手紙とマジック・シェア
「じゃ、あの神殿も、血を吸ったのもフェイクだったの?!」
キャロルの手伝いでホルセと一緒にグレンゴランド島の二号店開店の準備をしていた。
昨日のこともあり、エオはキャロルをほっとく訳には行かなくなっていた。そのため少しでも、ストレス溜めないように、相談に乗れるように、時間があり次第、手伝いに来るようにしているのだ。
「えぇ、昨晩見せたでしょ? あの岩の奥には別に神殿なんてないし、血を吸われた後はないでしょう? 夢を操る装置で試作品で試しにどうぞって言われたから、昨日も言ったけど、二号店の目玉商品として売るつもりだから」
「じゃ、変装まで変える必要なくない?」
「夢っていうのは人によって見れる時間がバラバラなのよ、だから念のため、目を覚ましても、現実と見分けをつかなくするためのものってこと、らしいけど」
「え? それだと、あの夢は全部キャロルが操作していたの?」
「そうだよ、ヴァンパイアロリだったら欲情しちゃうロリコン変態エオくん」
「やめてくださいごめんなさい」
エオは刃物を向けてくるキャロルに必死に土下座した。
エオは何となく引っかかり感じるが、それが何なのか分からない。
「あ、エオ! そう思えば【魔愚】のこと知らなかったよね?」
「あー、あの、魔力では動く農具たちとは違うの?」
「そうね、この道具は使い捨てだけど、どんな人でも確実に使える道具のことなの」
魔法の道具、といったところか。こういう話をすると、やっぱり日本に住んでいた時とは違う世界に……。
「日本!!?」
「ちょっと、エオいきなりどうしたの??」
キャロルは目をまんまるにしてエオを凝視した。
「キャロルって、日本知らないよな?」
「え、うん、知らないわよ」
「昨日の夢の中って全部、キャロルが操作していたんだよね?」
「そうよ? そんな焦ってどうしたの?」
可笑しい。日本には戻れないから、あれは間違いなく夢だ。
キャロルが日本の夢を見せることでピースに対する覚悟をもう一度確かめるためと思ったが、そもそも、そんな面倒なことはしなくていいし、もっと言うなら、あんなにはっきりと日本の風景を見せれるは、妖精だけのはず。
もしかしたら、この世界に日本を知っている者が他にもいるのか。
「おーい!」
ホルセが一枚の紙をペラペラさせながら、エオとキャロルのほうに向かう。
「どうしたんですか?」
「いや、何故か、この店のポストに、エオ宛の手紙が入っていたんだ」
ホルセはエオに手紙を渡すと、その場でじっと見ている。
「ど、どうしたんです?」
「いやー、すまない、差出人だけ念のため見たのだがな? 【マジック・シェア魔愚制作部】とまで関わりを持っていたとは、流石に恐ろしくなってきたぞ、エオ」
「まじっく・しぇあ……?」
「え?! ちょっと見せなさい!!」
エオの手からキャロルが手紙を無理やり奪うと裏の差出人をチェックした。
「間違いないわ、これは――」
マジック・シェア魔愚制作部とは何なだろうか。
この時のエオはこの手紙がとんでもない物語の始まりだとは、知る由もなかった――。




