「新しい世界」
気づけば真っ暗なとこだった。
(死んだか....。)
そんな一握りの気持ちを保ちつつ考えることが多かった。
生前、死ぬとどうなるとかは、あまり調べたことがなかったが。
まさか真っ暗な虚無に送られて自問自答だとは思わなかった。
(自問自答。かなりキツイ....精神的に。)
友達でなくても一人くらい話し相手が欲しいところだ。
友達はいなかったから一方的に喋りかけるだけだろうが。
すると俺の頭には聞きなれない音が入ってきた。
”カランカラン“
(ん?なんの音だ?)
なんだか物と物がぶつかる音。木だろうか。
(まぁ、音がするって事は虚無の線は消えたな。)
(あぁ、もしかして俺って死にきれなかって的な?全身動かないけど生きてる的な?。)
そう言う状況を考える意外と怖いもんだな。目とか開くんだったら本とかあるから勉強はできるな....。
ってやばい....、俺ってこんな時にも勉強かよ。親関係なくもはや中毒だな。
でもそうか、確か7歳前後から勉強してたから約16年だもんな。そんなしてたらそうもなるか。
そんなことを考えていると一差しの光が流れ込んでくる
(うっ...光の感じがする。よし自分の体の状態も知りたいし開けるか...)
すると、うっすらだが開き始める
眩しい、眩しすぎる。慣れるのに時間がかかるかもな。
そんな次の瞬間、俺の目の前にあるものが飛び込んできた。
それは馬や星そんなものが吊るされたものだ。
ベットメリーだ。
しかも幼児、いや赤子用のやつだ。
(最近の病院は23歳の俺の体を見て赤子だと誤認するレベルなのか?)
いやそんなわけはない。きっと事故に遭って精神的に病んだ患者を宥めるためのものかそんなとこだろう。
(ベットメリーを使うとは思わなかった)
その奥には真っ白な天井。
だが良好なこともある。体全身は何の問題もないことだ。痛くも痒くもない。
そう、痛くないという事はだ....。
”歩ける“と言うことだ。
歩けさえすれば行動範囲が広がるからだ。
(それにしてもよかった。死んでなくて。
あ、でも生きてたらまた勉強の日々が待ってるのか。)
そう思うとかなり生きるモチベが下がった。
だがあの事故の一件で吹っ切れた。
親の言うことには従わずに生る。自分の人生だ自分で決めよう。
そう心に誓おう。
(気持ちではこういうが、俺はメンタルの弱さなら自信がある。親に)
「ふざけるな!」
(って怒鳴られれば、半泣きになりながら蹲るだろうな...ふがいねぇ。)
(よしひとまず起き上がって、状況確認だな。)
(あれ、起き上がれん。どうしてだ?体に異常はないのに。)
どんなに体を起こそうと上半身に力を入れるが出来ない。謎だ。
すると物音がしだした。何やら近ずいてきている。
(誰だ?看護師さんか?まぁそれなら起こし てもらって状況を聞こう。)
そして、その物音は顔を出した。
それはメイド姿の美女だった。ヨーロッパの血が流れているのだろうか。
「坊っちゃま、おはようございます」
と満面の笑みを浮かべて言ってきた。
(へ?ぼ、坊っちゃま?まぁ親はそれなりに金持ちだが。)
そんなことを言われるのは初めてだった。。
メイドさんだって家に雇ったことなどない。
病院の人なのだろう。
するとメイドさんは俺に両手を伸ばして両脇を掴み、“持ち上げられた“。
その後脇に抱えられた。そこで飛び込んできたのは信じられない光景だった。
広い部屋。大きな窓。大きなシャンデリア。
そしてなによりも目を見張ったのは自分の体だった。
見慣れない手。大きく動かそうとするとメイドさんに静止された。
メイドさんは俺が元いた部屋を出て、歩き始めた。
そこには病院とは思えない絨毯が敷いてある廊下があった。
それを見て2つ確信した。
まず、1つ目ここは病院ではないこと。
2つ目、この体は俺のではないこと。
俺はかなり気が動転していた。
まずこんな豪華で大きい病院は存在しないだろし、俺は事故に遭ったんだからそれなりに怪我してるだろうし。
それになんと言ってもこの体だ。
(事故にあったショックで赤子に戻った?いやでもこんな大きな屋敷に住んだ覚えはないから違うだろうし...。)
赤子...屋敷...メイド...?
こ、これは推測だが。
生まれ変わりというやつか?
だったらこの状況に全て納得いく。
だとすると俺はあの事故で死んだのか....。
そんなことを考えているとメイドさんは大きな入り口の前で止まり、
「シャリス様、おはようございます。」
と挨拶をしたのち礼をして部屋に入った。
そこには女性がいた。多分あの人がシャリスだろう。
普通な感じ、どっちかというとメイドさん達と同じような雰囲気だな。
「おはようレイン。」
そうシャリスは答えていた。
レインはメイドさんの名前だろう。
すると、レインは俺をシャリスに預け部屋の奥に入って行く。
シャリスは俺を抱くや否やかなり強く抱きしめてきた。
「あぁ、おはよう。”レナディ“」
そう言って笑顔を向けていた。
推測が確信に変わった。
やはり俺は生まれ変わってていた。
だが全然いい。
あの縛られた人生よりは何百倍も。
多分、シャリスは俺の母親だろう。
父親の顔も見ておきたかったがいないんだったらいいか。
前世の俺の親より2万倍綺麗だな。うん。
とすると、今は朝食だろう。
いや待て、俺は体の感覚から言って赤子、1歳にも満たないだろ。
その赤子に与える食事、それは、
乳だ。絶対そうだ。それ以外ない。
そうして俺の朝食は終わった。
結果から言おう。
乳だった。どう説明しよう。いや説明したくない。
だが、生前、女性の胸を吸ったりする経験などないし、きっと母親というのもあるせいか体は反応しなかった。
こうして朝食が終わった。
生きてる上で最も疲れた朝食だといっても過言ではない。
そして赤子の1日は早いのか、もう夜だ。
転生か.....。考えもしなかった。
だが前向きに考えよう。神様がいるかどうかは知らないが、与えてくれた2度目の人生だ。
大切に....いや自由にこの新しい人生を使おう。
(でも、自由な人生を送るためにもやることもあるな...。)
そう。俺は前世のように人任せな人生は歩まない。
自分で考えて自分で選択して。そして自分で決断するんだ。俺の人生なのだから。
そう決め。俺は眠りについた。