O-B117とマンドラゴンの実
「しかし、メウさんとビスさんのお母様の病気の原因は他にありました」
エオだけじゃない。キャロルもメウもビスも予想だにしていない言葉だった。
「じゃ、結局、原因は何なんですか?」
「O-B117」
「それって……!」
キャロルが口元を抑えて動揺している。
メウもビスもかなり怯えている。
「それってどんな病気なんですか……?」
エオは勇気を振り絞って尋ねた。
「O-B117は体の全能力を著しく低下させ、いずれは全く機能しなくなる病気です、発症して治す方法は今のところ二つしかありません」
「その方法は……?」
「ネバー・フィッシュかマンドラゴンの実を食べるかの二つです」
「じゃ、早く入手しなくちゃ……」
「無理です」
「なんで……ですか…………?」
「ネバー・フィッシュはおよそ百年に一度しか捕れない希少な魚です。どんな特別スキルを持っていても五年はかかります。マンドラゴンの実は育てることが極めて困難です」
「どうやって、育てれば??」
「一カ月間、魔力を注入した水を与え続けなくてはいけません」
「それって……」
「そうです、だから、この病を治すことは不可能です」
エオはこの島にきて、絶望的な状況はなかった。
魔力や色々な道具、未知の植物に妖精だっている。
ピースだって、お別れしたけど、この島が幸せに満ちたら一緒に暮らせる。
どんな困難でもきっと、解決策はあった。
不可能―。
その言葉の重みは尋常じゃない。
「クライドさん」
エオはここで諦める訳に行かない。
「なんだ?」
ピースとの約束。このソラーノ島の住人から幸せを集める。
「マンドラゴンの種は入手出来ますか?」
それはメウとビスのお母さんだって、例外じゃない。
「種なら、何とか保管しているが……?」
ならば、こうするしかない。
「お金ならどうにかします。それを頂けませんか?」
エオはマンドラゴンの実を育成することを心に誓った―。
「マンドラゴンの種、初めてみたよ……」
ここはケレルン種屋の畑。
「すみません、こんな大きな畑借りちゃって……」
「それは全然構わないけど、こんな夜に大丈夫?」
「マンドラゴンは夜からでも大丈夫だと聞いたので、大事なのは一つ。水をやり続けることです」
「いや、エオの身体心配なんだけど……」
報告会の帰り、メウとビスはキャロルに任せ、エオは一人で、ここにやって来た。
種屋のお姉さん―エレスは驚いていたが、事情を聞くと快く畑を貸してくれた。
「大丈夫です、栄養ドリンクも沢山貰いましたし」
キャロルが行く前に店からありったけの栄養ドリンクをくれた。
『一晩はこれで乗り越えなさい』
そう言って見送ってくれた。
「それはそうだけど、まぁ、やるだけやってみな?」
「はい!」
エオはポケットからTNGを取りだした。
淫力を魔力に変えるための道具だ。
「なんだぃ? それは?」
「えーと、僕、淫力なのでそれを魔力に変えるための装置です……」
これを説明するのは恥ずかしい。この世界では淫力=変態みたいな扱いをされる。
淫力は性欲を源に力発揮する。
つまり、今のは、僕はえっち大好きな人ですと、エレスに説明しているのとさして変わらないのだ。
「ま、あ、そっか……」
案の定気まずい空気。
エオはさっさと、魔力に変え、ジョウロに力を込める。
すると、ジョウロの先から、水が出てくる。
システムは良くわかっていないが、ピースとの農作業を思い出した。
「よし、頑張るぞ」
エオは栄養ドリンクを一気飲みし、一カ月、水をやり続ける。
そのつもりだったのだが――。




