箱と元の世界
エオはキャロルとホルセに協力してもらえるよう、お願した。
「妖精も一緒に暮らせるような島にしたいんだ、だから……」
「エオならそう言うと思っていたよ」
ホルセがやれやれと言わんばかりに、そう言った。
「エオはそう言うやつだもんね、私たちは最初からそうのつもりよ」
キャロルもそれに続いた。
「ありがとう……!」
エオはこの島でどれだけ、この二人に助けられただろうか。激しい一面もあったが、それすら、愛おしく感じるほど、彼女たちに支えられている。
「ピースから預かっている情報だ」
ホルセは手に収まる程度の箱をエオに渡した。小さなルービックキューブのように見える。
「エオ、それを起動させて?」
「起動? どうすればいいの?」
「実は私たちにも分からないんだ。エオならいつか、解けるだろうと言っていたんだが……?」
「うーん……?」
さっぱり分からない。
「何か、仕掛けがあるのかな…………?」
「かも知れないわね。でも、それはまたにしましょう? 今日のところは、家に帰りましょう?」
「あぁそうするか……」
エオの家にて。
「…………」
いつも、ピースの声がしていた部屋だった。
一人になるとこんなにも静かなんだと、エオは孤独を感じていた。
「寂しいもんだな……」
「もし、普通にあっちの世界で一人暮らししたら、こんな感じだったのかな」
毎日のドタバタが無くなると急に、元いた場所を思い出す。
「帰りたいな」
その時だった―。
「エオ……」
「ピース? ピースの声だ!」
何処からか、ピースの声が聞こえた。
「ピース! 何処にいる」
「エオはどうしたい?」
ポケットから淡い光。
ポケットの中を探ると、箱。
「音声データ……?」
箱からは、確かにピースの声がする。しかし、姿はない。
ならば、録音したものだろう。
「エオは十分に頑張った。私のために毎日、精一杯頑張った。私もジーゼズもこれ以上は望めない」
「…………」
「ここで選んで欲しい。今ならこれを通じて元の世界に返せる。しかし、これを逃したら戻れるのはいつになるか分からない」
「どうするエオ?」
エオの目の前にデータ板が表示された。そこには―。
戻りますか?
YES/NO
と記されていた。
エオの答えは決まっている。
「ピース、この箱の文字より、手紙のほうがよっぽど、思いが伝わってきたぞ」
エオの答えは“NO”だった。
「絶対また、会いに来るんだろ? それならこの島をみんなで暮せるようにするしかないじゃんか……」
「エオ、これを聞いているということはこちらに残る選択をしたんだな……」
当たり前だ。
「私たち、妖精族が暮らせるようになるには、条件は二つだ。一つは鍵の回収、この鍵は私たちの力を抑制している。だから、全部集めて欲しい」
勿論そのつもりだ。爺さんがピースを守るために鍵をバラバラにし、人間に植え付けたものだし、また、悪用されたら、それこそ、本当にゲームオーバーだ。
「そして、もう一つはこの島の人々の幸せを集めて欲しい。集め方はステータスを確認すれば一目瞭然だ」
後で確認しておこう。
「散々迷惑かけた上に、お願ばかりで本当にすまない、最後に一言だけ」
「……」
「エオ、私は、あなたが大好きです」
箱の光が消えた。それと同時にピースの声もなくなった。
「俺もいつか伝えなくちゃな、ピース…………」
エオは拳を強く、強く、握りしめた。
エオの決意は決して揺らぐことはない―。




