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17話:ルークたち四人の会話の裏側

前回の簡単なあらすじ:四人の会話が弾む


今回は、ルークの弟・トール視点でお送りします。


12/19 改稿しました。

「少し散らかっているが、入ってくれたまえ。」

 兄さんとフェリシア様を二人っきり(正確にはアニーとルアーノも一緒)にしたあと、僕たちはシルエイティ公爵の書斎に通された。

 その部屋は両側の壁一面が本棚になっていて、一部の置物を除き、さまざまな本がびっしりと詰まっていた。その置物も、砂時計や帆船の模型など、知的な雰囲気を感じさせる。

 窓から少し離して置かれた仕事机は、幅・奥行きともに広く、右隅には十数枚ほどの紙束があり、おそらく仕事の書類なのだろう。

 部屋全体で見ると、汚れひとつ、埃ひとつない、とてもきれいな、静寂に包まれた場所だ。なんというか、とりあえずひとつだけ言えることはーー


「「…ルーク兄さんが好きそう。」」

「え?」

 シルエイティ公爵が驚いた表情をしている。僕も驚いた、フィーアも同じことを考えていたとは。


「あ、いえ。兄が好きそうな雰囲気の書斎だったので、つい。」

「つーか前から思ってたが、お前とルーク、性格的にすごい似てるよな?紅茶よりコーヒー派で、落ち着いた雰囲気を好んで、そのうえ相手によって“顔”を使い分ける。ホント、お前の方がアイツの父親っぽいんだよなぁ。」

「ふむ。つまりルークくんは、私の娘婿になる運命だったと…」

 シルエイティ公爵は、どうしてここまで兄さんに好意的なんだろう?お茶に呼んだり、名前で呼ばせたり(名前で呼ぶのは、本当にごく一部の人のみだ)。


「ふふ、あなたは本当にルークくんが好きね。」

「そうだね♪何か他に理由でもあるの、ライセン先パイ?」

「いや、特に深い理由はないよ。私の開いた社交パーティーに、ズァークに連れられて初めて来た、少し疲れたようなルークくんに声をかけたのが最初の出会いかな。」

「ああ、ルーク(アイツ)が10歳のときか。」

「うん。初めての社交パーティーで疲れたのかと思ってね、大丈夫か聞いてみたんだ。そしたら彼、『社交パーティーって、腹の探り合いばかりでいやになりますね』って言ってさ。もうおかしくって、笑いをこらえるのに苦労したよ。」

「ああ、そういやそんなこと言ってたな。それ以降、社交界は避けるようになったし。」

「当時の貴族の方々は、宰相が変わって間もなく、派閥争いが盛んでしたから。その空気に“あてられた”のでしょう。」

「あの頃はホント、ギスギスしてたよね~。」

(兄さん宰相に何言ってるの!?)

 普通そういうこと、パーティーの主催者に言う!?しかも相手は国のナンバー2なのに。というか、それ10歳の子供が言うことじゃないよね?隣では、フィーアが顔をいつも以上に固まらせている。多分同じことを思っているんだろうなぁ。


 ただ、これを機に、シルエイティ公爵はルーク(兄さん)を気に入ったらしく、見かけては声をかけるようになったらしい。そして話すうちに、兄さんが女性を大切にできる人間で、加えてフェリシア様と同じ転生者ということから(早い段階で聞いていた)、父さんに婚約を持ちかけたそうだ。

 確かに兄さんは昔から、女性には特に優しかった(男性にも優しかったが、女性の比ではない)。現に、僕の婚約者のヒルダの相談相手は、大抵同性の人か兄さんだ。それに“自分”を持っていて、ぶれない人でもある。そう考えると、時々自分をしっかり持てない僕は、見習うところが多い。



 シルエイティ公爵が兄さんを気に入った理由がわかったところで、父さんが尋ねた。

「まあここまではわかった。しかしだライセン、さすがに“子爵”はまずいんじゃないか?」


 この国では、王家の方以外の貴族は、誰でも結婚しても良い、ということになっている(王家は伯爵以上の者)。しかしそれは、先代国王、アレクサンダー陛下の代からの話で、未だに家の格が違い過ぎる者同士の結婚は少なく、白い目で見られることがある。特に公爵家は“王家の親戚”の一面もあるため、家柄も見られることが多いと聞く。子爵家では釣り合いは悪いだろう。

「実はそのことで頭を悩ませていてね。まあいざとなったら反対意見は無視して押し切れば良いんだけど」

「おい待て、なにもそこまでしなくてもいいだろ。」

「当然だろ?そもそもルークくんを(さけず)んでいるのは、伯爵家や侯爵家の者たちがほとんどで、関わりの多かった平民を含めた子爵以下、それと“クインテット”が二名いる公爵家は、彼を高く評価しているんだよ?」


 兄さんはいろんなことができて(一部例外あり)、どれも完成度が高い。それで昔から、誰かの手伝いや手助けをすることが多く、感謝している人は多いと聞く(ルアーノ情報)。加えて兄さんは、あの《風国の五人之異才(クインテット)》と交流があり、公爵家の方にも、その名を知られている(“個人として”名前を覚えられているのはまれなこと)。


「まあだから、そこまでひどい批判は来ないと思う。しかし、この国を動かす機関の多くは、侯爵家や伯爵家が、大なり小なり所属する。彼らから舐められたままでは、私の跡を継いだとき、満足に仕事ができない」

「継ぐのは確定なんだな。」

「なのでいろいろ、私なりに考えてみた。そして先日、至極全うな考えにたどり着いた。」

 そう言ってシルエイティ公爵は、父と僕に対して、それはもう嬉しそうに、こう言い放った。




「なんなら今すぐにでも、彼に手柄を立ててもらえば良い、ってね。」

読んでくださり、ありがとうございました。


次回から、少しずつ物語が動き出します。

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