第九話 契約1
「話?何の話だ?」
「じつは、契約についてなんですが・・・」
「契約?」
「はい、あなたと私の契約です。契約をすれば、締羅様は私の力を使うことが出来ます」
「その力を使って何かするのか?」
「はい、締羅様に私の力を捧げようと思います。助けてもらった恩です」
「いや、俺にはもう力はあるから・・・」
「でも、これでは私の気が済まないんです。お願いです」
「龍の力を得るというのはどんな風なんだ?」
「わたしと締羅様がひとつとなり、龍神の力をあやつることができます」
「龍の力か・・・また元の姿に戻れるのか?」
「はい、もちろんです」
やってみるか・・・
「よし、なら契約しよう」
「ありがとうございます!あ、一つ言っておかなければならないことがあります」
「何だ?」
「契約した後の私は、今の私であってそうで無くなります」
「どういう意味だ?」
「つまり、人が変わると言うことです。では、いきますよ。私の手を握ってください」
締羅は言われるがままにティオの手を握った。するとティオは呪文のようなものを唱え始めた。
‘二つの身と心を一つとし、今ここに契り結ばん!!’
その瞬間締羅とティオの体がまぶしくひ光り始め、光りの球体となり二つの光の球体が浮かび上がり、やがて一つに合わさった。
光が消えると、締羅の姿は変わっていた。
背中に大きな龍の翼が生え、手には背丈以上もある巨大な剣が握られていた。その剣は驚くほど軽く、まるでそこらへんに落ちている木の枝を持っているような感覚だった。
体は頑丈で、しかも軽い胴防具、籠手、具足に覆われ、青黒く光っていた。
すごい・・・これが龍の力か・・・
「そろそろ元に戻りたいんだが・・・」
「・・・分かりました、締羅様」
締羅の体が光を放ち、光が消えた頃には締羅は元の姿に戻っていた。そして締羅の目の前に一人の少女がいた・・・
「・・・・・・」
なんだこの子は?なんかティオに似てるが・・・
少女は青く光る膝程の長さの髪に、頭には紋章のようなものが刻まれた黒いリボンをつけており、目は締羅と同じ青色で黒いローブを身にまとっていた。
「君・・・誰?」
「・・・ティオですよ」
「なに!?まさかそんなこと・・・はっ、まさか・・・」
締羅は契約する前のティオに言われたことを思い出した。
ティオがティオでなくなるというのはこのことだったのか・・・すこし大きくなったようにも見えるが、15、16歳くらいだろうか?
「で、これからどうするんだ?」
「・・・私と締羅様は契約をしました・・・この契約は締羅様が死ぬまで無くなることはありません・・・」
「な、なにい!?」
じゃあずっとティオは俺が死ぬまで引っ付いているということか!?なんて無茶のある契約をしてくれたんだ!
「なあ、取り消しとかはできないのか?」
「・・・いいえ、それはできません」
「そうか・・・」
なんかとてもおとなしい子だな・・喋り方もそうだし、前のティオとは全然違う・・・なんかさらに可愛くなったというかなんというか・・・そんなことはどうでもいいが・・・
はあ、なんかこの子に様呼ばわりされると、もう理性が持たない気がしてならない・・・
「なあ、頼むから様はつけないでほしいんだが・・・あと敬語もやめて、普通に接してくれよ」
「・・・でも、それだと締羅様が・・・」
「俺がいいと言っているんだからそれでいいだろ?」
「わかりました、でも様だけは・・・」
「ああ、わかった」
なんで様なんだ?
「あの」
「ん?」
「そろそろ寝ても・・・いい?」
締羅は時計を見た。針はまだ3時を差している。
「昼寝か?」
「うん、疲れたから・・・」
「疲れた?」
「・・・結身すると、、体力を使うから・・・」
「そうなのか」
「締羅様も・・・一緒に寝ない?」
「ええ!?それは・・・そのだな・・・」
絶対無理だ!前のティオだったらまだしも今のティオはさすがに・・・
「私と寝るの・・・嫌?」
「そ、そんなことはないが、その・・・まだ眠くないから」
「・・・わかった・・・でも、そばにいて・・・」
「どうしてだ?」
「締羅様といると落ち着くから・・・」
「そうか・・・おやすみ」
締羅はこの時、ひどく後悔していた。契約なんかするんじゃなかったと・・・