メウとビスとトリノ湖と。part8
目が覚めたらそこはふかふかのベッドの上だった。心地いいのだが、それだけが理由ではない。安心する匂い。いつも、近くにあった匂いだ。甘くて、そう、これは女の子の匂い。
「あ! エオ! 起きたの!」
「う、あ、メウ……? ここって……?」
「ここは私たちが昔使ってた子供部屋なの、エオ、戦いの後、湖で倒れちゃって! 運んでくるの、大変だったの!」
メウは小さな胸、というかまだ一〇歳なのだから、こんなものか。それは置いといて、そのないぱったんこな胸を張って、アピールしている。これはきっとお礼の言葉を待っているのだろう。
「ありがとう、助かったよ」
「へへえ、どういたしましてなの!」
ここは素直にお礼を言っておこう。確か、水龍がシルを倒して、シルが実は偽物で……。
その後が良く思い出せない。
「ビスは? どこにいる?」
「ビスは下でお母さんと手伝いしてるの? 連れてくる?」
「いや、もうすぐしたら僕も降りるよ」
「わかったの!」
メウは元気良く部屋を出ていった。
エオは記憶を辿ろうとする。
確か、ここに来てもう、二日は経とうとしている。
いや、寝ていたから、三日か?
ん? 待てよ。
「何日ぐらい寝ていたんだ?」
エオはふと気になった。トリノコ島に来てから、今は何日目なのか。最悪一週間は過ぎてしまっているかもしれない。
「やばい、早く確認しないと!」
エオは慌てて部屋を出た。すると階段がある、つまりここは二階か、何故二階まで運んでくれたのかは不明だが、今はそんなことはいい。一刻も早く、現在がいつなのか、それを知ることが最重要だ。
階段を急いで駆け下り、ビスの姿を確認。
「あ、エオなのだ! 元気にな……!」「今、いつなの!!」
ビスの言葉を遮ってビスに問いただした。
「……えーと、確か、ここに来てからだと、五日? そう五日目なのだ!」
五日、ということは三日も寝ていたの。
「……やばい! 何も対策してないのに…………」
「大丈夫なのだ、シル・マッカザージルは女神様が倒してくれたのだ!」
「違う、あれはシルじゃないんだよ……」
「えっ……?」
「シルはまだ生きてる。あれは偽物だ、ただの魔具だったんだよ……」
その言葉に、食器を洗っていたキリカの手が止まった。
「エオさん、少し話したいことが……」
「はい?」
「二人から話は聞きました、何故ここに来たかも、ピースさんのことも……」
怒られる、と思った。理由はともあれ、二人の可愛い娘を嫁に貰ったと噓をつき、湖まで連れていった上に、危ないことに巻き込んだのだ。ぶん殴れても仕方ない。
「……私は、そのシル、という男はあまり知りません、しかし、二人の話を聞いてると何処か、普段と違う、とても強い意志が感じれらました、二人は貴方の願いを叶えたいと、心の底から思っています」
キリカそう話をしながら、エオに近づいた。
「……だから、今回のことはアメスには黙っていてあげます、その代わり、二人のこと、もっと真剣に考えてあげてください、母親として言えることはそれだけです」
キリカの目には涙があった。娘を裏切ったエオに対する怒りなのかもしれない。ただ、キリカは母親だ。何があっても娘を大切に思っている。
その事実を踏みにじった行動をしてしまったのは間違いなくエオなのだ。
「……すみませんでした、もう少し落ち着いたら、しっかりと考えます」
今はこれだけしか言えない。こうするしか言えないのだ。
「船は今から五時間後、出ます、それまでに準備して、ここからこっそり抜け出してください、勿論、メウとビスを連れて!」
「はい、協力ありがとうございます」
「当たり前です、二人の初恋の相手ですから……!」
キリカの笑顔はとても輝いていた。
それから五時間後予定通り、船に乗りソラーノ島へと帰還した。その船の中あることを思い出した。
「……魔法が使える、のか?」
水龍は確かに魔法が使えるようになったといった。
しかし、使い方も何もかも分からない。
後二日後にはシル・マッカザージルがソラーノ島に来てしまう。それまでにどうにか、奴を倒す手段を考えなければいけない。
ピース待っていてくれ。絶対助け出す!




