12話:娘婿を出迎える準備をしよう(シルエイティ公爵家の準備風景)
前回の簡単なあらすじ
1,母に弟妹が襲われた
2,宰相公爵家に出発
ライセンさん視点です。
12/13 行間を少し変えただけです。
なので内容は同じです。
今日はついに、ルークくんが婚約の件で、我が屋敷へ挨拶に来る日だ。そう考えると年甲斐もなくわくわくしてしまい、いつもより一時間も早く起きてしまった。普段なら二度寝の欲求に駆られるのだが、今はとても気分が良い。
この家に仕える者たちもそのようで、昨夜二人との話が終わり、この話を使用人たちに伝えたら、その場が歓喜に包まれただけに留まらず、そこから急いで準備を始めてしまった。みんなフェリシアちゃんのことを愛してくれており、親として嬉しい限りなのだが、
「おはようございます、旦那様。」
「うん、おはよう。まさかとは思うんだけど、ちゃんと寝たかな?」
「何をおっしゃられますか。このようなめでたい日のための準備、寝ていては時間が足りなくなってしまいます。」
ーーまさか、一晩中仕事をし続けるとは思わなかった。いやその気持ちは嬉しい。しかし、そこまで無理をさせてしまうのは申し訳ない。それに、
「みんなの気持ちはとても嬉しい。でも、徹夜は良くないよ。これから少し休んで、ルークくんたちの到着に備えなさい。それに、これを知ったらフェリシアが悲しむよ?」
私がそう言うと、今話していた副侍女長のセレナが「今気づいた」と言わんばかりに目を見開いた。
フェリシアちゃんは、今でこそ少しツンとした態度をとるが、根はとても優しい子だ。そして、過労で倒れることをとても嫌っている。話を聞いてみると、前世では幼い頃に、父親を過労が原因で亡くしていたらしく、親しい者が過労しているところを見るのは、精神的につらいらしい。セレナが副侍女長になってすぐの頃に過労で倒れた際には、それはもう泣きながら怒り、それ以降、この家の者は使用人を含め、『過労』が禁止となった。
今回は、みんな楽しくて仕方なく、待ちきれなくて一晩中作業をした。しかし、これをフェリシアちゃんが知ったら、喜んだり恥ずかしがったりもするだろうが、それ以上に心配してしまうことは、ありありと想像できる。それは、自身が心配された経験のあるセレナには、痛いほどよく分かるだろう。
幸い準備の方はほとんど終わっているらしく、今から休んでも問題ない。
「ーーという訳で、使用人はこれから2,3時間休むこと。これは当主としての指示だよ。これを侍女長にも伝えておくれ。」
「…かしこまりました。そのように取り計らいます。」
そう言って、セレナは下がっていった。真面目な彼女のことだ、しっかりと他の者にも伝えてくれることだろう。気持ちは本当に嬉しかったが、休憩も適度にとって欲しいものだ。とりあえず、朝食は備え付けの軽食で済ませ、私は私で、自分の準備をするとしよう。
それから3時間後、再びルークくんたちを迎える準備が再開された。年に一度の大掃除を決行し、屋敷全体がいつも以上に綺麗に磨き上げられている。調理室では料理長のもと、料理人たちが過去に類を見ないレベルで、作業にあたっている。今回の相手は、あまり華美なものを好まないため、料理長にはそのことを伝えたのだが、果たしてどうなるだろう。まあ何にせよ、美味しいご飯が食べられれば、それでいいよね。
もちろん、フェリシアちゃんの準備も進行中だ。最初は着飾ることに抵抗があったフェリシアちゃんだけど、みんなに押されて支度を始めてからはそわそわし続けている、とセレナから聞いた。うん、想像しただけで、フェリシアちゃんのかわいさが伝わってくるね。エミリーからも、ルークくんが来るのを楽しみに待っていると聞いたし、フェリシアちゃんがルークくんを気に入ってくれると嬉しい。
さあ、こちらの用意は順調だ。ルークくん、楽しみにしていておくれ。
読んでくださり、ありがとうございました。
次回は、ライセンさんorズァークさん視点の予定です。