第十一話 危険な夜街
二人は人々で賑わう中心街へやってきたのだが・・・
「うわぁ、たくさん人がいますね」
「まあな、東京だし」
言い忘れていたが、俺は東京住みだ。
「それより、あまり引っ付くな。なんか誤解されるようだから」
突き刺さるような視線が容赦なく二人に襲い掛かる。締羅とティオはかなり目立っていた。特にティオは。ティオを見て顔を真っ赤にする男性達。中には鼻血を吹き出して倒れる者もいる。それとは逆に締羅をみて顔を赤くする女性もいた。大半が女子だが。ティオを睨み付けているのもいる。
「なんかさっきから見られてるような気がします」
「俺もだ。視線が痛い。だから少し間を空けよう」
「はい」
それからしばらく歩いていると・・・
「あの」
「ん?」
「トイレに行きたいんですが・・・」
「ああ、そうか。じゃあ近くに公園があったはずだからそこの公衆便所に行こう」
「はい」
そして二人は公園の入り口についた
「俺はここで待っている。行ってこい」
「はい、すぐもどります」
「ああ」
ティオは急いでトイレへ向かった。そしてしばらくたった。
ふう、早く締羅様の所へいかないと・・・
用を足したティオは急いで締羅の所に戻ろうとトイレからでた瞬間だった
「きゃ!?」
何かにぶつかった。その衝撃でティオは後ろに転んだ
「ん?なんだ?」
なんとぶつかった主は不良だったのだ
「か、かわいいいい!!」
不良は顔を真っ赤にして飛び上がった
「おい!きてみろよ!」
「なんだよ〜・・・おおお!」
「どっから来たんだ?こいつ!?」
後から2人の不良が現れた
「あ、あの・・・通してくれませんか?」
「駄目だ。お前のような可愛子ちゃんには滅多に会えないからな。たっぷり楽しませてもらうぜ・・・へへへ・・・おい!おさえろ!」
「「おう!」」
ティオは二人の不良に押さえられ、身動きがとれない状態となった。
「や、やめてください」
そのころ公園の入り口では
「遅いな・・・腹でもこわしたか?」
締羅はトイレの方へ向かった。そこで思いもよらない後景に出会った
「おい!騒ぐんじゃねぇ!」
押さえつけている不良に一人がティオの口を押さえる
「へへ・・・始めるか・・・」
不良はティオの服をつかむと、引き剥がそうと引っ張った
「ん!んぐぐ・・・んぐ」
ティオは声をあげようとしたが口を押さえられて声がだせない
「な、ティオ!なんて奴等だ」
締羅は近くに落ちていた身長ほどもある手ごろな長い木の枝を取ると、ティオに襲い掛かろうとしている不良の真後ろまで一気に走りこんだ
不良はそのことにまだ気づいてなかった
締羅は木の枝を空高く放り投げた。それは不良の真上に位置するところだ。締羅もそれを追いかけるように飛び上がった。そして木の枝を空中で掴み、そのまま一回転すると、不良のいる真下へ急降下した。
バキィ!
「ぐほあぁ!」
枝が折れる音と共に不良の叫び声があがった。
「ってーーーな!!なんだよ!!」
「ティオにこれ以上手を出すと許さないぞ!」
「ほお、やるってのか?おい!やるぞ!」
「「おう!」」
不良達は締羅を取り囲んだ
「俺の邪魔をしたことを後悔するがいいぜ!うらぁ!!」
不良達は一斉に締羅に向かって走りだした
先にかかってきた不良の攻撃をひらりとかわし、蹴りを入れる。
「うぐあっ!」
蹴られた不良は5メートル以上は吹き飛ばされていた
「う、こいつ・・・克之を一撃で・・・」
克之とはおそらく今吹き飛ばしたリーダーのようだ
「こうなりゃやけだ!くらえーー!」
残りの2人の不良が同時にかかってきた
締羅はそれをかわし、先ほど真っ二つに折れた2本の枝を拾った
「そんなもんつかったっていみねーよ!」
「あるさ」
締羅はかかってくる2人に向かって斬りかかった。その速さは人間ではとらえられない程だった。
ドォン!
大きな音がしたと思ったときには二人の体は中に浮いていた。そしてそのまま吹き飛んでいった
「まだやるか?」
「くっ、おぼえてろよ!おい!ずらかるぞ!」
「「あ、まてよー!」」
そして不良達はどこかへ退散していった
「ティオ、無事だったか?何かされてないか?」
「はい、大丈夫です」
「無事でなによりだ」
「ありがとうございます。おかげで助かりました」
「ああ、いや、ティオが無事で安心したよ。さ、行こうか」
「はい!」
こうして二人は公園を出た。
あまりティオを一人にしないほうがいいな。今回のようなことはごめんだ。俺がしっかり守らないとな。
そんなことを考えていると、ティオが締羅の腕にすがりついてきた。
「ん?どうかしたのか」
「さっきみたいなことがあったから、怖くなって」
「ああ、そうか。はぐれるなよ」
「はい」
「何が食べたい?」
「そうですね・・・おいしく焼けた肉がいいです」
肉か。さすがは龍だけのことはある。肉好きなんだな・・・
「焼肉か、向こう側にちょうど見える。そこにしよう」
店について食事をはじめたのだが
「締羅様」
「ん?」
「この辺りには龍の姿が見当たらないんですが」
「ああ、ここはお前の住んでいる世界と違うからな」
「へえ、そうなんですか」
「ああ、まあ詳しくは帰って話そう」
「わかりました」
しばらくして食事も住んだ二人は会計を済ませ、店を出ようとしたその瞬間だった。
「お、締羅じゃないか・・・ってその子はもしかしてこの前の!とは少し違うけど可愛いい!!」
「た、達弘・・・」
まずい!ともかくこの場から離脱しないと
「いくぞ!ティオ!!」
締羅はティオの手を取って走り出した
「あ、こら!まてーーー!!」
「追ってくると思っていたよ全く。今は逃げるしかない」
「逃さんぞ締羅ぁーー!!」
振り向くと達弘が物凄い速さで迫ってきた。
「このことは今度話す!じゃあな!」
締羅はティオを抱えると一気に速度を上げた。さすがに達弘も追って来れなくなったようだ。彼は止まって膝をついていた」
「ふう、諦めたか。食った後のダッシュはけっこうしんどいな」
「どうして逃げるんですか?」
「それは・・・その、まずい状況だからさ」
「なんか疲れてるめたいですね。大丈夫ですか?」
ティオは締羅の顔を覗き込んできた
「このくらいなんともない。少し休めば大丈夫だ」
「あの、よければ私に乗って帰りませんか?」
ティオは少し恥ずかしそうに言った
「乗って帰るってまさか・・・ちょっとまってくれ!こんなところでそんな」
‘さあ、乗って下さい’
ティオは締羅の答えも待たず龍に変身した
龍に乗るのか。これはこれでいい機会かもしれない
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおう」
締羅は龍の背中に飛び乗った
‘ちょうどいい所にに乗ってくれましたね’
「そうか?」
‘準備はいいですか?’
「ああ、いいぞ」
‘はい、ではいきますよ’
そう言うとティオは青く輝く大きな翼を広げ、一気に飛び上がった。ティオはどんどん高度を上げて行き、雲より少し下辺りまで来ると、真っ直ぐ飛び始めた。下には東京の神秘的な夜景が視界いっぱいに広がっていた。
「うわあ、絶景だな」
‘この街はとても綺麗ですね’
「ああ、この明かりは全部人間がつくったんだぞ?」
‘すごいですね、人間って’
そのとき締羅はティオと同じことを考えていた
本当にすごい。青の世界がこんな技術作り出せるようになるまで、後どのくらいかかるだろう。
俺の行った未来はもっとすごかったな。これより何倍もあるずっと高いビルが立ち並んでいたし、たくさん飛行機とかも飛んでいたし・・・・はっ!!
締羅はあることに気がついた
「ティオ、すぐに降りるんだ!早く!」
‘あ、は、はい!’
ティオは見え始めていた締羅の家に真っ直ぐ急降下した
危なかった。あそこで飛行機のことを考えていなかったら今頃・・・
そう、ここ東京は都会なだけに人も多いし、その分飛ぶ飛行機も多かった。締羅はそのことに気づき、見つかってはまずいと思いティオを降ろさせたのだ。
家についた締羅は、龍の姿のまま家に入ってきたティオを珍しいものを見るような目で見ていた
居間に入るとテーブルを挟んで3人分程座れるソファーが置かれている。
締羅はソファーに座ると、ティオはもうひとつの方に座った。ティオの姿は意外と細身な龍で、普通に抱えられそうだった。締羅よりは大きいが。
「で、この世界についてだが・・・」
締羅はそれからこの世界はどんな世界なのか、どんな国があるのか、どれだけの技術をもった世界なのかと、この国の決まりを全て教えた。
「まあ、一度に覚えるのは大変だろうから、そのうちに勝手にわかってくるさ」
‘結構複雑なんですね。この世界は。ふあぁぁ〜もう眠いですぅ’
「ああ、そうだ。ティオの部屋まだ用意してなかったなぁ」
‘私は締羅様のものなんですから、好きにしていいんですよ。でもあまり離れたくないです’
「そんなこといってもな・・・俺、布団敷くからティオは俺のベッドで寝るんだ。いいな?」
こうして二人は締羅の部屋に向かった
どうして同じ家にいるのに部屋が違うだけでそんなにさびしそうにするんだ?
などと締羅は布団を敷きながら考えていた。ティオは既にベッドの上に乗って体を丸めていた。さすがに龍の姿では狭いようだ。
「じゃあおやすみティオ」
締羅はそう言いながら電気を消し、布団に包まった
‘おやすみなさい、締羅様’
ティオもそう言うと眠りについた
龍の姿ばかりか、寝息の音も大きく、締羅はすぐには寝付けなかった