第五話 日常崩壊5
現在、日曜の朝4時頃。締羅はふと目を覚ますと、トイレに行こうと起き上がった。ところが思いがけないようなことがあった
「な、なんだとーーー!」
なんと締羅の横には龍の姿は無く、かわりに少女が眠っていたのだ。しかも締羅の腕にしがみついて。
その少女は、膝あたり程までもある龍の鱗とそっくりの色の青い髪、翼のようにとがった耳。年齢は13、14ぐらいだ。寝ているので目の色は分からないが、整った顔をしていた。そして、ふさふさの鱗と同じ色の毛に覆われた尻尾があった。美少女と言えた。いや、可愛いも当てはまるだろう。
可愛い子だな。でも、俺は絶対に女の子なんて家には入れてないぞ!ちゃんと鍵も掛けたし、入って来れるはずが無い!そういえば、龍の姿が見あたらないな・・・
俺はまだ変な夢を見ているんだ。次に目を覚ましたときには、もうこの子もいない・・・
締羅はそう考え再び眠りについた。どうやら彼は、このことを夢だと思い込んでいるようだ。
そして朝9時を過ぎた頃、締羅は目を覚ました。が、横を向くと、4時頃に見た時と同じ後景があった少女が寝ているのだ。「ゆ・・・夢じゃ・・・なかったのか・・・」
締羅は唖然としたが、落ち着いて考えるためベッドから出ることにした。ちょうど今、少女が離れているので出るには絶好のチャンスだった。締羅はベッドから出ると、部屋を出てリビングに向かった。
「なぜだ・・・どうなっているんだ・・・」
締羅は先ほどからソファーに座り、考えこんでいた。
「なんで女の子が・・・しかも俺のベッドに。俺は昨日龍と寝たはず・・・そういえば、龍は何処いった?」
締羅は家中探したが、龍の姿は見つからなかった。
「あの子に聞いてみるか・・・何か知っているかもしれない」締羅はふと部屋の前で止まった。
なんか入りづらいな・・・
女の子が部屋の中で寝ているので、締羅は戸惑った。
ここは俺の部屋なんだ部屋の主が入れないでどうする。
締羅はドアをあけ、部屋に入った。少女はまだベッドで寝ていた。締羅は少女に近づいた。
「おい、起きて。起きてくれ」
起きる様子が無かったので締羅は少女の体をゆすった。
「頼む、起きてくれ」
「うう〜ん」
少女は目を開けた。やっと起きたようだ。その目は締羅と同じ透き通った青色だった。
「ふにゅ?朝?」
少女は可愛らしい声を出して起き上がった。
「やっと起きたんだな。で、いきなりだが何で俺のベッドにいるんだ?」
「え?私は昨日ご主人様と一緒に寝ましたが・・・」
「はあ?」
ご主人様?いったい何を言っているんだ?この子は・・・
「なあ、ここに龍はいなかったか?信じるわけないが、いたんだ」
「龍ですか?」
「ああ、そうだ。見てないか?」
「えっと、あの、その龍ってこの姿ではありませんか?」
少女はそういうと目をつぶった。すると、青い光に包まれた。
この光は・・・青の光・・・
光が消えると、そこには見覚えのある龍の姿があった。
「ま・・・まさか・・・君は青の世界で伝説と言われている龍人なのか?」
「はい、そうです」
「ふっ、まさか実在するとはな・・・これは驚きだな・・・」
「私達は伝説とされているんですか?」
「ああ。絶滅したとも言われているし、存在しないとも言われた存在だ」
「ご主人様は私のことを疑っていらっしゃいますか?」
「いや、真実を見たからには、信じるしかないしな」
「あの、ご主人様は私を殺そうとは思っていらっしゃらないですよね?」
「当然だ。殺すなんてことはしない。それよりなんでご主人様なんだ?」
「はい、それはご主人様が怪我を負っていてた私を助けてくださり、それに優しく接してくださったり、食べ物も下さいました。こんな人に、私は会ったことがありませんでした。だから私は、ご主人様が主であってほしいと思い、そう呼んでいるんです」
「そうなのか。そのご主人様というのはなんとかならないのか?」
「いいえ。私はそう呼ぶと決めましたので、ずっとそうご主人様のことを呼んでいくつもりです」
「そ、そうか。それでいつまでここにいるんだ?」
「ずっとですよ、ご主人様。ずっと一緒にいます。これからも、よろしくお願いします」
「え?・・・あ・・・はあ、これからどうなるんだ・・・」
この瞬間、締羅の平凡な日常は崩れ去ったのであった・・・