始まる少し前の話
「ハァハァハァ、どこまで追ってくるつもりなんだよ」
男は、白いワイシャツに、紺色のズボンといった、どこかの学校の制服を着ている。男は深い森を大分走っている。何かから逃げるように。
バァン!
銃声がした。すると同時に、男の悲鳴が聞こえた。
「グアァァァーーー」
銃弾が男の右足に当たった。男は、この痛みだと逃げ切れないと思い、当たった場所に手をかざした。
「回復魔法 ヒール」
男は傷口に手をあて魔法を唱えた。しかし回復する気配はしない。
「何で、何で、すぐに回復しない。はやく、はやく回復しろよ......」
カサカサ、カサカサ。足音がする。こっちに近づいてくる。
「動くな!」
黒いヘルムとアーマースーツで全身を覆っている男が拳銃を構えながら、叫んだ。
「動いたら、撃つ」
「ハァハァ、助けてくれよ。何でもするから。俺が、何をしたっていうだよ」
男は黒スーツの男に必死に命乞いをしている。
バァン!
「動くな。と言ったはずだ。次は、ないぞ」
銃弾は、男の左足に命中した。男は、命乞いをやめ、すかさず、男は右手を向けて魔法を発動させた。
「炎魔法 ファイヤボール」
しかし、男の右手から炎がでることはなかった。
「何で、魔法が発動しない」
バァン!
銃弾は男の頭を貫いた。男はその場で倒れた。
「次は、ないと言ったはずだよな、転生者」
黒スーツの男は、拳銃を地面に置いて、倒れている死体に手を合わせた。黒スーツの男がヘルムをはずした。黒髪の少年だ。顔の良さは中の上といったところだろう。
ピピピ ピピピ
耳につけている、例えるならコードレスイヤホンのようなものから音がでている。
カチッ
「はい。任務は現在終了しました、長官」
「そう、それはご苦労様。悪いね~ルカく~ん。高校生の君にいっつもこんな仕事を頼んで」
長官が、陽気な感じでしゃべっているのが聞こえる。ルカは呆れた感じで返事を返した。
「いえ。そんなことより、死体の回収は任せます。いくら森の中とはいえ、見つかったらまずいですから。それに、今日は早く帰らないと行けないんです」
「あぁ、弟が生まれるんだっけ?おめでとう~」
クラッカーのようなものがはじけた音がする。
「あぁ、それとね。聞きたいだけどさ。もし、あの男がこの森に逃げ込まなかったらどうしていたのかな~って」
「この森って対魔法用空間を仕掛けた場所のことですか」
対魔法用空間 通称AMEとは、発動している中心から半径約500m内の魔法を使用禁止にするものである。しかし、範疇を超えるような強さの魔法だったら、禁止することはできないので注意点が必要である。
「そんなことあり得ませんよ。追跡を開始した地点から、逃げやすいところは、事前に発動させてた、この森しかなかったですし。森に逃げ込む前に人がたくさんいるところで、強力な攻撃魔法は使えないですし。」
「そうだね、魔法が管理されているこの世界ではね」
「ええ、その通りだと思います。 もう切りますね。行かないといけないので」
「えっえっちょっt......」
カチッ
ルカは、黒いアーマースーツを死体の近くで脱ぎ捨てた。一緒に回収してもらうためである。ルカは、手に身につけていた時計を確認した。3時43分だった。5時が、出産予定時刻と言っていたの思い出した。ここから病院まで1時間半はかかる。
「これは、急がないといけないな。」
ルカは、森のなかを走り抜けってた。
ーーーーーー
「あーあ。切るの早いな~」
椅子に座りながら、誰が聞いている訳でもなく皮肉っぽっく言っ
た。長官はルカに電話に切られたことを少し根に持っているみたいだ。
「まぁ、けど、やはり、ルカくんは優秀だな~ 転生ランクCとはいえ、あっさり倒しちゃうだから。これからも頑張っても~ら~おっと」
長官は椅子から立ち上がりモニターだらけの部屋から立ち去っていった。
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