無頓着と真偽
「まぁ、話すと長くなるんだが、いいか?」
「僕は良いですよ? キャロルは?」
「いいわよ? 明後日ぐらいからは忙しくなるけど、今日は付き合うわ」
エオとキャロルは銭湯ロマンスの共有スペースでホルセからリリカの昔話を聞くことにした。
「まずは、グレイと私、そしてリリカはこの島で同世代で昔から良く三人で遊んでいたんだ」
グレイは研究者で色んな街を転々としている。最近、この島に帰ってきて、ホルセの隠された趣味―コスプレの良き理解者であり、同士だ。
ヲタフェスでは、エオも一緒に参加し、三人で楽しんだ。
「それで私とグレイは共通の趣味ができたんが……」
「共通の趣味?」
キャロルが首を傾げた。幸か不幸か、エオはグレイとホルセの趣味を知ってしまった。
しかし、キャロルも島の人も、このことは認知していない。
「いや、その、まぁ、私は医者で、グレイは研究者でな、お互い共通する分野が似ているんだよ」
「ふーん??」
焦り方が尋常ではないホルセにキャロルは何か、不自然さを感じているようだが、そこを追及することはしなかった。
キャロルの見た目は女子高生のようだが、実際は二三歳。こうした場面でふと大人の風格が垣間見れる。
「それでだな、リリカは私たちと少しづつ距離が開いていったんだ」
「別にグレイとホルセが共通の趣味を持っていても、三人の仲が悪くなる必要はないんじゃないか?」
「何も分かってないわね、エオは」
キャロルにはホルセの話を聞いただけで、ある程度理解しているみたいだ。
「女の子同士には色々あるの。リリカはきっと、子供ながらにグレイを取られたような感覚になったのよ」
「そうなもんなのか?」
一人っ子で彼女もいたことがないエオには到底理解できないことだ。
「流石、キャロル、更に言うなら、リリカはグレイのことが好きだった」
「やっぱりねー」
エオの頭には既にはてなマークだらけだが、ホルセは無視して話を続ける。
「年を重ねるごとに、夢を描くようになった。私は医師の免許を取る為に、必死に勉学に励み、グレイは研究者として自分を高めるため、旅をしている。まぁ、完ぺきとは言わないが夢を叶えたわけだ。でも、リリカは……」
ホルセは少し間を空け、小さなため息を付いて、躊躇いがちに口を開いた。
「リリカは、何もしなかった」
「何もしないって??」
「そのままの意味だよ、働くこともせず、勉学に励むことも夢を追いかけることもせず、引きこもって、だらだらと無駄に日々を消化している。私との仲が好ましくなくなったことが理由の全てではないが、リリカは本当に、生きることに対して無頓着だ」
エオはピースに言った言葉を思い出した。
ピースはこの島であまり順応することが出来ないことが原因だった。
しかし、リリカは違う。
本物だ。
「つまり、ニートってことか……?」
働く意欲もなく、生きることにも全く興味がない。それがリリカ。
「あぁ、それも筋金入りのな」
リリカが鍵を持っていないことの真偽に迫ることより、リリカを幸せにすることのほうが難しいと感じたエオだった。




