レオルと報酬
「こんなことがあり得るのか…………?」
アリルン・クライドは長年、グレンドランゴ島の調査隊隊長として誠心誠意この身を捧げ、努めてきた。
だから、ちょっとやそっとのことじゃ、びくともしない。
しかし、この状況は驚くに値する。
「マンドラゴンが実っているだと…………」
少年がジョウロで水を撒いているが、一晩中、ぶっ続けなのだろう、フラフラと体が揺れている。
「エオー!」
クラウドの後ろから少女の声が聞こえた。キャロルだ。
「凄いじゃない、一晩中、ちゃんとやり続けたわ、もういいわよ、ちゃんと実っているから……」
キャロルは畑に入り、エオに近寄った。
「キャロルか……? 言いたいことがあるんだ……」
「はいはい、後にしなさい、今はゆっくりおやすみ」
「……そ……う……す……」
エオはキャロルの胸の中に落ちた。
「ホルセ、グレイ、ごめんけど手伝って?」
「エオは明日のことちゃんと覚えているのか?」
「いや、覚えてなくても連れていくさ」
ホルセとグレイが折り畳み式の転送箱を持ってきた。
「明日エオと約束でもあるの?」
「いや、その、秘密だ」
「怪しい~」
そんな会話をしつつ、エオをマサルトクリニックまで転送した。
「これでひとまず、大丈夫だ、私たちはエオについているが、キャロルは?」
「そうね、ある程度、落ち着いたら、メウとビスを連れてそっちに向かうわ」
「了解だ」
ホルセとグレイが立ち去ろうとしたその時―。
「ちょ、ちょっとまってくれ」
クライドが三人を止めた。
「なんでそんな、平然としているんだ? マンドラゴンの実が一晩で育ったんだぞ? これがどれだけ凄いことかわからないのか?」
「あー、まぁ、最初はびっくりしたけど、ずっと一緒にいたら、ね?」
「ずっと一緒……?」
「あー、最初は私だけだったんだけど、結局、みんな自然と集まってきて、メウとビスは寝ちゃったけど……」
一晩中、起きていたのは、エオだけじゃなかったのだろう。
キャロルもホルセもグレイ、それに今はすやすや眠るメウとビスも、みんな疲労が溜まっている。
しかし、表情は晴れやかだ。
「まぁ、このぐらいで、エオのためになるなら、私たちは本望だ」
ホルセはそう、言い残し、グレイと一緒にマサルトクリニックに向かった。
「で、クライドさんに最後のお願いです。これをトリノコ島に持っていってくれませんか?」
「あ、あぁ、勿論だとも」
動揺を未だに隠せないクライドだが、一つだけわかったことがある。
「この島は、素敵だな……」
するとキャロルは、胸を張っていった。
「当たり前でしょう? この島はいずれ、妖精だって住めるぐらい、幸せいっぱいの島にするんだから」
クライドは一瞬、固まったが、そのあと、大きい声で笑い出した。
「なによ? 馬鹿にしてるの?!」
「いやー、違う、私はこの島、そして、エオを見くびっていたようだ、ここに詫びよう」
「いやいや、頭あげて下さい。もうー、調子狂うなー」
キャロルは照れくさそうに背伸びをした。
「隊長―! ってキャロルさん!?」
「おう、お疲れ、レオル」
キャロルは調査員―レオルに手を振った。
「あ、え、名前覚えてくれていたんですね?」
「当たり前でしょう? そもそも、レオルの連絡先知らなかったら、解決できなかったんだから、ありがとね」
「いえ! 私は当然のことをしたまでであります」
レオルの顔がとろけてチーズのようになっている。
「隊長! これエオさんから預かっていた手紙です! 何やら報酬とかなんとか?」
「なんだ? 報酬?」
手紙を開くと驚くべき内容だった―。




