赤の君
『待っておったぞ』
ブルガさんの転移魔法で着いた先はダンジョンの一室
そこにはワインレッドのドレスを着た美女がソファーに座り寛いでいた
「お久しぶりですなぁ、1年ぶりほどですかね」
『久しいのう・・・と言ってもワレは時間の流れなど然程感じぬ』
そう、俺は何度かこのレッドドラゴンに会っている
『此処を少しばかり離れるでな、信頼できる奴に頼もうと思ったらヌシしか出てこなんだわ・・・』
「光栄ですねえ」
二人して微妙な顔で笑う
早速話に取り掛かろう
「で、依頼の件なんですが相手が勇者ってことで少しダンジョン弄る予定ですがよろしいでしょうか?」
『ヌシは面白いものを作るからのう、構わぬ好きにせえ、ほれコアへ行くぞ?』
ソファーからゆったりと立ち上がる
『本当は勇者などワレが立ち会いたかったものを・・・』
流石ドラゴン・・・戦闘狂だ
しかし赤の君はトラップが大好きなのである
『そうじゃ、あの罠は撤去しないでくれワレのお気に入り故にな』
そう歩きながら笑顔で話す
「アレですかーいいですよねー階層自体がトラップ、俺も好きですよアレ」
階層自体が罠だらけ、レンジャー、盗賊、罠士泣かせの階層が存在する
階層の床が『同じ材質、同じ大きさ、同じ魔力』統一され目視で違いを発見するのはほぼ不可能
その床と壁と天井にあらゆるトラップが仕掛けられている
赤の君特製の階層
『あと金が掛かっておる、ワハハハ』
床も壁も天井もドワーフに作らせた一級建築物
王城よりも金が掛かる
「あそこまでたどり着けませんよ、間違いなく」
『でも勇者じゃからのう・・・また壊されるのも癪じゃ』
罠を解除されるのは構わないが『罠を踏み抜いて超えてくる』そんな勇者が嫌って事
昔召喚された勇者には特別な加護があった
ありとあらゆる罠に対する特別な耐性があった
そんな勇者と同じ時代なら俺の仕事は詰んでた
赤の君のダンジョンも相当荒らされたらしい
『此度の勇者はどの程度かのう・・・』
やはり心配なのだろう遠い目をしている
昔荒らされたのがよっぽどなのか・・・
「まだ召喚されて然程日数は経ってないみたいですし後重要ですが我らの同職が居ません」
『はあ?馬鹿にしておるのか!?ありえないじゃろ!?』
鋭い目で俺を睨む
怖いのでマジ怖いので睨まないでください
あと竜気漏れてる!漏れてる!
「ええ、真夜中に目を瞑って橋を渡ってるんですよ勇者たちは」
宥める様に答える
しかしアンナも怒ってたが赤の君もここまで怒るのか