盲目と猫
「…………」
「…………」
気まずい。告白することは心に決めていたが、いざ、この状況になるととても空気が重い。
メカリル族から猫型の魔力変化増幅装置―ゲルリカを貰ったあと、ホテルに戻った。
その後、帰りの船でグレイはホルセに結婚の申し出をしたのだ。
勿論、全てが解決した後で、ということなのだが、グレイはこの空気になることを容易に予想できるはずだったのだ。しかし、恋は盲目、気持ちが前のめりになってしまい、後先を全く考えていなかった。
「……なぁ、グレイ?」
「お、おう…………?」
「……もうすぐで、着くな」
「そうだね……」
この会話も三回目だ。
ホルセもホルセでこの告白の対応に困っていた。
シル・マッカザージルの『シンジツ』という魔愚のせいで、エオに恋している自分を認めざるを得なくなっていたからだ。
それにリリカのこともある。リリカはグレイと同じく幼馴染だが、恋をしているのだ、グレイに。
ここでグレイの告白を受けるにはあまりにも障害が多すぎる。
「…………」
「…………」
二人の関係は進展しないまま、ソラーノ島についてしまった――。
「……やっとついたな」
ハロニー漁港で降りた二人は一隻の船に目が奪われた。
「こんな立派な船がなんでここに?」
グレイは興味津々に船に近づいていく。
すると、船の先端付近が開き、舟梯子が掛けられた。そこから降りる複数の人たち。
「エオじゃないか!」
先に気付いたのはグレイだった。その声につられホルセも振り替えると、確かにエオだ、それにメウとビスもいる。あと、クライドとレオルも…………。
そこまでは良かった。しかし、その後方には。
「……シル・マッカザージル!」
ホルセはダッシュで船に近づき、空中にジャンプ。そのままは魔法を放とうとするが、やめた。エオと目があった、とても悲しい、そして覚悟を宿した目だった。
「あ、ホルセ! 帰ってきたんだね?」
エオはホルセを元気良く迎えた。しかし、ホルセにはわかる。何かあったのだろうと。
「エオ、何があった?」
「それが……」
エオが話そうとしたとき。
「村長?! 何でここに??」
グレイが村長と呼んだ人物はシル・マッカザージルの陰になってホルセからあまり見えなったのだが、グレイはすぐに気が付く。それもそのはず、わざわざ船で海を渡り、探していた人物と出会い、お別れをして帰ってきたら、そこにその人物がいたのだから。
「数日ぶりじゃのー、グレイ」
「え、何がどうなっているんだ、エオ? 説明してくれ!」
「落ち着け、エオが説明しようとしたら、邪魔したのはグレイだぞ?」
「そ、そっかすまない、頼む…………」
エオは一通り、全てを説明した。
「じゃ、ここにいるシル・マッカザージルが本物であとはニセモノだったのか?」
「まぁ、そうだね? 信じてもらえるとは思っていないけど、少なくとも僕はマジック・シェア社ともピースとも直接関係はないよ」
「……そうか」
「信じてくれるかい?」
「まぁ、エオがそれで納得しているなら、いいがな、それに今は争ってる時間はない、キャロルのところまで連れて行ってくれ、私はこれでも医者だ」
「あ、それなら私が案内します」
レオルが案内役をしてくれるらしい。
「あぁ、連れていってくれ!」
船梯子を渡り、ホルセとレオルはキャロルが眠る部屋へと急いだ。
「……それで、エオに大事に話があるんだが?」
「どうしたグレイ?」
「正直に答えてくれないか?」
「え、うん、なんだよ?」
「エオはこの世界のひとじゃないのか……?」
グレイはずっと気になっていたのだ。村長の、エオはこの世界の者ではないという言葉。
「そうだよ?」
「……え?! そうなの?」
「……あれ? 言ってなかったっけ?」
「いや、知らない……」
あまりにあっさりと答えるエオ。
「今はそれどころじゃないよ、グレイ! もうすぐ、ニセモノのシル・マッカザージルが現れるんだ、どうにか対処しなくちゃ!」
「あ、そうだな……?」
「ほら、グレイ、何をぼけーとしておる! ゲルニカを使わんか!」
村長が尻を叩く。
「……グレイ、エオは大切な友達なんじゃろう? それはこの世界の住人でなければ消えてしまうようなものなのか?」
「……そんなことは、ないですけど」
「お前の気持ちもわかる、信用しているからこそ、相手のことを知りたい、そう思うことは決して不思議なことでないぞ、しかし、今は彼を信じてあげていいのではないか?」
「……はい! エオ!」
「ん? なに?」
「これを使ってみてくれ」
「え、猫? 使うって…………?」
にゃーん!!
その声でゲルニカは光り輝いた。
「なんだこれ! 身体が……」
「エオ! 集中するんじゃ! 自分の中にその光を集めるのじゃ!」
「そんなこと言われても……?」
エオはイメージする。光が身体に入っていくような、なんだろうか、この感覚。
ちょっとだけ懐かしい。
あ、この光。似ているな、あの人に。
温かくて、優しくて、大好きだったピースに。
その刹那――。
エオの身体は光を吸収した。




