道具と魔力
「これは、クワ? あ、オノもあるし、色々入ってるなー」
この箱は道具入れのようだ。畑を耕すのに必要な農具は一式揃っている。
「なんだこの紙は……?」
エオは一枚の紙を手に取る。
「これは、説明書……?」
そこには道具の使い方が丁寧に記されていた。
「なになに? この道具は魔力によって動きます、魔力は道具を持ったときに感知します……って、魔力とか、そんな力持ってるわけないんじゃん、いや、まてよ、もしかしたら……」
エオは道具箱をゴソゴソと探った。
「これかな?」
エオは機械を取り出した。
「えーと、魔力測量機、これだよ」
異世界転生したのだから、もしかしたら、自分にも物凄い力があるかも知れない。このぐらいの年の男の子なら皆期待することだろう。
エオは説明書通り、機械に指を置き、測量機の電源を入れた。
『貴方の魔力は…………ゼロです!!』
「んな?!」
『貴方の魔力は……ゼロです!!(笑)』
「2回も言わなくていいよ、てか、少し笑っただろ、お前!!」
機械に無意味にキレてしまったエオ。
「えー、じゃ、道具使えないのか、それなら、取り敢えず、街の方に行ってみるか」
エオは家から出て、街を散策することにした。
「エドワード商店街?」
看板の文字は全く知らないのに、読むことができた。
このエドワード商店街は家から徒歩三分ほどで到着した。
「へぇー、色んな店があるなー」
雑貨屋、料理屋、クリニックや仕立て屋、様々な店が立ち並ぶ。
「おーい!きみきみー」
後ろからエオを呼ぶ小太りの男の人がいた。
「君がエオくんかい?」
「あ、はい、そうですけど、あなたは??」
「私は村長のマトソムです、よろしく」
握手を求められた。
「あ、はい、こちらこそ..」
「挨拶しなくてはと思って所なんですけど、遅れて申し訳ない、ちょっといざこざがありまして..」
「いざこざですか?」
「はい、このソラーノ島には魔物が住んでおりまして、それらを封印する7つの鍵が消えてしまって……」
「はぁ……?」
魔物とかもいるのだろうか。それに七つの鍵って何のことだろうか。
「エオさん、いきなりで申し訳ないですが、それを探すお手伝いをして貰いたい!」
「え、でも、俺魔力っていうのがゼロらしく、お役に立てるとは思えないんですが..」
「ゼロ、ですか?」
マトソムは首を傾げた。
「はい、多分、俺、めちゃ弱です」
「うーん? 可笑しいですね、少なからず、魔力は誰もが持ってるものなのですが....」
この世界の人は誰しもが魔力を持ってるらしい。
「ってことなんで、俺はこれで……」
エオは立ち去ろうとする。
「あ、エオさん、もしかしたら魔力はなくても淫力はあるかもですよ!」
「引力??」
「違いますよ、淫力ですよ!」
「とても、エロそうですね」
「はい、たまには居るんですよ、生命力の源である、魔力を保持していない者が持ってる第二の生命力、それが淫力です!」
「つまり、俺が変態だと?」
「はい!そのとおりです!」
「そうですか、それでは俺はこれで」
踵を返し、この場から離れようとするエオ。
「ちょ、待ってくださいよ、もし、淫力をお持ちの方であれば、問題を解決するには打ってつけなんですよ!!」
「どういうこと?」
「それはですね……」
村長のマトソムはニヤリと薄ら笑いを浮かべながら語りだした。