもエリートらしい。


 そして俺の兄弟やシャリスを除くラースの妻達はここではないオリオン王国の王都に住んでいるらしく、ここは別荘のようなものらしい。


 それに信じられない事実もレインは教えてくれた。


 俺の母親、シャリスは名目上はラースの妾だったというのだ。ラースの他の妻たちは中級階級の貴族たちが言い寄って行き結婚まで至ったらしい。

 

 だが、シャリスは違ったらしい。シャリスだけはラースが選んだ相手だったということだ。そしてラースはシャリスにぞっこんだったらしい。


 それを良く思わなかったラースの他の妻達は第一夫人フレイを中心に、シャリスを王都外の別荘に追いやったらしい。


 あまり生活に困っていないのはラースが気にかけているということだった。


 あの、たまに来ていたキーラという少女はドラゴンハートの人間ではないらしいが、あの年でかなり優秀らしい。だから俺達の監視兼連絡なのだとか。


 それに妾といえどラースの、いやドラゴンハート家の血を引いた俺を邪険に扱うの事はできないらしい。

 

 だが、そんな俺にも火の粉が舞う可能性があったのでシャリスはここ数年、他の妻達と奮闘していたという。


 そして先日シャリスの父母が死んだ事にフレイや他のラースの妻達が関与していることがわかったらしい。


 そんな事実を話し終えたレインは俯いていたが俺は終始レインをみつめていたと思う。


 俺は最初に思った。


 許せないと。


 怒りさえ湧いてきた。


 だが俺は復讐しようとは考えなかった。


 シャリスが不幸になるのは俺は勿論嫌だ。


 レインから一通り話を聞き終わったあと俺は礼を言って部屋を出る。

 俺は目的地に向かって歩き始めた。


 歩いている途中わかった事を整理する。


 俺は、ドラゴンハート家の人間だが、妾の子らしい。俺の母親シャリスはラースの他の妻たちから邪険に扱われている。


 そう考えながら歩き目的地に着く。


 俺はノックをしドアを開けて入っていった


 「失礼します。母様」


 「どうしたの...レナディ?」


 そうシャリスの弱々しい返事が返ってきた、

 

 今シャリスはかなり落ち込んでいる。親族が死んだら誰でもこうなる。

 

 なら俺は俺が出来る事をする。


 俺は最後の血縁関係のある親族なのだから。家族なのだから。


 「母様、話はレインさんから全て聞きました。」


 「レインが!.....何故.....」


 「僕が強引に聞きました。なのでレインさんを怒らないであげてください。」


 何を言えば正解かわからない。だが俺が思っていることを言おう。


 「母様、僕は母様が大好きです。なので笑っている母様が見たいです」


 「えぇ...ありがとうレナディ.....」


 そう俯いて返事が帰ってきた。だが俺は続けた


 「なので、辛いことがあったら相談して欲しいです。どんな些細なことでもいいです。頼って欲しいです。僕は母様の子供で、家族なんですから」


 そう言った途端シャリスは何かが崩壊するかのように俺の方に駆け寄り泣きながら俺に抱きついてきた。


 「ありがと...レナディ...、本当に...本当に...」


 30分程そう言いながら時が過ぎていった。


 翌日の朝食俺は重い雰囲気を覚悟しながら食堂に入った。


 当たり前だ、こんな4歳程度の子供に宥められれば親として面目がたたないだろう。


 「おはようございます...」


 そう言って入るとすぐに視界が真っ暗になった。柔らかい感触。俺は抱きつかれていると気づいた、


 「レナディ!おはよー。どう?昨日はよく寝れたかしら?」


 そんな元気な声が聞こえた、その声の主はシャリスだった。


 こんな元気な言葉を聞いたのは久しぶりだ。


 「はい....よく眠れました。母様はどうですか?」


 そう聞くとシャリスは満面の笑みで


 「昨日はありがとね、レナディ。あなたのおかげで色々と吹っ切れたは!。本当にありがとう」


 シャリスの目には涙が少し出ていた。


 俺もこんな重い気持ちのままじゃダメだ。そう思い俺はシャリスに抱きつき、


 「はい!いつでも相談に乗りますよ!母様」


 そう大きな声で言いより強く抱きしめた。


 そんな風景を奥で見ているレインが微笑んでいた。


 こうして俺の楽しい日々が戻ってきた。

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