カプセルと涙
ここはエドワード商店街のマサルトクリニック。
「あのー、ホルセさん??」
「なんだ?」
「その鞭は、何に使うんですか?」
「…………」
「ちょちょ、無言でこっちに来ないで、怖いよ!」
「大丈夫、ナース服と鞭を嫌がる男はいない」
「現に今、僕が嫌がってるでしょ?」
こんなことになったのは数分前に遡ればわかる―。
「協力で一体、何を手伝えばいいんですか?」
「淫力を使って性欲を湧く薬を作るんだ、エオには淫力をこのカプセルに少しだけ移させてくれ」
ホルセはエオに小さなカプセルを渡した。
「これって、飲みにくい粉とかを入れて、飲みやすくするための??」
「あぁ、流石に直接、淫力を吸収するのは生理的に厳しい人もいるからな。それにそのカプセルは私の研究で淫力を薬に変える性能がある」
「そんな、奇遇な……」
「淫力は性欲に関する製品には欠かせないものだ。逆を言えば淫力さえあれば大抵のものは作れる」
思い出した。
「淫力なら、キャロルも持っているでしょ?」
「あー、勿論試した、が、あいつの淫力はあまりにも汚れていて、私ですら吸収することが出来なかった。エオの淫力は質量こそ膨大だが、性質は至って純粋だ」
「そ、そうなんだよ、分かってくれるのか?」
出会えた。やっとまともな人間に。
「つまりはむっつりスケベってことだな?」
前言撤回。やっぱり、ダメでした★
「よし、それでは、カプセルに集中してくれ、道具類を使う時と同じ感覚でいいぞ?」
「お、おう」
右手に集中し、カプセルに流し込む。
「成功だ!」
「ほんとか?」
「あぁ、ありがとう! 実は初めてなんだ! 研究結果がこんなに具体的な形として現れるのは!」
ホルセは少しばかり興奮している。
「おう、よかったね」
エオも少しだけ嬉しかった。
「こんな幸せな気持ちになったのはいつぶりだろうか……」
ホルセは泣き出してしまった。それほどまでに嬉しいのだ。よくわからないけど。
「おいおい、泣くほど嬉しいのか……?」
涙が一滴落ちた。その時。
「これって……」
光がクリニック中を包んだ。
エオは目を開けると手の中に何か温かさを感じた。
「これは? 鍵!」
「エオ、これって……」
ホルスが鍵を見つめる。
「これは私が幸せを感じたからなのか?」
「あぁー、もしかしたらそうかも知れない。早速、村長に会いに行こうよ」
「まて、その前にこの薬を試されなければ……」
「え、まぁ、そうですね、どの位効果があるかわかりませんし」
ホルセは水も飲まずそのまま、喉に流し込む。
「どう、ですか??」
無言だ。
「あのー……」
ホルセは無言のまま早歩きで何処かに行ってしまった。
数秒後―。
「あのー、ホルセさん??」
「なんだ?」
「その鞭は、何に使うんですか?」
「…………」
「ちょちょ、無言でこっちに来ないで、怖いよ!」
「大丈夫、ナース服と鞭を嫌がる男はいない」
「現に今、僕が嫌がってるでしょ?」
ここに、至る。
「大丈夫だよ~、私に身を委ねなさい?」
「ちょっと、ホルセさんキャラ変わってませんか?!」
「いいから、こっちにおいで??」
「やめてくれーーーー!!」
エオの叫び声は深夜のエドワード商店街にむなしく響いた。