死者とニセモノ
「…………そんなことが、あったんですね」
パンヌの口から語られたのは想像もしていなかった言葉の数々だった。
キャロルと共にメジザ島に向かったこと、そこにピースたちが捕まっているかも知れないこと。その道中、船上でシル・マッカザージルと戦ったこと。その戦いの末パンヌのお蔭勝利したものの、死者が出たうえにキャロルがこのような姿になったこと……。
「……すまない、エオ。キャロルがこんなことになったもの、俺らの意識が低かったせいだ、責めるなら私を責めてくれ……!」
クライドは頭を下げた。
「……頭をあげて下さい、シル・マッカザージルの強さは僕も分かっています」
「…………?」
クライドは不思議な顔をしている。
それもそのはず、船上での戦いにはエオは参加しておらず、シル・マッカザージルの力は知らない。
しかし、エオも戦ったのだ、トリノコ島でシル・マッカザージルと対峙した事実がある。
これはどういうことなのだろうか。
どう考えていたとき、トリノ湖の神様の言葉を思い出した。
「……ニセモノだったから」
トリノコ島で出会ったシル・マッカザージルは、神様曰く機械でできたニセモノだった。機械で思い当たるのは魔具だけだ。
シル・マッカザージルが開発した魔具はこの世界でもかなり有名だし、あの性格だ、もしかしたら、自分のニセモノぐらい開発できてしまうのだろう。
「エオ、ニセモノとはなんだ?」
「僕らもトリノコ島でシル・マッカザージルと戦いました。紆余曲折あってそれはニセモノだったんです、だから、皆さんが戦ったシル・マッカザージルが本物かどうかすらもわからない、ということです…………」
「本当ですか!?」
エオの言葉に食いついたのはパンヌだった。
正直、この状況は絶望的だ。シル・マッカザージルのニセモノにすら、この有様だ。いくらエオが魔法を貰ったからといって、それがどのくらい役に立つかもわからないし、そもそも、現在使うことすらできていない。
しかし、パンヌは少しう嬉しそうに見えた。
小さな声で、……だからか、とつぶやいた。何かを納得したようだが、エオには全く分からない。
「しかし、まずいな。シルがあれより強いとなると、俺たちだけでは太刀打ちできない、今回だって、パンヌの力のおかげで勝利したに過ぎないからな…………」
「パンヌさんはどうやってシルを倒したのですか?」
「……それは…………」
パンヌはびくびく震えている。何かまずいことを聞いてしまったのかも知れない。確か仲間を一人、死んでしまったと言っていたし、生ぬるい戦いではなかったことは容易に想像できる。
「エオさんごめんなさいね、今はあまり聞かないであげて?」
小さな女の子がパンヌを庇っている。
名前はアルで、クライドやレオルと同じくキャロルを守っていた兵士の一人らしい。
こんな小さな子供に止められてしまっては、仕方がない。気にはなるが、落ち着いてからにしよう。
「それより、明日どうするかを考えなければいけないだろう、シル・マッカザージルが現れるのだ、それに今回は本物か、若しくは更に強力なニセモノか。どちらにせよこのままの勢力じゃ…………」
勝てない、クライドがそう言いかけた時――。
「僕も戦うよ」
勢いよく開いた扉からこちらに向かってくる二つの影。
一人は年老いた男性。
問題はもう一人の青年だ。
「お前は――」
部屋の中は緊張感でヒリついた。




