慣れと妄想
「もしかして、エオ? 私だけじゃなくて、ホルセとも付き合おうとしてる??」
「いや、ホルセだけじゃないよ? メウもビスも、勿論ピースも全員お嫁さんにする」
馬鹿げてるように聞こえるかもしれない。でも、エオはこれ以外、キャロルとホルセの告白を了承する手段が思いつかなかった。
「でもよかったよ、一夫多妻制が許されて!」
エオはこの作戦を実行する前に大きな壁が一つあった。それが、複数人との結婚が可能なのかという点だ。
しかし、キャロルが認めたということは、この島では結婚する相手が複数人でも良いのだろう。
「エオ…………??」
キャロルから黒いオーラが滲み出ている。
「キャロル?? なんで、怒っているの?」
キャロルはエオに一瞬で間合いを詰め、手を振り上げる。
「一夫多妻制なんて駄目に決まってるじゃんか!! ばーかぁぁぁああ!!」
バチコンッ
エオの顔面にビンタ。エオは、この程度、経験し過ぎて、慣れてしまった。
しかし、物理的な痛みより、心が痛んだ。
キャロルの頬を伝う涙。一滴、又一滴と地面に零れるその姿に。
「エオの言っていることは何にも解決になってないよ……」
「え……?」
「ホルセも私も、中途半端な気持ちじゃなくて、本気であんたを好きになったの。それを一夫多妻制とか、みんなを幸せにするとか、そんな言葉で濁さないで!」
確かにそうだ。異世界転移・転生したら、漫画や小説みたいに、魔法も道具もあって、女の子も可愛くて、法とかルールが違くて、いっぱいの女性に囲まれ、うはうは生活。
そんな妄想をしなかったかと聞かれれば、速攻で、していた、と答えらる。
ここは、空想や想像の世界ではない。この世界で生きていくなら、この世界がエオの生きていく世界なのだ。
「エオはね、いつだって、優しくて真っすぐで、不可能なことも、チャレンジして結果も残して。私はそんなエオが好き。今の発言だって、きっと、私たちがどれだけ幸せになれるか考えた結論だってわかる」
「キャロル……」
キャロルはエオを優しいというが、エオにとってはキャロルのたまに見せる、人としての本質的な部分のほうがよっぽど綺麗だと思っている。
「でも、エオはエオのことを考えて! エオが本当に好きな人は誰?」
キャロルの重い言葉。一時も忘れたことない、好きだと言えなかったたった一人の妖精。
「僕は……!」
ホルセに告白されたときに、出ていた結論だ。
エオは少しだけ、回り道をしてしまった――。
エオ家にて。
エオは箱を見つめている。
メウとビスから貰った、箱だ。
きっと、依然と同様に、音声データが入っていると思われる。
もしかしたら何かのヒントになるかも知れない。
「それにしても、開け方がわからん……」
経験上、何かを思えばいいんだろうとなんとなくぼんやり考えていた。
「まぁ、またにしよう」
今日はそれより考えることが沢山ある。
振り返っても濃厚な一日だった。
「…………」
エオはいつの間にか眠りについていた。
今日、キャロルに言われた言葉、そして涙をエオは絶対に忘れないと誓いながら――。




