第二話 日常崩壊2
締羅は雷の落ちた所についた。そこには深さ2メートルで直径3メートル程の大きな穴が開いていた。
「よほどすごい雷だったんだな」
締羅は穴を覗きこんだ。
「なっ!」
彼は絶句した。そこには見事な青色の鱗。そして輝く白銀の角と鋭い爪と翼を生やした生き物がいたのだ。その正体はまさしく龍だった。龍は全身に傷を負っており、意識が無かった。
何故龍が・・・とにかく家に入れよう。このことが世間に知られたら、とんでもないことになる。
普通の人ならあわててふためくところだろう。
締羅は冷静に対処できた。なぜなら彼は青の世界で実際に龍に会ったことがあったからだ。
締羅は穴に入り、龍を抱えようとしたが・・・
「くっ、重いな・・・」
なかなか抱えられなかったが、なんとか龍を担いで穴から出ることができた。
家が近くでよかった・・・
締羅は雷が落ちた所から家が近かったことに感謝した。彼は人気の無い道を通り、家にたどりついた。
締羅は既にずぶ濡れなっていたため、龍をリビングのソファーに寝かせると、すぐに風呂の準備をした。
一つ言っておくが俺は一人暮らしだ。両親は俺が生まれた後、何処かへ姿を消したらしい。
俺は塗れた制服などをすべて脱衣室にある洗濯機に放り込んで着替えた後、龍のところへむかった。
龍は切り傷ややけどが多少ある以外は特に怪我したところはなかった。
「この程度の傷なら、俺の力で十分治せるな」
締羅は手のひらを龍に向け、精神を集中させた。すると、締羅の手から青い優しい光が出され、龍の体を包み込んだ。すると龍の体の傷がみるみる消え、完全に全ての傷を消した。
少し経つと龍の呼吸も落ち着き、安定したようだ。
締羅は風呂に入るついでに龍も一緒に入れ、汚れた体を洗ってやった。
風呂から上がると、時計は6時を回っていた。締羅はソファーに龍を寝かせると、夕食の準備に取り掛かった。
しばらくして夕食もでき、食べようとテーブルに向かおうとしたそのとき、眠っていた龍がむくりと体を起こした。どうやら意識が戻ったようだ。
「目が覚めたか・・・」
締羅は龍に近づいた。
締羅に気づいた龍は締羅に向かって翼を広げ、にらみつけてきた。
威嚇しているのか。警戒してるようだな・・・うかつには近づけんな。
そう思った締羅は足を止め、両手を挙げて言った。
「俺は何も持っていない。何もしない」
だが龍はいまだに威嚇している。
締羅は少しずつ龍に近づき、手を伸ばした。
龍は締羅の手が近くまで来ると、本当は怯えていたのか、ぎゅっと目を閉じた。
締羅は龍の頭に手を乗せると、優しくなでてやった。
すると龍はゆっくりと目を開け、不思議そうにじっと締羅を見つめてきた。
「な、何もしないと言っただろ?」
この龍は人の言葉が理解できるようで、うれしそうに一鳴きしていきなり締羅に飛び付いた。
「ぐわっ!お、重い・・・」
いきなりの不意打ちに締羅は、なすすべもなくまともに龍ののしかかりをくらってしまうのだった。