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霞んだ桜色(8)

「はい、あーん」


 一段と高くなった少女の声に乗って、低い位置から見上げるようにスプーンを掲げていた。


「やっぱり椅子に乗った方が良いんじゃない?」


 横で私のオムライスの皿を持って、助手のようになっている後輩が呟いた。


「危ないから椅子の上に立っちゃいけないんだよ!」


「ふふ、ありがとうね」


 一体いつ以来だろう、誰かに食べさせてもらうのは。少し恥ずかしさもあったけれど、少女の優しさも入っているオムライスは本当に美味しかった。


「美味しい!」


「でしょ!」


 次の一口をスプーンで切り取っている少女を見て、少し考えてから一応提案してみることにした。


「私は大丈夫だから、あなた達も冷める前に食べて欲しいな。こんなに美味しいんですもの」


 カランとスプーンが倒れる音がした。お爺さんが右手で目を押さえて下を向いてしまっていた。


「お爺ちゃん!」


 私達は何が起こったのか分からずに、また慌てて彼に駆け寄る少女を、見守ることしか出来なかった。


「大丈夫だよ、お爺ちゃん」


 背伸びをしながら、丸まった彼の腰当たりを撫でる少女の目からも、音も無く涙が流れていた。

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