そこにある愛を抱きしめて

霞んだ桜色（１０）

「ああ、ありがとう。ちゃんとご飯をあげれるようになったね」

「うん！」

　少女はとても嬉しそうに頭を撫でられていた。彼の笑顔は無理をしているようで苦しそうだったけれど、優しい笑顔だった。

「すまない、君が彼女達と重なってしまって。この子はまだ小さかったから、お母さんに上手くご飯を食べさせてあげれなくてね」

「そうだったんですね……」

「ちゃんと牛乳飲んでるからね！」

「うんうん、良い子だね。どんどん大きくなって、お姉ちゃんより大きくなるんだよ」

「うん！」

　後輩も心配そうに彼を見つめていた、そして少女に近付いて優しく肩に手を乗せて呟いた。

「うん、私より大きくなって、お爺様を支えてあげるんだよ。そして、絶対に幸せになるんだよ」

「うん！お姉ちゃんより幸せになる！」

「ふふ、それはどうかな。ほら、冷めないうちに食べよ。店長もそう言ってくれたし」

「でも……」

　少し私を見てから俯いてしまった少女を、彼は申し訳なさそうに撫で続けていた。

「そうだ！食べ終わったら、また食べさせてくれるかな？ちょっと頭痛くて休んでるから、ゆっくり食べてね」

「うん！ありがとう！」

　少女は勢いよく頭を上げて、周りが明るくなるような笑顔で席に戻っていった。

「もう。店長は優しいんだから」

「ふふ、あんたも優しいじゃない」

　自然と彼と目が合って、少し微笑んでからゆっくり頭を下げてくれた。少し冷めても構わない、皆が笑顔になってくれることが本当に嬉しかったから。