29話:クミン・クックとルークの悩み
前回の簡単なあらすじ:魔獣についてと、魔獣がなぜ大量発生したのかの考察
投稿頻度増加プロジェクト、…
週一は少ないので、せめて週2にはしたいところ…
~ルーク視点~
プロトンと一緒に村に戻ると、村人のほとんどが中央の広場に集まっていた。どうやらその中心には物資を運んできた馬車があり、おそらく炊き出しを配っているのだろう。シルフィ王女やルルさんも炊き出しを配っていて、受け取った人たちはその美貌に見惚れていた。そりゃそうだ、二人は本当に綺麗だからね。
どうやら炊き出しの配膳はもう終盤らしく、特に手伝えることは残っていなかった。なのでボクたちはその様子を眺めていたら、その中の一人と目が合った。そしてその場を他の人に任せ、こちらに向かって歩いてきた。
「おかえりルーク、プロトン様!」
「ただいま、で良いのかな?ありがとう、クミンさん。」
「良いの良いの。プロトン様はお久しぶりですね!」
「ああ、高等部上がってからは、あんまり会ってなかったからな。半年ぶりくらいか。」
クミン・クックさん。ボクたちと同学年の人で、短めの茶髪を2つ結びにした、気の効く明るい女の子だ。幼い頃から母、キャサリン・クックさんのもとで料理の修行に励み、今ではこの国有数の凄腕料理人の一人である。18歳のときに母同様、陛下から“クック”の姓を受けた(平民は姓をもたず、功績を挙げた者に対して陛下から姓を賜るケースがある。本人にのみ有効)。
中等部まで学園に通っており、よく試作品をごちそうになったものだった。ちなみにその試食会のレギュラーメンバーは、ボクとネネ、アリサ、レナさんの四人で、そこにクインテットの五人やカミーユさんなど、仲の良い人も加わる。
「あ、そうそう。ルーク、婚約おめでとう!ホントは出発前に言いたかったんだけど、ワタシが着いたのシルフィ様たちのすぐ前だったから、タイミング逃しちゃって。」
「ありがとう。気にしなくて良いのに。」
「まあ、それはオレのせいでもあるからな、クミン嬢が気にすることじゃねえって」
「そうそう、とりあえずプロトンに当たっとけば良いよ。」
「わかった!」
「おいお前ら。」
中等部に入ってまだまもない頃は、クミンさんは貴族出身の生徒と話すときに緊張が見られた。しかし、ボクやネネ、レナさんたちと接するうちに慣れていったらしく、現在ではこのように、相手に求められたらフランクに接することができるようになった。侯爵家次期当主相手にタメ語っていうのは、結構ハードル高いからね。
「それにしても、ルークがあのフェリシア様とかぁ~。なんだかんだ、ルル様かシルフィ様とくっつくと思ってたんだけどなぁ~。」
「…そんなに分かりやすかったの?」
「まぁね。男子はともかく、女子の中でも特にルークを狙ってた人は、ひしひしとプレッシャーを感じてたみたいだったよ。」
男子のなかでは、あの二人が誰かに好意を持っている、という話は聞いたことがない。きっと女性にしかわからない感覚なのだろう。それよりも。
「え、ボク狙われてたの?」
「そんなに多くはないけど、一定数はいたよ?ただ、ルークを好きになる人って、自分の立ち位置を理解して行動してた人がほとんどだから、互いの目が気になって、出し抜くことができなかったみたい。前にネネが言ってた。」
「やっぱりアイツ、わかってて黙ってやがったな…」
「まあ、分かってたことだけどね。」
ボクは前世からの記憶がある分、早い段階で貴族同士の関係性を理解していた、と思う。加えて元々、会話そのものを苦にしていなかったこともあり、分を弁えることに対しても抵抗はなかった。クミンさんの話だと、そういうところを評価してくれてた人が、ボクに好意(興味)を持ってくれたようだ。そして、そういう人は自分自身もそういうことに気をつかっている人だから、そこまでを踏まえると…
「ボクにアクションを起こすのは難しかっただろうね。」
「そうだな。分を弁えてる人が、王女サマとルル嬢を差し置いて行動するなんてこと、できるわけないもんな。」
つまりはそういうことなのだろう。なるほど、これではライトノベルの鈍感系主人公と大差ないではないか。まあもとよりそういうことには疎かったし、恋仲になるよりも仲良くなりたい、という思いの方が強かったけど。みんなに申し訳ない…
「まあまあ、今はとりあえず目先の任務に集中した方が良いんじゃない?」
「いや、コイツは並列思考できるから、あんまり効果ないぞ。」
「うわ、優秀さが裏目に…」
「いやさすがにそこまでのものじゃないよ?できるってだけで、別にずっと2つのことを考えてるわけじゃないからね?」
心配してくれるのはありがたいけど、う~ん…
「ホント、普段は器用に何でもこなすのに、自分のこういうことになると、とたんに何もできないんだね。」
「ああ、なるほど。だから『器用貧乏』なのか。今までは“超人”とか“万能”とかのほうが似合ってると思ってたが、こういうところが“貧乏”なんだな。」
「うぐっ」
痛いところをつつかれ、思わず反応してしまう。
プロトンには3つ下の婚約者がいて、来年その人の卒業と同時に結婚式を挙げるそうだ。クミンさんも料理人の婿を取っており、今回はいないが、仲睦まじく生活している。
対してボクは、そもそも女性と付き合ったことがない。仕事柄貴族婦人にお会いすることはあっても、それはあくまで仕事であり、意識したことはない。せいぜい好印象を持って欲しいなー、と思って人と接してきたが、それ以上のことは求めてこなかったので、いざそのときになると、戸惑ってしまう。
う~ん、やっぱり欲求が少ないのも、考えものだなぁ。
それから数時間後、みんなで広場に集まって、明日の討伐についての確認を行った。その結果『静寂の森』に行くのはボクのほかに、
戦斧使いのアリアさん、
剣士のフレデリカさんとアリサ、
魔法使いのマヤさん、
『風国の耳』ネネ、
『風国の護り手』フランさん、
そして《理系の申し子》プロトン。
ボクを合わせた8名となった。あとの団員は、ボクたちがうち漏らした個体の各個撃破をしてもらうことになっている(レナさんとカミーユさんには、万が一に備えて非戦闘員の人のカバーに回ってもらう)。
「いよいよ明日です。皆さん、今日はしっかりと英気を養いましょう。」
話の最後にシルフィ王女がそう締めくくり、一同解散となった。今晩の寝ずの番を村の人たちが引き受けてくれたので(彼らは普段から似たようなことをしているので、下手な騎士より見張りに適正がある)、ゆっくり休もう。
明日はしっかり頑張らなくては。
読んでくださり、ありがとうございました。
新キャラ、マヤの紹介は機会があれば。
いよいよ次は30話!
…特に何もないです、ごめんなさい…




