アルとグレイとホルセpart6
そして、ブラックジャックが始まった。
この局面でアルが参加したのには理由が勿論ある。
アルの得意な魔法は精神支配といった相手の心を覗いたり、簡単な指示で操ったりすることだ。
このブラックジャックは21を超えないようにカードを引き続けるその駆け引きが大事だ。
つまり、イレブンの精神支配を一瞬支配してしまえば、良い。
そう思っていた。
「あ、因みに、知ってると思うけど、魔法の使用は禁止ね、そんなことしたら、折角のゲームが面白くないからさ」
イレブンは相手の思考を読む能力でもあるのだろうか。
アルの密かな策略は一瞬で意味がなくなった。
「それでは始めるよ!」
イレブンはリズミカルにカードをシャッフルする。
パッと見、不正はしていないように見える。グレイもイカサマについてはそこそこ詳しいが、今のところ、そんな仕草は見えない。
「それではまず、グレイ二枚っと」
イレブンは慣れた手つきで、グレイに二枚カードを配る。
数字はQと3。10、J,Q、Kは全て10として数えるので今現在のグレイの数は13ということになる。
「まぁまぁ、だね、そしてアルはっと」
アルの数字はAceと7。Aceは1と11になるのでアルは勿論、11を選んでだ。つまり合計は18。そこそこいい成績と言える。
「グレイ、どうする?」
「勿論、ヒットだ」
ヒットはカードを引くことで、ディーラーからカードを一枚もらえる。
カードをもらうことを辞め現状の手で勝負するときは、スタンドと言う。
そして、グレイはヒット、つまりカードをもらうということだ。グレイは合計13なので、9以上の数字が出たらアウトだ。
イレブンはさっと一枚のカードをグレイの前に置く。
数字は。
8、つまり合計は20となる。かなりいい成績だ。
ディーラーは17になるように、引き続ける必要がある。逆を言えば17になるまでしか引けない。だとすれば、グレイはかなり有利な状況にあると言える。
「アルはどうする?」
「ス、スタンドで……」
「じゃ、僕の番だね!」
グレイは経験で分かる。ここで勝ちを意識するのは良くない。
20ということが相手は21を出して来たら負けなのだ。
そして運命の時が来た。
グレイにとっては仲間の命を賭けたバトル。
ここで違和感に気付く。グレイはアルと、ホルセの命を背負って戦っているが、アルは何を賭けているのだろうか。
そう、何も賭けていない。
負けたらどうなるのか。
何も聞いていない。ただ、このゲームに参加するなら、命を賭ける必要がある。それが参加条件だとイレブンは言っていた。
つまり、アルも誰かの命を賭けているのだろうか。
イレブンがカードを引く。数字は7、次に4。合計は11だ。
一見、何でもないような数字に見えるが、これピンチだ。ここで10、J,Q、Kのいずれかを引かれたら、21となり、アル、グレイ諸共、敗北だ。
イレブンが引いたのは。
8だ。
つまり合計は19。
この時点でグレイの勝利と共に、アルの敗北が決まってしまった。
「アル!!」
グレイはアル呼ぶ。
「はい?」
「え?」
何も起きない。アルは命を賭けたんじゃないのだろうか。
「はははっ! 僕の負けだね! いやー、久し振りの緊張感だったよ」
イレブンは笑っている。
「……どういうことだ?」
「え? 何がだい?」
「アルは負けたから何かあるものかと……?」
「はははっ、なるほど、そんなことを気にしてたのか、いやね、僕は真剣なカードゲームがしたかっただけなんだよ、君たちの命なんて微塵も興味ないから、いやー、君たちは十分に僕を楽しませてくれたよ! さぁさぁ、次のステージに行っていいよ! 上ではお兄様が待っているんだ、きっと、楽しいゲームを考えてくれてるさ!」
イレブンは戦闘力には優れているのに関わらず、戦うことに興味のないシルの複製。カードゲームやボードゲーム、テレビゲームなどを好み、それ以外には何の興味も示さない。そんな変わった、シルの遺伝子を受け継ぐものなのだ。
次の話はちょっと、脱線します。




