メウとビスとトリノ湖と。part4
「さぁさぁ、早くいくの」
「エオ、準備するのだ!」
髪色に合わせた綺麗なドレスに身を包んだ二人がエオを急かす。
エオは真白なタキシードに着替え、トリノ湖に向かっている。
ピースを救い出すまで後、五日間。日に日に時間が無くなっていく。しかし、ここで取り乱しても仕方ない。今は自分のするべきことしなくてはならない。
昨晩、トリノ湖は婚約した男女しか訪れることができない奇跡を泉だと知り、メウとビスに問いただしたところ。
「……噓なの、私たち行ったことないの、エオと行くのが夢だったの」
「……噓ついてごめんなのだ」
と、泣きながら謝られた。その気持ちは本当にうれしい。しかし、今はこんなことをしている場合じゃない。一刻も早く、ピースを助け出さないといけない。そのためにはトリノコ島の神様に出会う必要がある。
「ねぁ、メウ。その神様は本当にどんな願いでも叶えてくれるのか?」
「そうなの、この島に伝わる伝統なの、何でもその神様は凄く物知りで、婚約した者には幸せと願いを叶えてくれるらしいの」
トリノコ島には古くからの言伝や伝統が残っており、このイベントもその一つだという。
「え、でも、俺たち婚約してないよね……?」
「ん? 何を言ってるのだ?」
「え?」
ビスが左腕に抱きついてきた。
「私たちは婚約者なのだ! 結婚するのだ!」
「え、ま、まってよ、前にも話たけど、僕には心に決めた人が……」
「エオ、耳貸すの」
メウはエオの袖を引っ張り、エオはしゃがんだ。
「……エオの気持ちは私たちも把握してるの。でも、神様に会うには婚約者した男の子と女の子しか会えないの、だから、今だけでも私たちの旦那さんになってほしいの、そうしないと神様に願い事聞いてもらえないの」
エオは自分の考えを悔い改めた。この二人を子供だからと甘く考えたいたのはエオのほうだった。ちゃんと現状を理解し、ピースを助けたいというエオの我儘を受け入れてくれていた。
「……二人とも、ありが」
パシャ。
「……えー、っと、写真撮ってるの?」
「はいなの、これを送信して……」
「え、誰に送信してるの?」
「まずは、ホルセさんからなのだ」
「え、まってやめてよ!」
こんな写真見られたら、こんな事態に結婚式している大馬鹿ものじゃないか。
エオは二人のステータスを強制的にシャットダウンして、何とか被害を最小限に抑えることができた。
「っち、これで全員にエオのお嫁さんはメウとビスだと思い知らされることができたのに、残念なの」
「残念なのだ」
いつか、キャロルが言っていた、二人は油断できないとはこのことだろうか。エオは今更、二人の恐ろしさを知った。
「それで、場所はわかるの?」
「ママに聞いたのだ、場所はこの先を真っ直ぐ進んで、二つに分かれた道の右を曲がるの」
「へぇ、場所自体は秘密って訳でもないのか」
てっきり、複雑な道になっていたり、何かトラップがあるようなそんなイメージだったのだが、これなら簡単に到着しそうだ。
「……エオ―、ビスは疲れたのだ」
「そうか? おんぶしてあげようか?」
「ほんとなのだ? お願いするのだ!」
エオの背中にひょいと乗っかかり、エオは立ち上がる。やはり身体はまだまだ子供で、軽い。
「メウは大丈夫か?」
「私は平気なの、だってお姉さんだから……」
メウは無理しているのだろう。
「後で、おんぶしてあげるから、な?」
「……うん、ありがとうなの」
こんな会話していると何とも可愛いらしい少女なのだが。
そんなことをしているうちに、あっという間に目的地に到着してしまった。
「……ここが?」
エオたちが目的地には確かに大きな湖があった。
しかし、その湖に枯れていて、水の気配がしない。
「これは一体……?」
「やっほー、遅かったねー」
その声をエオは聞いたことがある。いや、忘れることができないといった方が正しいだろう。
「覚えてる? どうもー、シル・マッカザージルです~、気軽にシルって呼んでね?」
「……なんで、ここに…………?」
ピースを痛めつけたあいつがなんでここに。そんな思いがこみ上げてきて、エオの声は震えた。
「なんでって、そんなの簡単じゃん? ここの神様、願い事なんでも叶えたちゃんでしょ?そんなの反則、ぶーっぶ。なので――」
シルの口から出たその言葉はエオを絶望へと落とした。




