表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/86

滝田聡司の告白 27

 このときのオレは、じゃなくてさ――。


 関掘のことは、今のオレにだって、未だにどうすればいいかなんてよくわからねえんだ。

 まあ、それでも学校祭が終わってからは、あいつも一区切りついたからなのか自信がついたからなのか、あの能面にも多少は表情が出てきたように見えたけど……。

 でも、あれも心の底からって感じじゃなかったからな。


 けどそれなのに、貝島(かいじま)みたいにオレたちを責めてくる様子もないし、恨んでるって素振りでもないし。

 かといってその割にはなにを考えてるのかも、一切言ってこないし。


 だからそれはそれで、こっちも気を遣うしかなかったんだよ。

 春日(かすが)なんかは、それでも自然体で向き合おうとしてたけど……正直、木管女子の考えてることなんて、オレにはイマイチよくわからねえからな。

 いや、だからって金管女子の気持ちなら分かるのかって言われたら、それもそれで微妙なんだけどさ……。


 でも、あいつらの方が考えてることは分かりやすい気がする。

 押さえるキーが少ない方が、考え方が単純なのかな? でもそうしたら、そもそも押さえるキーなんてないトロンボーンの連中が、一番単純明快ってことになるんだけど。

 いや、そうでもねーよって反論来そうだけども。でも永田とか浅沼とか、城山先生とか見てるとちょっと、平和だなーって思うときあるんだよな……。

 え、オレだけか?



 えーと、うん。


 まあそんな感じで、話は脱線しちまったけど。


 関掘に関しては、オレたちもどう扱っていいか、距離感を測りかねたまま引退しちまったって部分はあるんだ。

 だからそれが、心残りっていえば心残りだな。

 あいつスッゲー上手くはなったから、それで副部長にもなったけど――それはそれで、貝島と同じく不安要素のひとつではある。


 だから、それが来年の部活にどこかひずみを生まないか、そんな心配はあるな。

 まあ、妙なことにならなきゃいいけど……。


 あ? わかってるよ。


 引退しちまったら、その部活は在校生のものだ。それは、わかってるんだけどさ。

 なんつーか、それで全部放り投げてハイサヨナラ、ってわけにもいかねえ気持ちもあるんだよな。


 それをさっき話した通り、貝島にも言われたわけだけど。

 オレはもうそっちの人間じゃありません、じゃああとはよろしくお願いします、とか、そういうこと言うのはやっぱり、違うと思うんだよ。

 だから別に吹奏楽部の片付けを全部放り投げるつもりもなかったし、それはそれでちゃんとやるつもりだった。

 でもさっきも言ったけど、軽音部の用意は用意で、それは気になっちまうだろうこともまた、わかってた。

 なにせオレもやるわけだからな。こんときばかりはダブルヘッダーって、本当に大変なんだなって思ったよ。正直自分でもなに言ってんだってくらい、気づくの遅えけど。



 ってことで。

 オレはあの後、吹奏楽部の本番までの自由時間を生かして、軽音部の部室に準備の手伝いに行ったんだ。


 バタバタしてる時間帯にできないなら、せめて暇してる時間にでも――って、ない頭ひねって、考えたんだな。

 でも、そんときも学校祭の最中だ。紘斗(ひろと)がそのとき部室にいるかどうかは、賭けみたいなところもあった。

 最悪、部員全員が一日目みたいに学校祭を満喫してる可能性もあった。まあ、それはそれでしゃーないから、引き返して吹奏楽部の宣伝とかメシ食ったりするつもりだったけどな。


 でも、オレは賭けに半分勝って、半分負けたんだ。


 いたんだよ、部室にはひとりだけ。


 コードや機材に囲まれながら、黙々と作業をする。

 こっちもなに考えてんだか、よくわかんねえやつだけど――エレキベースの、石岡徹(いしおかとおる)が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ