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銭湯と薄紅色

 仕立て屋ジャックライオ。エドワード商店街にあり、マサルトクリニックの真横に店を構えている。


「ホルセ、リリカってどんなやつなんだ?」

 仕立て屋の看板娘、リリカ。エオはこの島に来て約二週間は経つが、一度も会ったことはない。

「まぁ、私に似ているところもある……」

「そうなのか……?」

 濁した言い方をするホルセに違和感を覚えたが、ホルセと似ているなら真面目なのだろう。


「私はクリニックに戻って、お風呂でゆっくりしたい。パーティーですこしばかり、酔ってしまっているんだ」

「あぁ、だから、さっきから顔が真っ赤なんですね!」

「それは……。いや、なんでもない、エオはジャックライオにそのまま行くのだろう?」

「あー、お風呂入りたいですけど、家まで帰ると時間が……」

「じゃ、銭湯に行くか?」

「銭湯とかあるんですか??」


 エドワード商店街はどちらかというと、洋服な建物が多く、ヨーロピアン風にエオは感じる。

 しかし、この商店街には銭湯が有るらしい。

 外国と日本の文化が混じったような状態になるのではないかとエオはどきどきにながら銭湯に向かった。


「まじか…………?」


 予想より遥かに大きく、古風な建物だ。今まで知らなかったのが不思議なくらいだ。


「女子はこっちだから……」

 ホルセは女子風呂に消えていった。

「男湯はこっちか? 広すぎて迷子になるぞこれ?」

 男湯に入るや否や、服を脱ぎ、かごに乱雑投げて、扉を勢い良く開いた。

「これは、なんと立派な風呂だ!」


 エオは感動した。懐かしいあの、独特な匂いと熱気で汗が滲むときの不快感、それをシャワーで流すときの、爽快感とお湯につかる時の、至福の脱力感。

「たまらん、疲れがぶっ飛ぶぞ~」


 最高のひとときを満喫していると、ガラガラと扉が開く音が聞こえた。

「そう思えば、いま、一人か……?」


 ぐるーっと見渡したが、確かに誰ものいない。

 扉の方を見る、薄紅色の髪が華やかで、大きく出た胸が……。

「おっぱい?!!」


 エオは叫んでしまった。


「誰だ?!」


 エオの声に反応した。

 エオは声を聞いて、確実に女の子であることを確信した。

「やばい……」

 エオはここが男湯であることは知っている。間違いない。

 と言うことはあの子が勘違いしているということになる。もしこのまま誰かに見られたら、彼女は一生の恥だ。

 エオは必死に考えたが、良い案でが出ることはない。

「くそ、どうすれば……」

「少年? 何を悩んでいる?」

「!??」


 エオは目ん玉が飛び出るかと思うぐらい驚いた。

 さっきまで、シャワーを浴びていたはずの女の子がいつの間にか横にいる。

「瞬間移動……?」

「何を言っている?」

「あ、違うかって、そうだ、ここは男湯ですよ!」

 エオはこれを伝えたかったのだ。

「いや? 女湯でもあるぞ?」

「え?」


「ここは混浴風呂だ? もしかして知らないで来たのか??」


「……え? 本当、ですか??」

「あぁ、時間によって変わるんだ、ここは? 別棟にはちゃんと分かれたやつもあるらしいけど、それより、君はエオくんか??」

「あ、そうです……」

「そうかそうか! 会いたかったんだよー」

 彼女は握手を求めきたので、男女裸で握手をするという、何とも興奮し損ねるシチュエーションになっている。

 そして彼女は名前を続けた。

「私は仕立て屋―ジャックライオの一人娘、リリカだ! よろしく」


 エオはいっぱいリアクションを考えていた。

『まさかここで会うなんてー』とか。

『僕も探してたんですよー』とか。

 でも、エオはあえて、この選択しをする。


「リリカさんおっぱいでかいですね!」


 混浴風呂が数秒の間、空白になることは確定した未来だ――。

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