メウとビスとトリノ湖と。part3
「さぁ、沢山食べてくれ、メウもビスも、よくやった! きょうは祭りだ!」
祭りが始まってしまった。
そんな場合じゃないのだが、そんなこと言える訳もなく、美人なお姉さん改め、アメスの妻、キリカはキッチンから次々と手の込んだ料理を持ってくる。
「いやー、それでエオくん! 馴初めで話そうではないか!」
完全に酔っ払っているアメスはエオにダル絡みを仕掛ける。
「……えーと」
エオは視線をメウに向けヘルプを要請するが、反らされてしまった。ビスも然り。
「……まぁ、その、何と言いますか、出会いはどこでもあるような、ないような?」
なんとまぁ、内容の薄い返しだこと。
「そうかそうか、いい話だな……」
アメスは泣き出し、そのまま眠ってしまった。
「ごめんなさいね、アメスはお酒弱いのよ」
キリカは酔い潰れアメスにタオルケットを掛けた。
「普段は飲まないんですけどね、今日は本当に嬉しかったんでしょうね」
キリカは絵になる微笑をエオに送った。
「エオ、一刻も早く湖について聞き出さないと、時間は有限なの」
「そうなのだ」
メウとビスはエオを急かすが、その情報を知っているであろう、二人の父親は横ですやすや寝ている今、誰に尋ねればいいのだろうか。
「お母さんが何か知っているかもなの」
「今すぐママに聞いてくるのだ」
「わ、わかった」
キッチンで片付けをしているキリカにエオは例の湖について質問を投げかける。
「あ、あの、神様がいると言われる湖のこと、何か知っていますか?」
「あー、トリノ湖のことね、それを誰から?」
「いや、知り合いが噂していまして、折角なら一目見たいなと」
「あら、そうなのね、じゃ、丁度良かった」
「え、と、何がですか?」
「今の三人なら、きっと辿り着けるわ!」
そういうと、食器を棚に直し、二階へと駆け上がった。
数分後、キリカは真白な何かを手にもって降りてきた。
「うーん、サイズはこのぐらいかな?」
「あの、何をしてるんですか?」
「何って? トリノ湖に行きたいんでしょう?」
「そうです! 一刻も早く、神様に会いたいです」
「それなら、私頑張って作っちゃうわ、任せて、こう見えてもお洋服縫うのは得意なの」
イマイチ話が嚙み合わない。
「キリカさん、今何をしているんですか?」
「正装を作っているんです、大丈夫、明日には出来上がっていますから!」
「それとトリノ湖と何の関係が?」
「何を言ってるんですか、トリノ湖といえば、愛し合う男女でしか行けないと言われる、奇跡の湖ですよ、まさか、メウとビスを連れて行きたいなんて、勇敢な人、しっかり守って下さいね?」
ここでやっと繋がった。
メウとビスが掟を破ってまで、ここに来た本当の目的を。
「……メウ、ビス、もしかして知っていたのか? トリノ湖がそういう場所だということを?」
キッチンから見えるメウが少しだけニヤリと笑った――。




