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霞んだ桜色(19)
「……お爺さんも呼んであげてくれる?」
「うん!待っててね!」
どうしても放っておけなくて、私達にこれだけ優しくして下さった彼にも、ほんの少しでも何かを返したかった。
「ふふ、やっぱり店長は優しいんだから」
「そんなことないよ。あんたも同じことを考えていたんじゃないの?」
「どうでしょう、ただ……。友達は多い方が良いですもね」
きっと後輩も同じことを考えていたと思った。そう思える爽やかな笑顔だったから。
いや、私以上に彼のことを心配しているはずか。どうカウンセリングしてもらったのか気になるくらいに、後輩は元気にしてもらったのだから。自分自身も辛いはずなのに、どうして彼は他人の悩みを聞いて回れるのだろう……
「連れて来たよ!」
「どうも……。その……。お二人共、調子は大丈夫かい?」
何故か少し照れながら挨拶をして、人が切り替わったように調子を聞いてくれた。恥ずかしそうにしていた彼の素は、振り絞るように目が細くなるに連れて消えて行った、医者としての彼が交代したように。