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神に見捨てられた俺たち  作者: 八神獅童
エルフの里
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襲撃

「待ってくれよ!逃げるって言ってもどこに逃げるつもりなんだよ!」

唯斗はラオファルに手を引かれながら聞いたが、ユングは「地下室に逃げ込むしかない!」と彼女に言うと唯斗の手を離した。

「地下室…そこなら…分かりました!そこに逃げ込みましょう!」

「地下室はこっちだ!」

唯斗とラオファルはユングと一緒に地下室に向かって走っていたが、今度は何が壊されて崩れる様な音が聞こえた。

「またでかい音がしたけど大丈夫なのか?!」

ユングは何か言おうとしたがその前に天井が崩落した。唯斗はラオファルに強引に後ろに引っ張られたので怪我はしなかった。

「ユイト、大丈夫?」

「何とか…でも廊下が…」

地下室への廊下は瓦礫によって塞がれてしまっていた。そしてその瓦礫の上に獣の仮面をつけた何者かが降り立った。

「お前が見捨てられた世界から来た人間か…」

唯斗は(着ている服はこの世界のものなのになぜ分かったんだ?)などと考えていた為「あなたは何者なの!」と言ったのはラオファルの方だった。

「俺はウルズへジンの戦士キルケ…その男を殺す為に来た!」

「俺を…殺す?!」

唯斗はあまりに突然の展開で気が動転して身体が動かなくなってしまった。キルケはその隙を突こうとしたがラオファルが先にサッカーボール位の大きさの火球をキルケに向けて放った。

「ぬぅ…!」

キルケは黒い壁の様なものを作り出して火球を防いで、唯斗に向けて瘴気を纏った小型の弾丸を放った。足が竦んで動けなくなっていた唯斗の前にラオファルが立って青い光を放つ防壁を作り出して瘴気の弾丸を防いだ。

「ユイト大丈夫?!」

「ああ…」

唯斗は目の前で起きている事に理解が追いつかず、言葉も出せなくなっていた。

「ユイトは隠れる事が出来そうな場所に逃げて!」

「俺…!足が竦んで動けっ…!」

「動きが鈍いな!」

キルケは動けなくなった唯斗に直接攻撃を加える為に突進してきた。ラオファルはまた火球を放ったが今度は軽く防がれてしまった。

「ふん!甘いな!」

「ユイトを…初めて会えた異世界の人を守るんだ!」

ラオファルはまた唯斗の前に立って光の防壁を作ったが、キルケのナイフによる直接的な攻撃ですぐに防壁にヒビが入ってしまった。

「そこを退け…貴様には用はない!」

「ううっ…!」

防壁は壊されてキルケはラオファルを邪魔そうに突き飛ばして唯斗に向けてナイフを振り下ろした。

「こんな…こんなところで…死んでたまるかよ‼︎」

唯斗はそう叫ぶと自身の体を包み込む球状のバリアを発動させた。キルケのナイフは唯斗の体に届く事なくバリアで防がれた。

「何…?!ここまで強力な魔法を?!」

「えーい‼︎」

キルケが驚いている隙を突いてラオファルは先程のものよりも大きな火球を放った。火球はキルケを直撃してそのまま壁まで吹っ飛んだ。

「ぐあぁ…!おのれ…」

キルケは魔法ですぐに火を消したが、火傷のダメージは大きく彼の治癒の魔法では治せない程だった。

「俺とした事が…何という失態だ…」

キルケは攻撃をやめて天井に開いていた穴から脱出して去って行った。

「逃げたのか…?」

「…ユング教授を助けないと!」

ラオファルは瓦礫を魔法で持ち上げて移動させた。ユング教授はその下敷きになっていて死んではいなかったが重傷を負っていたので、唯斗とラオファルは彼をまずは医務室に運んだ。


「ユング教授は大丈夫かな…」

「あの怪我ならそんなに時間はかからずに治ると筈だから、安心して」

ユング教授は病院に移動したが、ウルズへジンの襲来、校舎の一部が崩落などの事件が発生した為、一週間はまともに授業や講義できそうにないとの事だった。

「そう言えばお前…戦っている時のテンションが…」

「そうだ!ユイトあんな魔法使えたんだね!」

「お前…感情の起伏激しいんだな」

そうした話をしていたが、唯斗は周囲の景色に違和感を感じていた。

「なぁラオファル…なんか周りから人が居なくなった様な…」

「あれ?さっきの崩落も急いで避難する必要もなかった筈だけど…」

今度は唯斗達の前に不思議な雰囲気の巻かれた状態になった紙が転がって来た。

「何だこれ…?」

拾おうとすると突然浮き上がって今度はそこに書かれていた文字が光りながら浮かび上がった。

"南谷唯斗よ 我はそなたに助けを求めてこの世界に呼び出した者である。そなたは既にその身に秘められし力の一端を発揮した。その力の使い方を、戦い方を教える為にも六日後の正午にユーダリルの北の森に来て欲しい。そこに我らの里がある。何故そなたを呼び寄せたのかはそこで語ろう… 里の長 ウェイラン"

「え…ユーダリルの北の森には村も里もない筈だけど…」

「ユーダリルって?」

「あ!言い忘れてた…ここが都市ユーダリルだよ。ガルドラル王国の中でも大きい都市の一つでもあるの」

「ユーダリルの北の森…頼むラオファル。案内してくれ」

「え!ユイトは本気で行く気なの?」

「この手紙を送ってきた人に会えば何か分かるかもしれない」

「うん…私に教えられる事には限りがあるし…分かった。一緒に行こう」

「ああ…ありがとう」

「当分の生活はさっきの学生寮の部屋を使っていいから」

「…身体を洗える場所はあるか?」

「それならそれぞれの部屋にお風呂があるよ」

「どうやって沸かすのか教えてくれるか」

唯斗とラオファルは寮の部屋に戻って、ラオファルは唯斗に部屋の使い方を教えた。

「この呪符に熱を発生させる魔法陣が描かれているからそれを使ってお風呂を沸かすの。身体を流す為のお湯もそこから出せるよ」

「ありがとう…色々教えてくれて」

「どういたしまして!私も異世界の人に会えて嬉しいから…困った事があったら聞いて」

「そう言えばなんでラオファルはすぐに俺が異世界から来た人間だって分かったんだ?服が珍しかったのか?」

「それもあるけど…何となく気配が違って…」

「気配…か…」


その晩唯斗はベッドに横になりながら考え事をしていた。

(とりあえず風呂は思ったより使いやすくて良かったけど…この世界に馴染めるのか?なんで俺がこの世界に呼ばれたのか六日後に分かるのか…?俺はどうすれば元の…)

そこまで考えて唯斗の頭には別の言葉が浮かんだ。

(俺は本当に帰りたいのか?元の世界に帰って何をしたいんだ…?)

唯斗は1人で考えていたが眠気には勝てずに数十秒後には寝息を立てていた。


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