モーと大作戦part1
「お? わしの声が聞こえるんかいな?!」
「もしかして、モーちゃん!?」
「だから、ちゃんはやめいや」
エオは牛と会話している。理由は分からない。
牛舎の中にはセシア以外の人間はいないが、セシアは遠くの柱に隠れているし、現在話せる可能性があるのは、牛だけだ。
その結論に至る時点で、あまり冷静な判断が出来ているとは言えないが、エオは直感で受け入れることが出来た。
「じゃ、なんて呼べばいい??」
「そんなの、モーって呼び捨てでええがな! 嬉しいわ! 人間と会話出来るようになって!」
モーは興奮気味に鼻息を荒くした。
「じゃ、モーよろしく! あ、僕の名前はエオっていいます、以後お見知りおきを」
エオは中堅ラスボスのような挨拶をした。
「おうよ! ほんで? なんで、エオはここに来たんや?」
モーはそれを軽く流し、エオがここにいる理由を尋ねた。
「えーと、アキラくんの頼みで、ここに来たんだよ。それこそ、モーが全く懐かないし、ミルクも出さなから、モーと仲良くなって欲しいって……」
エオは偽りのない真実を伝えた。
「そうかー。アキラにはほんま迷惑掛けとるんよなー……」
モーは少し落ち込んでいる。
「別に懐いてないわけじゃないんよ? ただ、何故かおっぱいがでらんくて、それに負い目を感じてそっけなくなってしまうんよ・・」
エオはモーと話す前、モーはもっと頑固で捻くれた性格をしていると思っていた。
だけど、違った。
「僕は勘違いしてたよ。モーは優しいんだね」
「そ、そんなことは・・」
モーは照れ隠しに、牧草を食べ始めた。
「モーと喋っていると、人柄の良さが出てるから」
「まぁ、わしは人じゃないけど、そう言ってもらえるなら嬉しいわ!」
「それで、一つ提案なんだけど?」
「なんや?」
エオはモーに耳打ちをした。
「おぉー、それは良い作戦やんか!」
「でしょ?」
「じゃ、アキラが戻って来たら早速、実行や!」
「……エオ、独り言言ってる……」
セシアはエオがモーの前でぶつぶつ楽しそうに何かを言っている光景に違和感に似た、恐怖を感じた。
「セシア、まだ、隠れていたのか?」
「あ、アキラ・・」
セシアが振り返るとアキラがブラシを片手に、立っていた。
「さっきはあんなこといったけど、エオはそんな奴じゃないぜ。あいつのことは信頼しているし、メウとビスが言ってたことも、多分、全部が本当じゃないだろう」
アキラはセシアの背中をぽんっと叩いた。
「違うの、アキラ……。ほら、見て?」
「ん?」
アキラはエオのほうを見た。
すると、エオがモーの頭を撫でいるではないか。
「まじかよ! おーい!」
「ま、まってよアキラ……」
アキラはエオとモーの元に駆け寄った。
その後ろから、セシアがゆっくり追いかける。
そして、エオとモーの大作戦が始まる――。




