7話:ルーク・ゼネルという青年
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前回の簡単なあらすじ
①フェリシアちゃん可愛い!!!!!!
②ルークは宰相のお気に入り
引き続き、宰相視点でお送りします。
9/27 一部を書き換えました。
11/23 行間を少し変更しました。
12/11 改稿しました。
「えっ、ちょっと、お父様どうしたの?今日体調悪かったの?大丈夫?」
「…そんなに私がルークくんを買ってることが意外かい?」
「それも確かに驚いたけど、いつも『娘と妻は誰にもあげない!』って感じのお父様が、ワタシを手放すとか言ってるのよ?驚かないわけないじゃない。」
どうやらこの子にとっては、私がルークくんを買っていることよりも、私がこの子をルークくんにあげると言ったことの方が驚きらしい。そりゃ、小さい頃から可愛がってきた娘と離れるかもしれない、と考えるのはつらい。しかし、
「私は君が幸せになることをしたい。そして、君がその相手と二人で生きていくことで幸せになれるというのなら、その時は送り出してあげようじゃないか。」
「お父様…」
「とか言って本当は?」
「もちろんフェリシアちゃんと離ればなれなんて嫌だから、出来る限りルークくんはウチで囲い込むつもり…って、エミリー今それ言わせないでよ!せっかくカッコよく決まったのに!」
「……」
「フェリシアちゃん、そんな冷めた目で見ないで!!!!!!」
なんとか父の威厳(そんなもの元からあったかな?)を取り戻して、話を再開する。まずは彼がいかに凄いかを説明するべきだろう。
「彼は確かに、一つ一つの面で見ると、その分野に秀でた者に一歩見劣りしてしまう。現に、風魔法と剣術では君に及ばないし、なにより彼の年代は、あの世代だからね。ルークくんが目立たないのも、無理はないよ。」
「そっか。ワタシの2つ下ってことは、クインテットと同い年なんだ。それじゃあ、目立たないわね。」
ルークくんと同じ世代の者たちは、何かに特化しているという者が特に多い。その中でも特に異才を放つ存在が五人おり、その者たちはまとめて、《風国の五人之異才》と呼ばれている。その五人は各分野において他を圧倒しており、学園卒業から2年、国の発展に貢献してきた。
なお、その五人には、国王陛下の娘であらせられる、第2王女のシルフィ王女もおり、今では『研修』と陛下が称して、各部署の“応援”を行っている。その手際は素晴らしく、「シルフィ様が“応援”なされた部署は、その日仕事が午前中に終わる」と言われるほどだ。
ルークくんはその五人と比べると、インパクトが薄い。しかし、ルークくんの凄さは、五人とはまた違った次元にある。
「ところでフェリシアちゃん、この学年の主席は分かるかい?」
「決まっているわ、シルフィ様よ。陛下がわざわざ言われてらしたんですもの。」
「そうだね。それじゃあ、そのときの次席は誰だったか知っているかな?」
「えっ、次席?そういえばそうね、シルフィ様の主席しか話は聞かないし、四人のうち誰が次席かは、聞いたことがないわね」
「実は次席、ルークくんだよ。それもすべての科目で2位を取っている、文句無しの2位なんだ。」
「え!?」
「ルークくんはよく自分のことを、『中途半端な器用貧乏』って言うんだけど、これだけの成績を修めておいてよく言えたものだと、当時陛下やアレク様と笑ったものだよ。」
「そうだったんだ…。でも待って、確かクインテットの子たちは、自分の得意分野じゃなくてもかなりできるって聞いていたのだけど?それに、複数人得意な人がいる科目だってあるはずよ。」
「そう、それが彼の『器用貧乏』らしからぬところなんだ。ルークくんは確かに、何か目立つ特技を持っているわけではないよ。でも、不得意な分野も、一部を除いて存在しないんだ。しかも彼は目立たないだけで、やること為すことはどれも高水準なものだから、全てを足すと成績は上の上、立派な優等生なんだ。」
昔からルークくんは、1人で何でもこなせる少年だったらしい。それが学園に入り、周りはみんな何か秀でた一芸を持っているなか、ルークくんは全てにおいて中途半端な、正に『器用貧乏』を体現したような生徒だったと、当時を知る教師陣から聞いた。
ひとつの壁にぶつかったルークくん。教師陣が陰ながら見守るなか(当時からルークくんは礼儀正しく、教師陣からは好印象で、目をかけてもらっていたらしい)、ルークくんが取った行動は、はたから見ると、『より多くのことに手を出す』というものだった。以前よりも多くの物事に取り組み、教師や同級生に頭を下げて、教えを請いにいったそうだ。
あまりに奔走しており、教師陣は無理をしていないか心配になり、何度か尋ねたそうだ。『一つのことに取り組んで、上達させた方が早くないか?』と。そんなとき、ルークくんは決まってこう言ったそうだ。
『やれることが多い方が、いざってときに役に立ちますから。』
「結果として、ルークくんはあらゆる分野において、かなりの水準を誇っているよ。さすがにセンスも関わるから、芸術はあまり上達しなかったらしいけど、それ以外の分野においては、その道を極めたプロ以外には負けない。そんな青年だよ、ルークくんは。」
そのうえ、礼儀正しくて面倒見も良く、人としても出来ている。特に教師陣からの信頼は厚く、五人と同等かそれ以上に信頼されている。そのため教師の多くは、五人之異才ではなく、ルークくんを加えた六人で、《風国の六花之逸材》と呼んでいる。まあもっとも、
「学園全ての教師に教えを請い、そしてそれらのほとんどを消化し、ものにした。そのことに敬意を称して、教師陣は、ルークくん個人のことは、
《万能者》
って呼んでいるらしいけどね。
私も正直、そっちの方があっていると思うんだよね。」
読んでくださり、ありがとうございます。
次回は、ヒロイン・フェリシア視点でお送りします。