犠牲と声
「それじゃ、ここからが本題! 愛雨エオくん、僕の研究を手伝ってくれないか??」
シルは適当にでも、至って真剣にそう言った。
それは地獄より恐ろしく、悪魔より残酷に、眼力で訴えてくる。
「直ぐに答えはでないと思うよ、僕だって、魔法使いだからね、ヒトとしての理性や情はあるさ、だから、一週間後に僕のお家に招待する時までに決めておいて!」
立体映像にノイズが走り、地面に落ちると焼けて無くなった。そして、焦げた床には住所と「ぼくのいえ」と落書きのような文字で書かれていた。
呆然と立ち竦む三人。
ピースとの約束を果たすため、ソラーノ島を幸せいっぱいにしたり、島全体の願いを叶えたり、鍵を集めるたりと、試行錯誤している最中の出来事。
誰も、真面に受け入れられない。
「キャロル……」
エオは重たい口を開いた。
「な……に…………?」
緊張で口が乾いてしまい、上手く喋れないキャロルは、必死の思いで、言葉を吐き捨てた。
「あいつのこと絶対許せない…………!」
「それは私も同意見だ」
こんな時でも動揺を表に出さないホルセ。
内心では焦っていても、現状を変えるため、自分が強がってでも、冷静に対応するホルセの思いはエオにもキャロルにもひしひしと伝わっている。
「取り敢えず、今日のところは、解散しようか、キャロルすまないな、あまり手伝って上げれなくて」
「いや、そんな、ありがとう、本当に助かった」
ホルセの案に二人は了承し、エオは我が家に帰った。
キャロルが送ろうか聞いたが、放心状態のエオは全く聞く耳を持たず、一人で帰っていった。
「エオは大丈夫かな?」
「私たち以上に、エオはショックを受けているだろうからな、パニックを起こさないだけでも、エオは強い人間だ」
二人は小さく弱々しい背中を、見えなくなるで見守っていた。
「くそ、何でなんだ……」
家に帰るや否や、エオは自分を責めた。
「自分が研究に協力すれば三人は助かる……?」
自分の犠牲で三人が助かるなら。
でも、それは約束であって、契約ではない。
確定した未来ではないのだ。
「シル・マッカザージル、あいつの言うことなんて信じちゃだめだ…t…!」
エオはソファに腰を掛けると、いつの間にか寝てしまった――。
そこは暗くて、冷たい場所。
エオは全力で走った。
もっともっとはやくはやく。
「あれは?」
一筋の光。
エオは光に手を伸ばす。
「もう少しなんだ、もう少しで、あそこに手が届くだ」
エオは必死に手を伸ばす。
ほんの少し。
少しだけ、光に触れた。
その時聞こえた少女の声。
微かに聞こえた、あの人の声。
「エオなら――。




