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なきよをおもしろく おもしろきことも

作者: 日木玉 鉄才

「ねえ、教えてほしいんだけど」と妹の舞がノックの返事も待たずに入ってきた。


その姿はばっちりとメイクが決まっている。


「だからノックしても返事を待たないと意味がないぞ」

といつもどおりのセリフを莞爾は言った。


読んでいた小説を机に置き

座椅子にもたれながら伸びをする。


「あのさ、彼氏の話なんだけど」

そう言いながら舞は莞爾の横に座った。


「ああ、明君の話か。舞の彼氏にしてはいい男だよな」


「もう。言っとくけど明が初めての彼氏なの。

今までのはただの友達なんだからね」


舞は強い口調でそう言った。


舞は活発な美女である。


明るく可愛いので、とてもモテている。


莞爾の口から言わせれば、舞は運良く現代人の美意識の真ん中にいる

お頭の足りない子となる。


「それでね。私もうすぐ誕生日じゃない。

だから明に誕生日プレゼントを買ってもらう約束をしたの」


「確か明君と付き合ってまだ一ヶ月しか経っていないんじゃなかったっけ。

しかも舞がアタックしたんだろう。

よくまあ、そんな厚かましい約束をしたものだな」


「だって、彼氏は彼女にプレゼントくらいするものでしょう」


舞は当然の権利だと思っているらしい。


莞爾は非難するように、薄眼を開けて舞を見た。


「まあ、それでね。明とさっきまでデートしてきたのよ。

それで誕生日に何が欲しいか聞くから、デパートに行って調べてきたの。

それで欲しいものを教えたら、明が変なこと言うのよ」


「変なこと?」


「そう。『なきよをおもしろくおもしろきことも』って言うの。

どういう意味って聞いたら、兄さんに教えてもらえだってさ」


舞はまるで意味がわからないらしく

口を尖らせて理解できないといった表情を作っていた。


明君はクイズとか暗号とか好きだなあと莞爾は苦笑いする。


莞爾はもう一度その言葉を教えてもらい、紙に書いて読んでみた。






「ふん。なるほど」


「何か、わかったの?」


 舞が紙を覗き込む。


「明君と僕は話が合ってね。幕末の話しでよく盛り上がっているだろう」


「そういえばそうだったね。私はさっぱりだけど」


舞は首をひねり、今までのことを思い出しているようだった。


「そこで話は戻るけど、舞さ

相手の予算を考えずに遠慮なく欲しいもの言っただろう?」


「ええ? うん。買ってもらえるかわからないけど

一応一番欲しいものを言っておくべきだと思って」


「どうせ、ブランド物のバックが欲しいとか言ったんじゃないのか?」


「よくわかるね。ドルチェ&ガッバーナの新作で可愛いカバンがあるんだ。

買ってもらえたら嬉しいなあと思ってね」


そう言うと舞はニコニコしている。


悪意がない分性質が悪いなと莞爾は思った。


「まあ、じゃあ、さっきの言葉の意味を教えよう」


「うんうん」


「辞世の句で『面白きこともなき世を面白く』

と読んだ人物が誰だか知っているか?」


「知らない」と舞は首を振った。


「高杉晋作だよ。それでさっきの言葉は

その辞世の句を半分にしてからひっくり返している」


そう言いながら莞爾は紙にわかりやすいように書いてみせた。


「あ、ホントだね。で、どういう意味なの?」


「だから、同じように高杉晋作をひっくり返して言ってみな」


「同じように? 晋作高杉?」


「そう。新作が高過ぎるって明君は言いたいんだろうな。

だからそのプレゼントは諦めな」


「そんなあ」と呟き、舞はがっくりと肩を落としていた。


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