記者と拍手
今日は意に反して、気持ちの良い朝だった。
「この道具箱は四次元ポケットかよ……」
エオの心は、まだ、完全には癒えていない。一夜過ごしたぐらいじゃ、切り替えること出来なかった。
何もしないとどんどん落ち込んでいく気がして、いつもは絶対しない、掃除をしていたら、道具箱から小型のテレビが出てきた。
「えーと、魔力を注入してお使い下さい、ということは……」
TNGの出番だ。
「爺さんからこれ貰ってなかったら、まじで、何も出来ないとこだったよなー」
独り言だ。
「これでよしっと、それで? テレビに触れると自然と吸い取られますか」
触れてみる。
「おぉ、ついた」
テレビには朝のニュース番組が映し出されている。
『ソラーノ島の皆さん! おはようございます! 今日のニュースは何といっても、村長マトソムさんが逮捕された事件から。この島に住んでいた、妖精たちを複数人殺傷し、その残酷な手口が決め手となり、終身刑が実刑されました』
キャスターの女性が真剣な表情でレポートしている。
「これからどうなるんだろう……」
『ソラーノ島の評判は今、記録史上最も低い数値となっており、他の国々からも、敬遠されています。このままだと、ソラーノ島が破綻するのも時間の問題でしょう』
「まじか……!!」
「エオ!」
「お、キャロル、居たのか?」
「お、じゃないわよ! 記者たちが沢山来てるわよ」
「え……?」
外を除くと何人もの人たちが、エオの家を囲っている。
「なんで、僕の家の周りに……?」
「多分、ピースたちが自分たちの名前を伏せたから、結果として、エオがマトソムの悪事を暴いたってことになっているのかも……?」
「どうすればいいの?」
「エオ。これはある意味チャンスよ!」
「え?」
この状況をチャンスに感じるほど、エオの頭は壊れていない。
「ソラーノ島は、このままだと、本当に廃島になってしまうの。エオだってそんなことになりたくないでしょう!」
そりゃそうだ。
「だったら、アピールするしかない。これがラストチャンスよ……!」
「わかった、自分なりにやってみるよ」
エオが自宅から出ると、沢山のマイクに囲まれた。こうなることは予想していたけど、いざ、体験すると、怖い。
『愛雨エオさんですよね?』
「はい……」
『今回の騒動の主犯であるマトソム氏とはどういう関係でしたか?』
「僕がこの島に移り住んで、まだ、一週間も経っていないので、親しい関係ではなかったと思います」
『この島は元々、妖精族が住んでいたことは知っていましたか?』
「いいえ、それに気づいたのは、最近です」
『具体的には……』
前半は丁寧に対応していたが、質問の量が多すぎて、頭がオーバーヒート。パニックだ。
でも、“あの質問”が来るまでは耐えなくてはならない。
『そうですか。それじゃ、私からは最後の質問です。ソラーノ島に対する評価は残念ながら、記録史上最悪の数値になっていますが、“このからソラーノ島をどうしたいですか?”』
この質問には即答することができる。待ち望んでいた。
「妖精と共に住めるぐらい、幸せの満ちた島にしたい」
『え、えーと、それは……』
エオは記者を睨むとマイクを奪い取った。
「村長だった、マトソムのしたことは決して許されるものではありませんし、僕一人の力で罪を償うことも絶対にできません。でも、この島には、美味しい魚や元気な動物たち、大自然の恵みと人々の温かさがあります。こんなことを言って語弊が生じると思いますが、この島も、みんなも僕は大好きです! だから、皆さんもこの島のことをどうか、どうか、嫌いにならないで下さい! お願いします!!」
こんなに一生懸命頭を下げたことがあるだろうか。少なくともエオが思い当たる中でこれが最善だった。
『……えーと…………』
記者は圧倒されていた。
こインタビューをいきなり押しかけたのに、こんなに堂々たる態度。
ぱちぱち…………。
パチパチパチパチッッ!
そこにいた、記者からの盛大な拍手。
エオの思いはテレビを通して、様々な人に伝わった――。




