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神に見捨てられた俺たち  作者: 八神獅童
エルフの里
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未知なる場所  

唯斗は目が覚めると布団で寝かされていた。

(長い夢を見ていた様な気がする…)

だが唯斗はこれが夢では無い事がすぐに分かった。明らかに見知らぬ場所で未知なる空気を感じたのである。唯斗は冷静に用意されていた服を着ながら自分と部屋の状態を確認する事にした。

(俺は今シャツみたいなのとパンツしか身につけていない…あぁ服は濡れていたからご丁寧にハンガーに掛けて乾かしてくれているのか)

唯斗は自分の冷静さに驚きながら自分がいる寝室と思われる部屋の隅に置かれていた自分の荷物を調べ始めた。荷物は殆ど他人が触れた形跡がなく、財布から札が抜き取られている様な事も無かった。

(スマホで家族と連絡は取れないか?)

唯斗はスマートフォンのスリープを解除したが、圏外だった。

(圏外?!本当にここは何処なんだ?!)

唯斗が寝室のドアに目を向けるとちょうどそのドアが開いて見知らぬ女性が部屋に入って来た。


「あ…起きてたんだね。よく眠れた?」

自分の置かれた状況に戸惑っていた唯斗は思わず「お前は誰だ」と彼女に聞いた。

「私はラオファルだよ。ここミズガルズ大学で魔法学や世界学について勉強しているの」

(ミズガルズ大学?聞いた事無いが…それに魔法?!どうなっているんだ?!)

唯斗はパニックになりかけていたが、ラオファルは「落ち着いて。あなたが魔法を知らないのは不思議じゃないから」と言って唯斗を落ち着かせた。だが唯斗は落ち着くなんて事はできていなかった。

「あなたはミズガルズ学園の近くにある庭園で倒れていたの。何故かびしょ濡れで…」

「取り敢えず電波を拾える所に行きたいんだが…」

「でんぱ?」

「…何でもない。ここは何処なんだ?ラオファルはさっき魔法がどうとか言っていたような気が…」

「この世界はユグドラシル。あなたは神に見捨てられた世界からやって来たの」

神に見捨てられた世界という言葉を聞いて唯斗は気が遠くなりそうだった。

「神に見捨てられた世界?!ユグドラシル?!どういう事なんだ?!」

「お、落ち着いて!ああ…やっぱりユング教授に話してもらった方が良かったかな…」

しばらくして唯斗は少しだが落ち着いた。

「さっき教授って言ってたが…」

「ユング教授は世界学についての研究の一人者なんだよ」

「なるほど…じゃあその教授に聞けばこの世界の事や俺の状況も判るかもしれないんだな」

「うん!それじゃあ一緒に行こう!」

「そうだ!俺の名前…言ってなかっただろ。俺の名前は南谷唯斗。ユイトって呼び捨てでいい」

「わかった…よろしくね、ユイト」

唯斗とラオファルは一緒にユング教授の研究室に向かった。


「君のことはラオファル君から聞いている。この世界と自分がいた世界について教えて欲しいのだな」

ユング教授は落ち着いた雰囲気の男性で、唯斗も彼の話を聞けば自分の状況についても判るかもしれないと期待した。

「その…この世界はどういう場所なのですか」

「この世界には神によって祝福されたという伝説が残っている。その祝福によるものかは分からないのだが、人間以外にも様々な種族が文明を創り魔法を扱う力も与えられた」

「前にも俺のような異世界の人間が来た事はありますか?」

「前例は無いが…ある言い伝えが残されていて…」

「教授だけずるいです!私もユイトに聞きたい事がいっぱいあるんです!」

唯斗とユング教授の会話にいきなりラオファルが割り込んだ。

「悪い!ラオファルがいる事…忘れそうになっていたよ」

「すまなかった…次は君がユイト君に質問する番だな」

異世界に興味津々で興奮ぎみなラオファルはユング教授に促されて唯斗に質問した。

「まずは…ユイト君が元々いた世界ってどんな感じなの?」

「広々としているのに狭い…息はできるはずなのに苦しい…そんな世界だ」

「えっと…もう少し具体的に…」

「毎日のように電車って言う対して大きくも無い乗り物に大量の人を押し込んだり、インターネットって言う顔を合わせる必要も無く他人と対話できるツールでは匿名での攻撃が日夜繰り返されていて、大人たちは朝から晩まで死んだ目をして働き続けていて…」

「ストォーップ!もういい!よぉーくわかった!」

ラオファルは思わず質問に対する答えを遮ってしまった。

「まだあるんだけど…」

「もう十分だよ!…そうだ!そっちの世界は色んな種類のスポーツがあるんだよね!言い伝えが間違ってるせいでルールが違うところもあるけどこっちでも人気になってるんだよ!」

「そうなんだ…」

(あれ?反応が薄い…)「私はバレーボールが好きなんだ。見るのも良いけどみんなと一緒にやるのも楽しいんだよ!ユイトは好きなスポーツとかあるの?」

「俺はスポーツは嫌いなんだ」

「あ…そうなんだ…じゃあユイト君が好きな事ってあるかな?」

「本を読んだり…それから音楽を聴くのは好きだ」

「どんな本や音楽が好きなの?」

「小説はどのジャンルも好きで…音楽は本当に色々聴いてるな」

唯斗はラオファルの趣味も聞いてみたかったがその前にユング教授に聞きたい事があった。

「ユング教授、さっき言いかけてた言い伝えってどんな内容ですか?」

「召喚の儀…異世界の人間をユグドラシルに呼び出す為の儀式の事だ」

「召喚の儀…」

「神が見捨てた外なる世界の住人がユグドラシルを滅びから救うとも伝えられている」

「でも…何で俺が…」

「そこまでは分からないな…だがこのご時世どこかの国が召喚の儀を行なっていてもおかしくは無いが…」

「この世界にも何か問題はあるのですか?」

「それはあるとも。国同士の小競り合いが続いている地域も未だにあるし、最近はウルズヘジンなどと言う連中も現れて…」

「ウルズヘジン…そいつらは大きな問題になっているんですか?」

「それは…」

ユング教授が言いかけたところで、大きな地響きの様な音が聞こえた。

「ユング教授!ウルズヘジンがこの学園にも来たんじゃ…」

ラオファルがそう言うとユング教授は「そんな…!この学園も襲撃されるとは…」と呻いた。唯斗は混乱してしまい「襲撃?!何がどうなってるんだ?!」と叫ぶとラオファルは「説明は後!逃げるのが先!」と言って唯斗の手を引いて走り始めた。唯斗はそのままラオファルに手を引かれてユング教授と共に逃げる事にした。

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