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メウとビスとトリノ湖と。part6

「……ウサギ?」

 それはウサギそのもの。もふもふして可愛い見た目、くりくりした赤い瞳でこちら覗いている。

「それは魔具の中でも圧倒的な力を誇るUG-05だよ、そいつを倒さないと到底僕には勝てないからさ、そいつ倒したら、起こして?」

 シルはあくびをしながら、木の下で眠り始めた。緊張感のない余裕な態度にエオは少しイラついたが、これはチャンスだ。

 シルは今眠りについた、どんな人間でも寝ている間は無防備だ。ならば、こんなウサギさっさと片付けて、寝込みを襲いたい。そんなせこいやり方、エオはしたくないが、そうでもしないとまともに正面から戦って勝てる相手ではない。

「……よし、先手必勝!」

 動物の殺め方など全くしらないが、こいつは魔具だ、つまり、道具だ。それならば、殴れば壊れるだろうし、方法ならいくつかある。

 エオはウサギを捕まえるため、飛び掛かった。

「……いてっ!」

 しかし、エオの手は空を裂いて、勢いのまま、転んでしまった。もちろん、手の中には何もない。

「どこ行った?」

 エオは周りをきょろきょろ見てみるがその姿は確認できない。

 ガサガサ。

 草を分ける音が後方から聞こえる。エオもその音に気が付き、後ろを振り返る。

 しかし、遅かった。

 もふもふから想像できないほどの機械的な何かを口に咥え、その先端から発射した青白い光線をエオの心臓目掛けて放った。

「――ッ!!」

 エオの胸部には大きな風穴が開き、倒れた衝撃で血液が樹木に飛び散った。

 それはあまりにも呆気ない、彼の最後だった。


「うわぁー、あれ? もう死んじゃった? まぁ、命なんて何回でも作り直せるし、別にいいけどさ?」

 シルは眠たい目を擦りながら、ニヤリと笑い、こういった。

「シルは、喜んでくれるかな?」


「おーい、起きろ」

「……」

「……愛雨エオ、起きろって!」

「……」

「てめぇ、いい加減起きろや!!」

「……ぐはぁっ! え、何事?」

 エオは腹部を蹴られた衝撃で起き上がった。

「おい、何死んでんの?」

「え、誰ですか?」

「神様ですけど、何か?」

 神秘的な女性だった。白いベールに包まれ、金色の髪飾りが真白な髪色とは対象的でとても引き立っている。身長はエオを変わりないが、スレンダー身体付きのせいか、実際より高く見える。

 そんな容姿より、エオにとって気になることがある。

「神様がなんでここに? てか、ここはどこ?」

「っち、だりーな、そんぐらい、自分で理解しろよ、お前はシルによって殺されたんだよ、それで、死んだお前を私が助けたわけ? お分かり?」

 あまりにも暴君な口調の神様は胸を張って、エオの前に立ちはだかる。

「……それでここは?」

「はぁ?! 察しろ、ここは神界だってのー? よくあるじゃん? 冒険的なストーリーでは死んだら情けないだの、言われ生き返るやつ、それだ、それそれ」

 いや、そんなことを言われましても。

 エオは混乱している。今覚えているのは胸部当たりの痛みとメウとビス……。

「あ! メウとビスはどうなったんですか!」

「あー、あいつらなら無事逃げてるさ、他人の心配より、自分の心配をしな、お前は今から選択しなくちゃならないんだから」

「選択……?」

「あー、そうさ、選択肢は三つだ、一つ目はお前が私を助ける、二つ目はお前が私を助けた後、余裕があれば私がお前も助ける、三つ目はこのまま二人とも死んでいくか、どれにする?」

「ちょっと、待ってください、僕神様救えるような力はないですよ?」

「お前の淫力……、いや神義の極みであれば、助けられないものなどいない」

「神義の極み……?」

「あぁ、お前はこの世界の者とは違うエネルギーを持っている、その力は、神に勝る、それを分けてくれたら、お前を助けやらんこともない」

「……」

 エオは混乱した脳みそで結論を出す。

「神様、僕の力ならいくらでも貸します、なので、シルを倒せる力をください!」

「その願い、叶えてやろう!!」

 空間が光に満ちて、視界が開ける。目の前にはシルの掌とっさに目を瞑る。

「なんの音だ?」

 その手は止まった。理由は湖から聞こえた爆音。

 エオは今一度瞳をこじ開ける。

「……どうなっているんだ!」

 シルは湖へ向かって走って行くのが見える。そして。

「これが神様の力…………」

 エオはその時、確かに見た。

 金色に輝く、水龍の姿を。


次回、少しだけ前の話に戻ります。

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