第七話 学校の騒動2
その影の正体はなんとティオだったのだ。無論、龍の姿だが。
ここに締羅様がいるはず・・・
ティオは学校の屋上に降りると人間の姿になり、校内に入った。
締羅様、何処にいるんでしょう・・・
学校に入ったのはいいが、締羅の居場所が分からなかったのだ。ちなみに締羅は1年B組で、一学年A〜Dまでクラスがある。
だがティオは偶然今、1年の廊下を彷徨っているのだ。
そして休み時間に入った。締羅はトイレに行こうと教室を出た瞬間だった。
「なっ・・・!」
「あ、締羅様!」
なんと締羅はばったりとティオと会ったのだ。
な、何故ここに・・・幻覚を見てるのか?俺は・・・
「な、何故ここに・・・」
「だって締羅様とどうしても一緒にいたくて・・・」
「そ・・・そうなのか・・・」
「会いたかったです!」
するとティオがいきなり締羅に抱きついたのだ。
「お、おい・・・」
ぐ・・・なんだ、この突き刺さるような視線は・・・
締羅は今注目の的になっていた。
と・・・とりあえず場所を移すか・・・
締羅はティオを抱き上げ、教室を飛び出そうとしたが・・・・
「誰なんだ?その子」
達弘が顔を真っ赤にして聞いてきた。
「そ・・・その、この子は・・・」
「締羅様は私のご主人様です」
「なっ!ティ、ティオ!」
「て・・・締羅・・・そうなのか?」
「こ、この子は親戚の子供で、この前両親が仕事で海外へ行ったから、家で預かってるんだ」
「締羅は一人暮らしだろ?だったらその子と二人きりで生活してるのか?」
鼻息を荒らしながら聞いてきた。
「そ、そうだが」
「うおーーー締羅!!」
「っ!!」
すると達弘がいきなり締羅に掴みかかった。
「ずるいぞ〜締羅!こんな可愛い女の子と一緒に生活してるとは〜!」
「そ、そう言われても・・・」
締羅が気づくと、教室やその周りに、締羅のクラス以外の生徒も集まっていたのだ。
この状況、酷くまずいな。とにかくここを脱出しなければ・・・
締羅はティオを抱きかかえると生徒を押しのけ、教室を出ると一気に駆け出した。
後ろからは生徒達が追って来ていた。
締羅は屋上に出ると、ティオを下ろした。
「いいか、何があってもここには来るんじゃない。すぐに帰るから。いいな?」
「でも・・・」
「時間がない・・・大丈夫。必ず帰るから」
「スフィアゲート」
そう言うと締羅は手に神経を集中させた。するとティオが青い光に包まれたかと思うと、次の瞬間姿を消していた。締羅は転送の術を使い、ティオを家まで送り飛ばしたのだ。
「よし、これで大丈夫だ」
そして締羅は中へと戻った。
「あ、見つけたぞー!」
男子達がいっせいに駆け寄ってきた。
「あの子はどこだ?」
「家に帰した」
「な、なに〜!いつの間に!」
「とにかく、教室に戻るぞ」
こうして締羅達は教室へ戻った。その後締羅は普通通り授業を受けていたのだが、周りの生徒達は締羅のことばかり見ていた。しかもすさまじく痛い視線で。締羅は男子の視線より、女子の視線のほうがより多く痛く感じた。
なんか全然集中できなかったな今日は。とっとと帰るか。
「締羅君!」
教室を出ようとした締羅はいきなり呼び止められた。
「ん?なんだ」
「あの・・・その・・・」
「?」
声を掛けてきたのはあまり話したことのない女子だった。
「その・・・締羅君はあの子とどういう関係なの?」
「ティオは俺の親戚のようなものだ」
「そ、そうなの・・・わかったわ。ありがとう」
「ああ」
そして締羅は学校を出た
まさか学校でこの力を使うとはな・・・すべてティオが原因だが。まさか学校について来るとは思ってもなかったな。おかげで嫌な目線で見られたし・・・
締羅は家につき、ドアをあけた。その瞬間。
「締羅様ー!」
「ぐわっ!」
ティオがいきなり飛びついてきたのだ。
「よかったです。帰ってきてくれて」
「必ず帰るって言ったろ?」
「はい。うれしいです」
「とりあえずどこうな」
締羅はティオをどかせると着替え、夕食の準備に移った。
「今日はなんですか?」
「今日はカレーだ。知ってるか?」
「うーん分からないです」
「まあ後で教えるから」
一つ言っておくが、俺が料理を作っているわけではない。この世界に住み始める2ヶ月程前、締羅の出したこの世界に来るための異次元空間が誤作動を起こし、2500年に締羅を飛ばしてしまったのだ。そこで締羅は食べ物を自在に作れる装置を手に入れ、そのまま持ち帰り、この世界に持ってきたのだ。この装置は水さえあればなんでも食べ物の製造が可能だ。
夕食を終えた俺はソファーにばったりと倒れこんだ。その隣にティオが座った。
「はあ、何か大変な一日だったな」
「学校って人がたくさんいましたね」
「まあな」
そう言うと締羅は体を起こした。
「なあ」
「はい?」
「ティオはまた龍の姿に戻れるんだろ?」
「はい、そうですが」
「じゃあ龍の姿でいてくれないか?」
「どうしてですか?」
「そのほうが何故か落ち着く」
「分かりました」
するとティオが青白く光り始めた。その光は人間の形から龍の形に変わると、ふっと消えた。
「こんなふうに変身するんだな」
龍の姿のティオは頷いた。
‘はい’
「ん?、誰かの声が・・・」
‘私ですよ。締羅様。’
「テレパシーか」
‘少し違いますけど、そのようなものです。’
「ほう、なるほどな。一応俺もテレパシーの力は持ってるんだがな」
‘そうなんですか?’
‘ああ。ほら、できるだろ?’
締羅はテレパシーを使ってみせた。
‘あの、締羅様。’
「ん?」
‘今日も一緒に寝てもいいですか?’
「その姿だったらかまわない」
‘え・・・あの、人の姿で寝たいんですが・・・’
「駄目だ、そんなことすると俺の理性がもたない」
‘え?’
「あ、いやなんでも。とにかくその姿だったら一緒に寝てもいい」
‘う〜、わかりました。’
「ああそうだった。風呂のときもだぞ」
‘ええ?’
「だから理性がもたない。だから頼む・・・」
‘はい〜’
「まあたまには人間の姿でも寝ていいから、そう気を落とすな」
‘あ、ありがとうございます’
「さ、早く風呂に入って寝よう」
‘はい♪’
そういえばティオを洗ってやるというのは、女の子を洗ってやってることになるのか?いや、龍の姿だったらなんの関係も持たないし、別にかまわないか。
そうして風呂を上がった締羅とティオは、締羅の部屋へ向かった。
締羅はベッドに入ると、ティオを隣に入れた。
‘おやすみなさいませ、締羅様’
「ああ、おやすみ」
こうして二人?は眠りについた。
こうして学校の騒動は幕を閉じたのだった。