メウとビスとトリノ湖と。part7
「……うそでしょ? お前は僕が殺したはず、なんで生きてんのさ!」
シルの目に金色に輝く、水龍が反射している。
「貴様程度の奴に神を殺せるとでも? せいぜい、この湖を枯渇させる程度の力しかお前は持ち合わせてない」
「……くそが、UG-05いけ、あんなやつ吹っ飛ばせ!」
ウサギ型のそれはエオを殺したように口から、青白い光線を神様に向けて放出する。
「ふふ、効かん、そんなおもちゃ、粉々にしてやる!」
水龍は金色に輝いた湖の水を操り、鋭い刃を作り出す。そしてウサギの光線を真っ二つに切断し、そのままシルに目掛けて貫く。
「くっ!」
シルは靴に仕込んでおいた魔法陣「飛行」で間一髪避けた。しかし、UG-05は粉々になり、ただの鉄くずになってしまった。
「まぁ、流石神様ってとこかな?」
「減らず口を叩くガキだ、私はお喋りとか嫌いでね? 少なくともお前のような玩具には興味ないんだ」
「僕が玩具……?」
「私が気付かないとでも思ったか? お前からは生きた人間の匂いがしない、ただのガラクタだ」
「僕は、僕は……」
「どうせ、シル・マッカザージルが作り出した魔具とやらの一部、その程度のお前に私は倒されんわ」
「僕は本物のシル・マッカザージルだ!!」
シルの怒号と共に、身体が変形していく。脚、腕、頭がまるで人体模型のようにばらばらになっていく。その姿は人間ではないことを証明するかのように、ブロック状に組み替えられ、やがて、ルービックキューブのように三×三のマス目がある立方体へと変化した。
「ほう、やはりか、お前はただの道具だったか」
「うル再 SIね」
その奇妙な声と共にキューブの表面上に爆弾のイラストが表示される。
その刹那、目の前の水龍は大爆発を起こし、湖に叩きつけられる。
「……雑魚、シマツ」
「はは、この程度で始末したつもりか?」
湖に佇むその姿はまるで何事もなかったような、爆発など聞いていないようなそんな姿だった。
「……殺」
「終わりだ」
水龍は大きな尻尾をシルに振りかざす。
シルも咄嗟にガードしようとするが、時すでに遅し。立方体は粉々に砕け見るも無残な形になり、その姿文字通りガラクタ。
「さてと……」
水龍は小さくなり、元の神秘的な神様はと戻る。
「エオはどこへ行ったんだ?」
神様は辺りを見渡すがエオを捉えることはない。
「あいつ、一言もいわず逃げたか? へなちょこが、仕方ない、湖に戻るとするか……」
そういって、神様が湖はと帰ろうとしたとき。
「神様! 待って!!」
その声に振り替える。
「ほう、メウとビスを探しにいっとたか?」
ドロドロになりながら、二人の少女を抱えたエオが居た。
メウを背中にからい、ビスをお姫様抱っこしたその振る舞いに、神様は少しだけ笑った。
「なに、笑ってるんですか? あ、それはそうと……」
「ん?」
エオはメウとビスを下ろし、右手でメウの頭、左手でビスの頭をつかみ、お辞儀した。
「ありがとうございました!」
「それは私のセリフだ、この湖を元通りにしてくれたからな、それにトリノコ島ではこの新郎新婦の願い事を叶える決まりだ、今回はエオを生き返らせること、そして、あのガキをぶっ倒すこと、二つ叶えたぞ? これでチャラにしようじゃないか?」
「神様がそれでいいなら……」
「あぁ、勿論だ、それと一つだけ警告しておこう、シル・マッカザージルはまだ生きているぞ?」
「え、でも……」
「私が倒したいのは偽物じゃ、魔力で作られたな」
「それじゃ、他にもいるってこと……?」
「あぁ、間違いなくな」
絶望的な状況だ。あと、五日間で何ができるだろうか。
「大丈夫だ、お前のその力がシル・マッカザージルにも対抗出来よう」
「でも、魔法とか、僕には使えない……」
「あぁ、だがすぐに使えるようになるさ、私にはわかる」
神様はエオの頭をなでる。
「これはほんのお礼だ、受け取っておけ」
エオの頭の中に魔法に関する知識が流れ込んでくる。
「……うぅ、頭が痛い」
「はは、まぁ、二日間ぐらい動けんくなるかも知れんが、きっとお前ならやれるさ、ファイト~」
そういって神様は湖の中に姿を消した。
「あーあーあー、目が回る~」
エオはその場で倒れた。
「エオ、しっかりするの!」
「するのだ!!」
こうして、この島に来て二日目はこうして終わった。
この後、長い眠りから覚めたエオは――。




