キャロルと53万
「それじゃ、ここに、自分の名前を書いてくれ」
「えーと、愛雨エオっと……」
「それじゃ、両手を置いてみて?」
「こ、こうでいいのか?」
すると紙が光を放った。
「まぶっ」
あまりの眩しさにエオが目を瞑ってしまった。
ゆっくり開く。
「ねぇ、エオ!」
「はい……」
「こんな数値、初めて見たよ……!」
エオはそっと、紙を見る。
「53万って……。え、なにこれ、戦闘力??」
「何言ってんだよ、淫力の数値だ。ここまでの淫力保持者って、どんだけエロいのよ?」
「なぁ! 俺は至って純粋だよ。マトソムも言っていたけど、淫力=エロいっていうのは決まり事なのか?」
「あぁ、性欲が強ければ淫力が上がるんだよ、この数値だと、今も我慢するの必死よね??」
「いやいや、キャロルは確かに、魅力的だけど、手を出したりはしないよ、てか、会ったばっかりだろ?」
「え、うん、そう、なんだ……?」
キャロルは頬を赤く染めている。
「キャロルが言ってた『七人の女の子を幸せにする』って本当に子供を作れってことなのか?」
「というと?」
「いや、俺も女子の気持ちは分からないけど、幸せって色んな形があるから、別に子供を作るだけが幸せじゃないと思うんだよ」
「うーん、確かに。ただ、私は女に生まれたからには、子どもが欲しい、そして、結婚したい!」
結婚のチャンスを逃したアラサーみたいな発言だが、キャロルの堂々たるその姿は、一周回ってかっこよく思えた。
「まぁ、でも、なんで俺なんだろう? このソラーノ島の男の人も少なからずいるだろ? 俺が淫力が優れてたって、使い方もこの島にも慣れていないのに…………」
「村長何にも言っていないのね……?」
「??」
確かにマトソムは鍵のことと淫力についてしか、教えてくれなかった。
「あのね、この島の魔物は別にモンスターとかとは違って、呪いみたなものなの、その呪いがあるとこの島の人たちは消滅する」
「それって、どんな呪いなの?」
どんな恐ろしい呪いだろうか。
「それは、性欲が無くなる呪いなの!」
「……」
「いや、エオ。なんか反応してよ、恥ずかしいでしょ?」
「あ、ごめん、キャロルにも恥ずかしいっていう感情が有ったんだな」
思ったより、この島は大丈夫みたいだ。
「馬鹿にしてるの?!」
「馬鹿にはしてない、というか、それが本当なら、キャロルは何で子供作る気力があるんだ?」
「えーと……?」
「もしかして、キャロルも??」
「そうよ! 私は淫乱な淫力使いなのよ、仕方ないじゃない、生まれ持ったものだし。エオだって淫力使いなら分かるでしょう? 毎日毎日、す、スケベなこと考えちゃうんだ」
「いや、わからんぞ」
「え……?」
「俺は、至って普通だ。そりゃ、性欲もあるにはあるが、きっと、そこら辺の同年代の男の子と同じだ」
キャロルは絶句した。
「…………」
「…………」
数秒の沈黙―
「仲間だと……」
「え?」
「スケベ仲間だと思ったのに、もうでてけーーー!」」
エオは家から追い出された。
「なんだよ、たくっ……」
エオは仕方なく一度帰宅することにした。
エオの家にて。
「お前は・・」
エオの視界に飛び込んできたのは。
低身長の。
白髪の。
「ほっほっ、若造、先ほどぶりじゃ」
爺さんだった―。