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ファイブとプロレス

「……パンヌの件は残念でした」

「あぁ、しかし、関係はない、元からなかったようなものだ。あの作戦が失敗した時点で、あいつはあちら側につくことは大いに予想できたからな」

「はい……」

「どうした? 貴様たちだけでは不安か?」

「いえ、そんなことは!」

「それなら良い、俺は楽しみたいだけなのだ、エオにあの映像を送った日から全てがその為だけだ。ならばお前たちも楽しめ! 最後に俺が勝っていればそれでいい」

「御意」



 崩れ落ちた瓦礫を乗り越え、三人は中に入る。

 

「……別に扉壊さなくても良かったんだけど?」

「そう? 勢いつけるためにてきな?」

「……そうか?」

 エオはこのシルという男が、どんな性格か、イマイチ分からない。

 そんな会話をしていると大きな空間にでた。

 そこにはプロレスでも見たことない大きさのリングが設置されていた。

 

「やぁやぁ、ド派手な登場ありがとう。シル・マッカザージル。いや、オリジナルと呼んだ方が分かり易いかな?」


「まぁ、いると思ったよ、君がね」

「覚えてくれているとは光栄だね」

「あぁ、勿論忘れるわけがないよ、ファイブ」


 ファイブと呼ばれた少年はシルにそっくりだった。声も顔も動きだって、かなり巧妙にできているが、これも魔法の道具のちからなのだろう。

「それでは、始めましょうか」

「え、何を?」


 エオは素で言葉がでた。

 緊張感がないわけではない。余りにも当たり前のように何かを始めようとするファイブに少し困惑しただけだ。


「ここはテーマパークですよ? 何もしないで死んで貰ってはあまりにも勿体無い。どうせ、死ぬなら楽しんで死にましょう?」

「はは、お父さんが考えそうな、悪趣味でいて興味深い提案だね? で、僕たちは何をすればいいのかな?」

「それは、僕らと一対一のタイマン勝負をして頂きます」

「…………タイマン勝負?」


 エオもここに来たからには、無傷で帰るとは思っていない。しかし、予想より早い対戦。エオはまだ魔法の一つも使えない。シルの爺さんの魔愚によって新魔力を手に入れたが、それは決して、魔法を使えるというわけではない。


「タイマンってことは他にも君みたいなやつがいるのかい?」

「二体用意してるよ、おいで~」


 ファイブの後ろから出てきたのは、シルとは全く容姿の違う二人の男。

 一人は茶髪で、目元にクマができている、かなり凄く貧弱そうな見た目。

 一人はマッチョでクライドよりかなり大きなガタイ。それに背中にはこれでもかと言わんばかりに棘が生えた、巨大なハンマー。


「この二人は、オリジナルの遺伝子を汎用して作った、クローンだよ。僕みたいにただのコピーではないんだ。それ故、成功率はかなり低いから、まだ、この二体しかできていないんだけど、メッキガーデン様の優しい心遣いで、貸して下さるんだ、まぁ、君たち三人なら僕一人でもよかったんだけど、それじゃ芸がないからね」


 舐めた口を利くファイブ。

 パンヌとシルは戦闘態勢だ。

 しかし、エオはそうではなかった。

 エオは三人を見比べている。圧倒的オーラを放つ、ファイブ。巨体のハンマー野郎。そして、不健康そうな茶髪。

 エオを腹は決まったらしい。


「なぁ、シル……」

「どうした? エオくん?」

「あの、僕が戦うのは茶髪でいい?」


 エオは少しだけ、本当に少しだけ、ほんのちょっびとだけ、ビビっていた――。


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