滝田聡司の告白 26
なーんて、な。
そういえばオレ、今まではやってることに夢中で、すっかり忘れてたけど。
この本番が終わったらこの先どうしようって、最初は迷ってたんだった。
そんなことを、オレはこんな最終段階で、今更思い出したんだよ。
まあ、やっぱりなあ。
祭りは準備してるときが一番楽しいっていうけど。
吹奏楽部も、軽音部も。
やってるうちに、どっちの練習も楽しくなってきてさ――気がついたらどっちを選ぶか決めなきゃいけなかったことなんて、いつの間にか、さっぱり頭から抜け落ちてたんだよ。
でも、終わりが見えて、ようやく実感が出てきたんだな。
あ、これ――どうすればいいんだろう、って。
最初の頃のオレだったら、すぐに軽音部に行ってたかもしれない。
けど、春日のことがあって、美原のことがあって。
永田のことがあって、豊浦のことがあって――
それから、中島篤人のことがあって。
ここに来るまでにいろんなことがあったから、前みたいに簡単に選ぶことなんて、できなくなっちまってたんだ。
でも、軽音部がスゲー楽しかったのも、それはそれで本当だったんだぜ。
野郎ばっかで、馬鹿ばっかで。
あの面子で無茶苦茶やるのは――やっぱ吹奏楽部じゃ、できないことだったからな。
だからどっちを選ぶか、本気で迷ったよ。
どっちかを終わらせることなんて、このときのオレには想像もつかなかった。
どっちを選んだって、待っているのは楽しいことで――でも、それはどっちかを切り捨るってことでもあるから。
どっちにしたって後悔が少し、どこかで残るはずの選択だったんだからな。
――うん、そう。
でもオレは、今こうやって、吹奏楽部の方にいる。
じゃあ、だったら今は、後悔してるのかって?
んー……っと。
いや。
実はな、してねえんだよ。
は、意味が分からないって?
まあ、そりゃそうだよな。さっきまでオレ自身が言ってたことと、それは矛盾してるもんな。
そう。
だからこれから話すのは、このときのオレが想定もしてなかった状況下で起こった、そんな未来の話なんだ。
いろんなやつらが、いろんなことを考えてて。
そしてそれに触れすぎて、このときのオレは悩んでいたわけだけど。
でも、こうして今でも、オレが笑って話していられるのは――
あの愉快な馬鹿どもが、やっぱりそんな矛盾を、思いっきり吹き飛ばしてくれたからなんだよな。




