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短編集

姿消した永遠の寂寥

作者: 琉ヶ嵜 翠

 彼女は突然姿を消した。




 初めは何が起きたのはわからなかった。確かにずっと、すぐそこに来るまで3人でいたはずだ。だと言うのにそこを過ぎた次の瞬間、彼女はいなくなっていた。

 置いてきてしまったのだろうか。不安になり立ち止まる。


 いつまで経っても現れない。


 最低気温が氷点下に行くこの季節外で待ち続けるわけにもいかないから、仕方なく近くのお店に入った。外を眺める。現れない。

 メールを打ってみた。どこにいるの、と打つのがあまりにもだるくて、ひらがなで「うぇーあーゆー」とだけ入力して送信した。返信がこない。

 意味がわからなかったのかもと思って「Where are you?」と送り直す。やっぱり返事はない。

 外を見てる友達からも姿を見ないと報告された。来ない。


 仕方ないから帰ることにする。そう思ったらメールが来た。「2人がいないから先に帰った」

「いなくなったのはそっちだよ」

「だってあの子と話してた」

「話してない。ずっと君を待ってた。ずっと君を探してた」

「怒ってるの?」

「さあね」


 駅について、彼女がいるはずのところに行くけど、やっぱりいない。どこにもいない。


 メールが来た。

「どうして来ないの」

「いないのはそっちでしよ」

「いるよ」

「いないよ」

「あの子と話してる」

「話してない」


 電車に乗っても彼女はいない。先頭から最後まで歩く。いない。どこにも、いない。


 メールが来た。

「どこにいるの」

「こっちのセリフだよ」

「だってあの子と話してる」

「話してない」


 出発しても見つけられない。友達に聞いても、見つからない。

 彼女は、どこ?


 寒空の下で待ち続ける私は、いなくなった彼女を探している。どこにもいない、彼女のこと。誰も知らない、彼女のこと。


 今日もまたメールが来た。

「どうして来ないの」

「探してるんだけど」

「だってあの子と話してる」

「話してない」


 霙が降り、雪に変わり、また霙に戻り、雨になる。私はまだ、彼女を待っている。姿を消した彼女のことを。誰も知らない、彼女のことを。もういない、彼女のことを。


 ……メールが来た。

「またあの子と話してる」

「話してない」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 冬という季節の設定と、彼女との応酬がいいと思います。とくに、「だって、あの子と話してる」という箇所が怖さを引き立ててると思いました。 [一言] ホラーですね⁉︎ えっと、これって、彼女が平…
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