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霞んだ桜色(27)
「え?」
聞き間違いだと思った。何の感情も込もっていない無機質な声が通り抜けて、寒気だけが私の肩を固くさせた。
「あの子は、あの公園に呪われてしまっているんだよ」
「呪われてるって、何があったんですか?」
後輩が私の横で少女を見つめながら聞いた。少女は公園に入らずに、辺りを眺めるように見回していた。
「ううん、きっと僕もかな……。あの公園は、あの子の父親が作り上げてくれたんだよ」
「お父さんが……」
「あの公園はね、僕の妻がデザインしたんだよ。そして、娘達が引き継いで完成させてくれたんだ。そして、孫のあの子だけが残ってしまった……」
あの子だけが残ってしまった。その言い方に彼自身は存在しないような冷たさがあった。