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シル・メッキガーデンと自然の力

「……お前はシル・マッカザージル!」

「やぁ、君がエオくんだね?」


 シルはエオに手を振った。その瞬間、エオはシル・マッカザージルに飛びつき、胸ぐらを掴みあげ、顔を全力でぶん殴った。


「てめぇ、ノコノコと出てきやがって! 殺す、絶対殺す!」

「エオ、落ち着け!」

 クライドがエオの身体を掴み上げた。

「離せ! あいつが、ピースを!」

「ピース……?」


 シルは立ち上がる。口元からは血が流れ、頬は真っ赤に腫れている。

「あぁ、お前が捕まえた妖精の……」

「あぁ、そういう事か…………」

「何がだよ!」


 エオは頭に血が昇っている。今はクライドがしっかりと捕まえているが、限界は近い。

「……すまない、エオくん、あれは僕じゃない」

「…………何言ってるんだ?」

 シルの言葉の意味が理解できない。

 あの時、あの動画にいた男は間違いなく目の前のシル・マッカザージルであるはず。

 いやまて。

「……もしかして、ニセモノってことか?」

「そうだね、正確に言うと僕のお父さんが開発した魔愚だよ、この件の真相を話そう」


 シルは語りだした。


 シル・メッキガーデン。彼は優秀な魔法使いだった。

 誰もが認める魔力を持っていながら、勉学にも励み、皆平等に接する。その姿に尊敬する者も多く、数多くの弟子を抱えていた。

 しかし、その一方で女遊びが激しい一面もあった。

 メカリル族の娘―シシカ・ランドライルと結婚するも、女遊びを止められず、数えきれないほどの隠し子がいたという。

 シル・マッカザージルはその姿を見て、余りの汚らわしさに嫌気が指し、家出。後にメカリル族の村長、つまり祖父の家で幼少期を過ごす。

 しかし、祖父とあまり反りが合わず、またも家出、次はメッキガーデンが残した隠し子たちを捜す旅に出たという。

 そこでパンヌや他の隠し子たちを救い、一段落着いたとき、メッキガーデンからメッセージが届いたという。

『魔愚の開発を手伝ってほしい』

 シル・マッカザージルはこの時、素直に嬉しかった。自分の好きなことが認められたと大喜びで、メッキガーデンの元へ向かった。

 しかし、そこにいたのシル・マッカザージルが知っているお父さんではなかった。

 髭は無造作に生え、身体はやせ細り、まるで廃人のようだった。


「……そして僕は聞いたんだ、何を手伝えばいいのって?」

「…………」

「そしたらさ、お前の技術全てだ! って怒りだしてさ、僕は仕方なく技術をお父さんの脳内に直接流し込んだのさ、そうしたら、僕の知らないところで僕はどんどん有名になっていったのさ、マジック・シェア社だって本当はあんな会社にするために設立したんじゃない、社長も僕そっくりの誰かだし。それに、お父さんは絶対手を出してはいけない禁忌を今、開発しているんだ」

「それって、もしかして……?」

「そう、妖精の力、いや、もっと言うなら、自然の力だよ」

「……自然の力?」


 エオはこの時、シル・マッカザージルへの憎しみがすうーと消えていくのを感じた。何故かはわからない、もしかしたら、デタラメを言っているだけかも知れない。でも、エオは信じたいのだ。


「そのために妖精の生き残りを捕まえて、魔力を無理矢理吸収しようとしているんだ、それがきっと、ピースという人なんだと思う……」

「……なるほど、一つだけ確認したいことがあるんだけど、いい?」

「あぁ、もちろん」

「シル……さんはどうしたいですか?」

「……というと?」


 エオはため息をついた。ここは隠しても意味がない。

「端的にいいます、僕は貴方の父親を殺すと思います」


 シル・マッカザージルはにっこり笑ってこう答えた。


「僕もそのつもりですよ」と――。




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