ペピーとキャロルと洞窟
少女はいつも一人だった。
洞窟で暮らし、少量の木の実と水だけで生きている。
その時、洞窟の最深部で気配を感じた。
「やったー、成功だ!」
男性の声だ。幼い声質で何とも聞いてて、心地良い。
「それじゃ、ペピー、任せたよ?」
「了解しました」
少女は少し駆け足で最深部に向かう。
洞窟内は暗く、滑り易いが少女は一刻も早く、辿り着きたい。
「人間と……喋りたい……」
そう願っていた夢が叶うかも知れない。
「なにこれ……?」
息切れした少女の目に移ったものは、手人形だった。ボロボロで薄汚れたそれはぴくっ身体が跳ね、のそのそ少女に近付いてくる。
本来のリアクションとしては気味が悪いはずだ。布切れが独りでに動いる。怪奇現象か、それとも誰かの魔法の力か、どちらにせよ、異様な光景である。
しかし、少女は違った。
ずっと一人で動く物体そのものを見る機会もなかった。物心ついたときにはこの洞窟にいて、一人で暮らしてた。
小さいときどうやって生き延びのか、親は誰なのか、そんなことも一切分からない。もちろん、自分が何者なのかとか、考えたこともある。
でも、答えはでないのだ。
そんな異常な少女の生活に置いて、その手人形は宝石のように思えるほど、魅力的だった。
だからこそ、少女はそれを拾い上げ、手にはめた。
「ありがとう!」
「あ、どうも……?」
急な挨拶にも動揺しない少女。
「ビックリしないんだね……?」
「う、うん、まぁ…………」
何とも弾まない会話でお互い、心が痛む。それに沈黙が追い打ちをかけ、数十秒見つめ合う。
「え、っと、あ、僕はペピー、君は?」
「パンヌ、だったと思う……」
「あ、そうか、パンヌちゃんか! まぁ、良ければお願いがあるんだけど……?」
「なに……?」
「僕は見ての通り手人形なんだ、だから、誰かの手で操作してもらわないと生きていけないの」
「そ、うなんだ、不便……?」
「まぁ、だからさ、迷惑じゃない限り、君の手をお借りしていいかな?」
パンヌは考えた。
片手が塞ぐことは、意外とデメリットが多いし、そもそも、何かの罠かも知れない。さっき聞こえた声とも全く違う。
でも、そんなデメリットより、大きなメリットがある。
「じゃ、ぺピーのお願い、良いよ、その代わりに、ね……」
「うん、何だい?」
「喋り相手になって……?」
ペピーはにこっと笑ってこう言った。
「勿論! 僕はその為に生まれたんだ!」
パンヌの頭には走馬灯のように記憶が蘇っている。
「……どうして、ペピー、離れたら駄目なんでしょ?」
「うるせーな、まだわかんねーのか、パンヌ? 俺はシル・マッカザージル様の手でこの世に生を受けたんだよ!」
船内が空気がぴりつく。戦闘態勢に切り替わる者までいる。
しかし、それをパンヌは止める。
もう少し時間をくれと言わんばかり、みんなを見つめる。
キャロルもこの状況に息を呑むことしか出来ない。
「あの時、洞窟で出会ったあの時、私は本当に嬉しかった、ペピーは一人で孤独な私に色々教えてくれた、ずっと一緒だった」
「…………」
「ペピーは作り物だと言うけれど、私にとって大切な友達、いや、家族、もっともっと、それ以上の存在だったの」
「……それで、お前は何が言いたいんだ?」
「この護衛部隊に入るときも、ペピーが居たから合格できたの、私の人生は大きく変わった」
「やめろ、僕は最低な裏切り者だ……!」
その言葉を聞き終わる前にパンヌは走っていた。あの時のように。
衝動的にペピーの元を走った。
「……なぁ!」
ペピーも急な動きに身動き一つ取れない。
パンヌがペピーを掴み上げ、こう言った。
「ペピーが生まれたのは私と喋るためだもん! だから、離れるなんて許さない……!!」
パンヌの涙がペピーに何粒も落ちてくる。
ペピーは暴れるが、その手から離れることが出来ない。
「くそ、離せよ、パンヌ! 僕はもう、お前なんか……!」
キャロルはその光景の刹那で、見えたものがあった。
パンヌがの涙ではない、もう一つの涙を。
「もしかして、ペピー、あなたは――。」
お久しぶりの投稿となります!
就活とかであまりにも忙しく、執筆活動を続ける体力が残っていませんでした(泣)
ひと段落したので、これから再開致します!
ツイッターとかでも絡んでもらえると幸いです!
次回
「キャロルとクライドとレオルとメジザ島part10」
でお会いしましょう!!




