115/121
霞んだ桜色(23)
「あの、大丈夫ですか?あれでしたら止めておきますけども……」
何を着るのかも分からないまま、彼に尋ねるのも不思議だったが無視して行く訳にもいかなかった。
「ごめんごめん、うん、大丈夫だよ……」
立ち上がった私の袖を、少女は持ったまま心配そうに彼を見つめていた。心配というよりも、何かを焦っているような……
「じゃあ着るかどうかは置いておいて、見せてもらいましょうよ」
後輩も何かを察したのか、探るように提案してくれた。
「うん、そうだね。とりあえず見てもらおう。先生達を案内してくれるかな?」
彼が少女に優しく確認すると、彼女は何も言わずに力強く頷いた。
「付いて来てね」
とことこと歩く少女に付いて行くと、木製の階段を登り、突き当たりの部屋を手慣れた感じで開いた。
「すごい……」
窓から差す柔らかい光に照らされて、透き通る琥珀色のウェディングドレスが、静かに輝いていた。